独特のストーリー展開がある、野沢尚氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきます。
中学時代から映画監督を志していて、シナリオの書き方を独学で勉強し、大学卒業後、テレビドラマの脚本で高い評価を受ける一方で、ミステリー小説にも幅を広げていきます。
また、北野武氏の映画監督としての、初めての作品の脚本を手掛けたことでも知られています。
野沢尚おすすめ作品8選をご紹介~計算された巧妙さを描写する~
仕事上のトラブルも多く、東映のプロデューサーと揉めたり、東映自体を批判したりして、連載を降ろされたこともあるようです。
自殺する二か月前に放送された、「砦なき者」には、自殺をほのめかすようにテレビ業界への絶望が描かれていました。
そして、2004年6月28日、知人に「夢はいっぱいあるけど、失礼します」という遺書を残して自死してしまいます。
そんな野沢尚氏のおすすめ作品8選をご紹介いたしますので、最後までお楽しみください。
《破線のマリス》
テレビ報道局の編集者を務める女性、遠藤が一つの罠にハマり、そこからどんどんと追い込まれていく話です。
自分が作るものが正しいと信じて、映像を手掛け続けるうちに、自信が傲慢さに変化していき、エゴに凝り固まった悪者となってしまうのです。
ここがポイント
テレビは常に真実を伝えるものとして、捉えていましたが、作る側の匙加減でいくらでも真実が捻じ曲がってしまうのかと思うと不安になってしまいます。
何とも言えない悲しさを感じてしまう作品です。
《リミット》
誘拐事件捜査中に自分の息子を誘拐された女刑事が、同僚の警察からも追われながら、犯人を独自に追っていく話です。
子供をターゲットにした臓器売買、人身売買など、卑劣な悪人に我が子を誘拐された女性刑事が、孤立無援で立ち向かっていく姿はハードボイルドそのものです。
どこまで残忍になれるか、自らを試すがごとく、悪の道へと転がり落ちていく主犯格の女との温度差が見事に描かれています。
ここがポイント
最後の最後まで緊迫した展開であり、読み応えのある作品です。
《呼人》
12歳で心と身体の成長が止まってしまった呼人、自分自身を見つけるために母親探しの旅に出る話です。
周りはどんどん変化していくのに、その中に一人取り残さされる不安そして孤独、そんな中でも自分の生い立ちや生きる意味を追い求める少年の姿に共感してしまいます。
テロの問題や戦場の話、金融犯罪とかの話題もうまく物語に溶け込んでいて、ストーリーに厚みを持たせています。
ここがポイント
書いている時点での未来予測も、驚くほどに適合しているように思います。
ミステリー要素も多分にあって読みやすい作品です。
《深紅》
自分の家族を惨殺され、唯一生き残った少女が、自分と同い年の加害者の娘に接触をはかり、復讐を遂げようとする話です。
修学旅行に行っていたため、自分だけ難を逃れた主人公の奏子、事件から何年経過しても、自分だけ助かってしまったという呪縛から逃れられずに過ごす日々が切なくも寂しく描かれています。
序盤は緊張感で張りつめていて、中盤から終盤にかけては犯人の子供とも接点を持ち、緊張感は徐々に緩んでいき、対立すべき関係が思わぬ方向へ進んでいきます。
ここがポイント
単なる被害者、加害者家族の被害としてだけでは、語れない重い作品です。
《龍時01-02》
龍時シリーズの第一弾であり、16歳の高校生が単身でスペインに渡り、サッカーユースのチームに入って成長していく話です。
強烈な個性を持つ高校生の龍時が、日本のサッカー界からスペインへと飛び立ち、海外でサッカーをする厳しさ、サッカー自体の魅力が臨場感タップリに伝わってきます。
ここがポイント
持っている全てを投じて、底辺から這い上がるためのストーリーがとても熱く、サッカーの技術だけでなく、人間として成長していく姿も描かれています。
最高のサッカー小説を味わえる作品です。
《魔笛》
新興宗教の潜入調査に送り込んだはずの女性警察官が、爆弾テロを起こしてしまう話です。
テロ行為を起こしたカルト教団の教祖の、死刑判決が決定した瞬間、渋谷の街は爆破されたのです。
様々な人物の思惑が渦巻き、ストーリーは展開していきます。
宗教というものの怖さが存分に描かれていて、得体の知れない恐怖が迫ってくるような感覚になります。
ここがポイント
怒涛の展開に圧倒される作品です。
《砦なき者》
「破線のマリス」の続編であり、テレビメディアに復讐しようとする青年の野望を描いた話です。
ここがポイント
マスコミやメディアの影響力の怖さ、受け手側の意識の在り方など深く考えさせられます。
マスコミを憎むが故に利用し、一躍メディアの寵児となった八尋、強烈なカリスマ性で若者を虜にしていきます。
丁寧な心理描写が心に残る作品です。
《殺し屋シュウ》
殺し屋のシュウが様々な依頼をこなしていく、全7編+エピローグを加えた短編集です。
シュウが最初に殺したのは、悪徳警官であった自分の父親だったのです。
仕事を片付けるたびに、死者である人間の最後にふさわしいカクテルを飲むのが、お決まりなのです。
ここがポイント
シュウは感情的で人間的であり、殺し屋のイメージとはかなり、かけ離れていますが、そこがウリの殺し屋なのです。
バイオレンスの中にも、寂寥感が漂う作品です。
まとめ
野沢尚氏の作品のご紹介はお楽しみいただけましたでしょうか。
今はもう新刊には出会えませんが、数々の楽しめる作品を残しています。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。