温かい気持ちになれる、石田衣良氏のおすすめ作品10選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、しばらくはフリーター生活を送っていましたが、母親の死をきっかけに、広告代理店などに勤務した後、33歳の時にコピーライターとして独立します。
その後は数々の新人賞に応募し、1997年にミステリーの賞に応募した「池袋ウエストゲートパーク」という作品で第36回オール讀物推理小説新人賞を受賞し、作家デビューを果します。
石田衣良おすすめ10選をご紹介~魅力的文章とセンスで魅了する~
石田氏の信条は、小さな問題は真剣に一生懸命考えるけど、大きな問題は逆に感覚に任せるそうなのです。
要するに、心の声や身体の声をよく聞くようにして、感覚や肉体が反応することを大事にした方が、いいと言うことだそうです。
また、生きる上で大事なことは計画性と即興性のバランスなのだそうです。
そんな石田衣良氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
『池袋ウエストゲートパーク』
池袋で起きる若者たちの抗争劇を描いた4編からなる連作短編集です。
テンポのいいスカットする話が読みやすい長さにまとめられていて、主人公の誠の正義感と素早い判断力、仲間との繋がりも池袋という都会の冷たさの中にありながらも、温かさが感じられます。
ここがポイント
少年ギャング団とかヤクザ等が微妙な力関係で成り立つ、この危うい地域に真っ当な正義感が存在していること自体楽しくなってしまいます。
武器や暴力を使わず、知恵と人脈で物事を解決する、少し変わったハードボイルド作品のようです。
『うつくしい子ども』
13歳の弟が9歳の少女を殺害してしまい、14歳の兄がその真相を暴いていく話です。
世間を震撼させた少女殺害事件の犯人が自分の弟だと知った兄、管理社会のような学校で普通だった日常が崩れ去り、家族も排除されていきます。
そんな殺伐とした中でも、家族や一部の友人が常に温かい存在であることが、救いとなっていくのです。
ここがポイント
いじめや差別にも負けず、自ら行動して、真実にたどりついた兄の勇気には感激してしまう作品です。
『娼年』
恋愛にも大学生活にも退屈していた二十歳の大学生のリョウがボーイズクラブのオーナーに出合い「娼夫」の仕事を始める話です。
リョウが娼夫となってから出会う女性たちは、自分がマイノリティであることに自覚を持ちながらも、それを受け入れて、欲望に真摯な姿は凛として不快さを感じません。
人それぞれに性に関しては価値観も趣向も異なるので、その差異を絶妙にそして優しく包み込んでいくリョウの娼夫としての成長が美しく描かれています。
ここがポイント
誰もが持つ二十歳特有の揺らぎを繊細に、別角度から表現した作品です。
『波のうえの魔術師』
フリーターの青年が謎の老投資家老人と出会い、株取引を身に着けて成長していく話です。
バブル崩壊後の不況に苦しみ、日本経済がどん底であった90年代後半が舞台となっていて、株と投資、情報操作など非合法な手段まで用い、あくどい手段でバブル期に跳梁した銀行に鉄槌を下していくのです。
ここがポイント
知略と勇気で大きな敵に立ち向かう、「秋のディール」へのコンゲームは大変スリリングであり、スカットするものがあります。
ミステリー要素もあり、経済や株についても分かりやすく説明してある作品です。
『4TEEN』
14歳の男子中が学生4人組の、青春ストーリーを描いた8編からなる連作短編集です。
センセーショナルな問題にセンチメンタルながら、真直ぐな気持ちでぶつかっていき、成長していく様にはワクワクしてしまいます。
大人になると、なんやかんやの理由を付けて、行動しなくなるけれども、10代の頃は迷いながらも気持ちに正直に生きていけたんだと思い出させてくれます。
ここがポイント
無茶苦茶だったけど、何でもできたあの頃が懐かしくもあり、郷愁を感じさせてくれます。
『LAST(ラスト)』
都市の周辺で袋小路に陥った灰色の大人たちを描いた、7編からなる連作短編集です。
街金に借りたお金を返せず、身体を売ったり、犯罪に手を染めたりする大人達、解決できるはずもなく、先送りしているだけだと分っていながらも、奇妙にも普通の生活を送っているのです。
一度レールから外れると、復帰するのが難しい社会に絶望するのではなく、いかに自分の力で復帰することができるかのスキルを身に着けておくべきかを考えさせられます。
ここがポイント
普通に生活できることが、どんなに幸せなのかが分かる作品です。
『約束』
何かのきっかけで、前向きに生きられることを教えてくれる7編からなる短編集です。
皆、苦しいことや悲しいことを抱えながらも、ふとしたことがキッカケで立ち直っていけるのです。
ここがポイント
読んだ後に前向きになれるような話が詰まっていて、温かい気持ちになります。
人生の途中に壁にぶち当たった時、価値観から変わらなくてはいけない時の心理描写がとても巧く描かれていて、心に響きます。
とにかく、おすすめの勇気付けられる作品です。
『愛がいない部屋』
全ての話が高層マンションに住む、女性を主人公とした10編からなる短編集です。
優雅で誰もが羨むような、生活の裏には、人間らしい不満と欲望が渦巻いているのが分かります。
仕事に疲れた夫の召使いになったような専業主婦、ニートの息子を持つ夫婦、DV被害に遭っても夫と縁の切れない妻。
ここがポイント
押し付けがましくない表現で、周囲に流れる空気の温度をしっかりと感じさせてくれます。
優しく包む想いだけが心地よく感じる作品です。
『美丘』
大学生の太一と同級生の美丘の短くも濃いラブストーリーです。
太一が好きになった美丘は何と、クロイツフェルト・ヤコブ病を発症する可能性がある大学生だったのです。
一般の若者たちにとっては何気ない日常でも、二人にとっては一日一日が大切な一瞬だったのです。
現状に絶望しつつも、懸命に生きた姿には心が打たれます。
ここがポイント
当たり前の毎日が、どんなに貴重で奇跡的なものなのか、改めて気付かされた作品です。
『オネスティ』
恋愛も結婚もしないけど、一切の秘密を作らず、すべてを正直に分かち合うという約束をしたカイとミノリの話です。
幼少期から大人になるまで、その約束は守られて続けて、恋愛やSEXについても秘密は無いのです。
本当に共感し難い、男女の愛のカタチですが、誰にも真似できない特別な関係で結ばれているのは、お互いにとってはそれが嬉しいのかもしれません。
ここがポイント
幼い時に交わした約束が二人にとって、不幸なのか、幸せなのかは、まさしく読者の受け取り方次第ではないでしょうか。
心の在り方を問われているような作品です。
まとめ
石田衣良氏の作品は楽しんでいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非、この機会に読んでみてください。
あなたの心に深く刻みこまれる作品だと思います。