切れ味のある、西村京太郎氏のおすすめの作品12選をご紹介させていただきます。
人事院に11年務めた後、退職し、トラック運転手、私立探偵などの職業を経て、作家生活に入っていきます。
初期は社会派推理小説を中心に執筆していましたが、やがて、スパイ小説、クローズド・サークルものやパロディ小説や時代小説等、多彩な作品群を発表するに至ります。
そして、日本中にトラベルミステリーという名のジャンルを示すキッカケとなった、「寝台特急殺人事件」から全面的にトラベルミステリーに移行していくのです。
この記事の目次
西村京太郎おすすめ12選をご紹介~社会派からトラベルミステリーへ~
原稿を執筆する際、西村氏はワープロ・パソコン類は一切使用せず、すべて手書きで行っていて、月平均、400枚程執筆しているそうです。
今まで発行された累計部数はは2億部を超えていて、オリジナル書作は東京スカイツリーの高さ(634m)を超える635冊まで書きたいとのことです。
また、女性作家の故山村美沙氏とは家族ぐるみの交流があり、西村氏が京都に住んでいた頃、両宅が鍵付きの渡り廊下で繋がっていたという話は有名です。
そんな西村京太郎氏の初期のおすすめの作品を12選ご紹介いたしますので、お楽しみください。
『炎の墓標』
航海中のマンモスタンカーに爆破予告が入り、犯人から100万ドルが要求される話です。
航海中のタンカーを、狙った場所で、どのようにして爆破するのかという謎はとても魅力的であり、興味津々となります。
すぐさま、十津川警部と亀井刑事が急行するのですが、巧妙な犯人の罠にかかってしまうのです。
ここがポイント
トラベルミステリーがブームになる前の隠れた名作であり、事件の面白さ、意外さ、それに関わる人間の面白さが味わえます。
マンモスタンカーの爆破予告という大きな事件と、その背後に隠れている企業のエゴ、人間の醜さなどが浮き彫りにされた作品です。
『天使の傷跡』
新聞記者の田島がデート中に遭遇した、事件を追いかける話です。
被害者が最後に言い残した「テン・・・」という言葉を手掛かりに、警察とは違う視点で事件を追いかけていきます。
ここがポイント
後半に明らかになる犯人や殺害方法ですが、当時の社会的な問題も盛り込まれたミステリーであり、読み応えはあります。
半世紀という時間の隔たりを実感してしまい、現代のミステリー小説では味わえない感覚に浸ってしまう作品です。
『殺しの双曲線』
アガサ・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」に挑戦した作品です。
差出人不明の東北の山荘への招待状が、6人の男女に届けられ、その山荘で連続殺人が発生します。
ここがポイント
ノックスの十戒に従って、双子の入れ替えトリックの使用が予め読者に明示されています。
クローズドサークルものでありながらも、小柴という兄弟による連続強盗事件も描かれています。
しかも、名探偵の登場などはなく、警察の地道な捜査で真相を解明していくのです。
西村氏の神髄が味わえる名作です。
『消えたタンカー』
インド洋上で重油を満載した巨大タンカーが沈没して、生き残った数名の乗組員が次々に殺害されていく話です。
警部補時代の十津川と亀井刑事が捜査に当たっていくのですが、犯人は彼らの手を搔い潜り、犯行を重ねていくのです。
全く姿、形のつかめない犯人に十津川たちは、振り回されていきます。
そして犯人がやっと、逮捕され、事件解決かと思われたところから、スピードアップしていく新しい展開が待っていたのです。
ここがポイント
表面しか見えなかった事実が、十津川たちによって少しずつ覆されていくことが楽しめる作品です。
『消えた巨人軍』
名探偵、左文字進シリーズの第一弾であり、東京駅から新幹線に乗って、甲子園遠征に出かけた巨人軍の選手が、翌日になっても現地に到着しないという話です。
そのうちに、球団側に5億円を要求する電話があり、誘拐事件と判明するのです。
身代金の受け渡しはできたのですが、犯人の尻尾を捕まえることができず、左文字という私立探偵を雇い、事件解決を図っていきます。
少しずつ犯人に近づいていきながらも、容疑者が白昼堂々と射殺されたり、レンタカーの免許証が盗品だったりと、なかなか核心に迫っていくことができません。
