強烈なインパクトのある、天童荒太氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきます。
童話、映画脚本など様々な賞に応募し、本名で投稿した「白の家族」という作品で野生時代新人文学賞を受賞し、1986年に同作品で作家デビューを果します。
1995年「家族狩り」という作品で第9回山本周五郎賞を受賞し、2009年「悼む人」という作品でついに第140回直木賞を受賞します。
天童荒太おすすめ作品8選をご紹介~物事を突き詰めそして極める~
初期の頃の作品は、文庫化する際に大幅に改稿を施してあり、「家族狩り」においては骨組みや結論は変えていませんが、登場人物の設定や、性格および途中発生する事件などは大幅に変更されていて、全く別の作品のようになっています。
また、寡作で知られていて、インターネット等にも触れず、携帯電話も所持していないそうです。
そんな天童荒太氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、『家族狩り』
一家惨殺事件が発生するのですが、家庭内暴力をふるっていた子供が、起こした一家心中ではないのかという話で、物語は展開していきます。
他者の意見を受け容れない危うさや、都合の良い極論にしがみついていることは、本人たちにとって幸せでも、周りの人にとっては、ただの迷惑でしかないと、改めて気付かされてしまいます。
ここがポイント
残酷な描写だけではなく、家族の小さなすれ違いが、一家崩壊に繋がることを嫌というほど思い知らされます。
大切なわが子が壊れていく姿を直視できず、ジタバタする親たちの姿が、臨場感タップリに描かれています。
あらためて、家族であることの意味を考えさせられ、家族の在り方について、極論から問われる重厚な作品です。
2、『永遠の仔 上・下』
親の虐待を受けながらも、健気に生き抜いてきた子供たち3人の話です。
幼少期に受けた虐待の傷は深く、憎しみを抱きながらも、成長と共に親を許し、そして愛されたいと願う3人の子供たちがいたのです。
お互いの傷を共有し、大人になって出会ってから、次々に事件が起きていきます。
17年前の聖なる事件、その霧に包まれたかのような先に潜んでいた真実とは、いったい何だったのでしょうか。
ここがポイント
ごく普通の生活が、いかに大切で幸せなのかがわかる作品です。
3、『あふれた愛』
心に傷を負っていたり、傷つきやすい愛が、テーマの4編からなる短編集です。
登場人物が心を病んでしまった過程、その気持ちに思いを馳せると、こちらも辛くなってしまいます。
どうしようもない感情が溢れてきて、心で何かを抱える人たちが、紡ぐ愛のカタチが見えるようです。
ここがポイント
幸せになれるとは限らないまでも、相手を思いやる優しい気持ちは伝わってきます。
心が疲れている人に、おすすめの作品です。
4、『包帯クラブ』
心に傷を負った思い出の場所に包帯をまいて、心の痛みを癒すという「包帯クラブ」を発足させた高校生達の話です。
ここがポイント
傷ついた記憶の残る場所に包帯を巻いて、傷ついたことに封をして、自分を癒していくのです。
包帯は傷を覆うものであり、包帯を巻くと、苛立ちや悲しみが薄れて、心が少し軽くなるのです。
自分以外の人への気持ちの想像力と、思いやりが溢れた作品です。
5、『悼む人』
全国を放浪し、自分とは関わりのない死者を悼む旅を続ける坂築静人という男の話です。
死者を悼む旅を続ける青年と、末期癌で闘病するその母親、父親に捨てられた新聞記者、新しい命を宿った娘、夫を殺した女性など、様々な生と死が交錯していきます。
天童氏が7年の歳月を費やして仕上げた、至高の作品だけあって、読む人一人ひとりの心に訴える善と悪、生と死が紡がれる物語です。
ここがポイント
皆から愛されるような生き方をしてみたい、そして、人の死について、考えるきっかけを与えてくれる作品です。
6、『歓喜の仔』
父は多額の借金を残して失踪し、それを悲観した母は自殺未遂をして、寝た切り状態になってしまうのですが、それでも残された3人の兄妹は、生きて行くために必死に戦っていく話です。
苦しい状況でも逃げずに生と戦う3兄妹、その健気さ、妹、香の友達を思う気持ち、次男の家族思いなところ、辛い過去を背負っていながらも生きて行く姿に感動してしまいます。
ここがポイント
他人に流されず、自分が信じる方向へ進む力、頼りにならない大人とは、正反対に生き続ける逞しさを感じてしまいます。
哀しいながらも、少しだけ希望が持てる作品です。
7、『ムーンナイト・ダイバー』
東日本大震災後に福島の海に潜り、亡者や行方不明者の遺品や形見を探す男、瀬奈舟作の話です。
言葉にならない様々な想いを抱きながらも、海に潜っては誰かの思い出を持ち帰る舟作の姿が描かれています。
ここがポイント
舟作は法を犯し、身命を賭してまで、海に潜り続け、生き残ってしまったものが、震災をどのように受け入れ、そして乗り越えられるのかを問うているように思います。
今、生きていることの大切さがわかる作品です。
8、『ペインレス 上・下』
海外赴任中に爆弾テロに巻き込まれ、痛覚を失ってしまった会社員、貴井森悟に興味を抱いた、麻酔科医の野宮万浬が性的な診察を申し込む話です。
ここがポイント
人間は痛みがあるから、社会の秩序が保たれているのであり、身体の痛み、心の痛みがあって当たり前なのです。
しかしその痛みを感じない人がいることと、その感覚に近づくため、解放するためにセックスがあるのです。
強烈なインパクトを感じてしまう斬新な作品です。
まとめ
天童荒太氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
心に響く作品に浸っていただけたと思います。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
読書の楽しみが広がりますよ。