ここがポイント
いかに綿密な犯行計画の先回りができるかが、焦点となっていきます。
発想と消失トリックが楽しめる作品です。
『黙示録殺人事件』
不思議な自殺が連続する謎から、宗教団体による犯罪を暴く話です。
銀座の歩行者天国に大量の蝶が舞う魅力的な出だしから、目的不明の連続自殺事件の謎に十津川警部が挑んでいきます。
自殺を罰することはできないまま、新たな犠牲者がでてしまいます。
ここがポイント
宗教の持つ狂信をテーマにした社会的な内容であり、ミステリーとしてもサスペンスとしても一級品です。
40年ほど前の作品ですが、全く古さを感じさせない傑作であり、ラストシーンには胸を締め付けられます。
『七人の証人』
帰宅途中に拉致されて、気付いたら無人島の中の、実物大の街のジオラマの中にいた十津川警部の話です。
他にも7人の老若男女が拉致されていて、彼らは皆、1年前の殺人事件の証人であり、事件を再検証するために集められていたのです。
ここがポイント
舞台設定の斬新さが素晴らしいクローズドサークルであり、証言の矛盾をつく検証と、同時発生する殺人事件の進行で目が離せなくなります。
真犯人へたどり着くロジックが面白く、切れ味がある作品です。
『完全殺人』
意表を突く結末が用意されている8編からなる短編集です。
刊行された当時は現在よりもかなり、物価が安かったことが伺うことができます。
ここがポイント
結末を予想しながら、読み進めていくのですが、一捻りも二捻りもあり、なかなか真相にたどり着くことができません。
サクっと読めてスッキリできる、スキマ時間には最高の喉越しのいい短編集です。
『城崎にて、殺人』
元刑事の警備員が旅先で殺人事件に巻きこまれる話です。
事件の舞台は城崎温泉、三朝温泉、玉造温泉といった、山陰の温泉街で起きているのです。
十津川警部の先輩である警視庁OBの岡田が、旅行中の車中で、宝石店に勤める北野という男と意気投合するのですが、北野は何者かに殺害されてしまいます。
ここがポイント
そして次々に明るみにでてくる死亡事件の原因を追求するうちに、東京での殺人事件と重なり、十津川警部が登場となります。
温泉旅情タップリでテンポ良く読める作品です。
『寝台特急殺人事件』
ブルートレイン、はやぶさから、薄茶のコートの女が消えて、翌日、多摩川で水死体となって発見される話です。
一つの謎ではなく、複数の謎が絡み合う展開なので、飽きることなく、最後まで読み進んでいけます。
トラベルミステリーがブレイクするキッカケとなった作品であり、時刻表トリック等、なかなか良くできていて、最後までスリルが楽しめます。
ここがポイント
客車内の展開もスリリングであり、移り変わる景色や旅情とともに、臨場感がタップリと味わえる作品です。
『終着駅殺人事件』
7年ぶりに郷里の青森に向かおうとしていた男女7人が、次々に殺されていく話です。
上野駅で偶然、事件に遭遇した亀井刑事は、十津川警部と共に捜査を開始していきます。
ここがポイント
旅の旅情に加え、発車時刻を使ったトリックには、安定感があり、読んでいて、まるで自分が列車に乗っているかの如く臨場感が味わえます。
そして犯人のあまりにも切ない結末には、胸を痛めてしまいます。
何度も映像化されている作品であり、西村氏のトラベルミステリーの原点とも言える作品です。
『ミステリー列車が消えた』
機関車両を含めた、十三両にもなる臨時列車が忽然と姿を消す話です。
赤字に喘ぐ国鉄(JRの前身)が企画した行先不明の寝台特急が400人の乗客ごと消えてしまいます。
国鉄側には誘拐犯から、身代金十億円の要求があり、捜査が開始されていきます。
ここがポイント
物理的に登場しない犯人と十津川警部との頭脳戦が大いに楽しめて、結末には当時の国際政治的特色も絡んでいて、味わいがあります。
ローカル線や鉄道の歴史も絡んだ、緊張感のある作品です。
まとめ
西村京太郎氏の初期の作品はお楽しみいただけましたでしょうか。
まだ本格的にトラベルミステリーに乗り出す前の作品を多くご紹介しています。
読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
掘り出しものがありますよ。