本格推理が味わえる、姉小路祐氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
大学院卒業後、司法書士の資格を取り、1989年に弁護士・朝日岳之助シリーズの第一弾「真実の合奏(アンサンブル)」という作品で、第10回横溝正史ミステリ大賞の佳作を受賞し、作家デビューを果たします。
そして1991年には「動く不動産」という作品で第11回横溝正史ミステリ大賞の大賞を受賞します。
姉小路祐おすすめ作品8選をご紹介~綿密な取材でその真髄を描く~
姉小路氏が作家を目指したのは、高校三年生の時であり、日本史の授業を受けていた時に、「俺は後世の高校生に、名前を憶えてもらうような人物になれるだろうか」と思ったことがキッカケだったようです。
そして、大学三年生の時に、石原慎太郎氏や大江健三郎氏に触発されて、作家を志し、就職せずに、作家というフリーな立場で活躍出来たらどんなにいいだろうと考えて、純文学の賞に挑戦していきます。
そして現在は山村美紗氏、西村京太郎氏に続く2時間ドラマの主要原作者であり、綿密な取材により、司法や官僚の世界に踏み込んだ社会派ミステリ作家の一人なのです。
そんな姉小路祐氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
『刑事長』
市内で起きた婦女暴行殺人の決着に不審を覚えた一人の刑事、岩切が地を這うような捜査を開始する話です。
コテコテの関西弁が使われていて、警察内部の事情の説明なども面白可笑しく表現されています。
チームからはみ出しての捜査の結果、殺人犯を逮捕するのですが、そのキッカケとなった遺体写真の闇販売については、どうしても犯人が認めないから、そこでまた岩切がはみ出し捜査を開始するのです。
刑事一筋、現場一筋に生きてきたベテラン刑事が、スタンドプレーと言われようとも、納得のいかないことは徹底的に調べていくのです。
ここがポイント
人情物要素も混じった本格推理が味わえる不思議な作品です。
『京女殺人法廷 裁判員制度元年』
裁判員制度の評議でほぼ決まりかけた決裁が、京都の地域性や生活する人間の気質を考慮し、新たな展開で真実が明らかになる話です。
裁判員に選ばれたら守秘義務があり、補充裁判員には発言権は認められていない事が分かります。
ここがポイント
裁判員制度導入に伴い、選ばれて半強制的に、招集させられた裁判員たちの戸惑いや、裁判員の視点からの裁判の様子が、とても分かり易く描かれています。
裁判員制度の危うさを顕著に表している作品です。
『署長刑事 大阪中央署人情捜査録』
署長刑事シリーズの第一弾であり、キャリア警察署長として大阪府警中央署にやってきた古今堂(コキンドウ)警視の活躍の話です。
着任早々、部下の飲酒ひき逃げ事故に遭遇し、事故の謎を探る為、署長の立場でありながら大阪の中心地を舞台に捜査を開始していきます。
ここがポイント
最初は地味な展開ですが、話が進むにつれて、陰謀が明かされていく過程が段々と白熱してきて、目が離せなくなります。
ちびデブ・コンビのキャラの設定も面白く、大阪飯の紹介についても、どれも美味しそうに描かれています。
扱っている中身は結構シビアであり、単なる人情物ではない、警察作品です。
『署長刑事 時効廃止』
署長刑事シリーズの第二弾であり、疑惑を抱えたまま、処理されてしまいそうな事件を古今堂署長が挑んでいく話です。
2010年に法改正されたことで、「時効」に対するルールが、いくつか変わり、過去の罪から逃げきれた者と、一生付きまとわれる者との決着をつけるために、殺人事件が起きてしまいます。
それ故、単純な転落事故で終わるはずだった事件に、かすかな疑問が生じ、過去の事件と絡んで、真実が浮き彫りになっていくのです。
ここがポイント
ミステリー要素が満載で、練りに練られたエンディングが用意されている作品です。
『署長刑事 指名手配』
署長刑事シリーズの第三弾であり、セレブ相手を謳う、大阪ミナミの高級美容院の娘が、生徒会室で殺害される話です。
自分が犯人だと言いながら、逃走を続ける定時制高校の男子生徒の思惑は一体何なのでしょうか。
ここがポイント
古今堂署長は腑に落ちないながらも、捜査を続けていき、被害者、加害者のどちらにもある、裏事情を明らかにしていきます。
親子の情は血の繋がりだけでは表すことができなく、育てていく中での感情の間でも、生まれるものだということが分かります。
子供が親を思う気持ちが分かり、考えさせられる作品です。
『署長刑事 徹底抗戦』
署長刑事シリーズの第四弾であり、インサイダー疑惑の中で起きた、関西有数のファンド総帥、金倉盛一殺害事件の話です。
重要証人の警護にあたる古今堂であったが、目の前で証人の男は忽然と姿を晦まし、謎の死を遂げてしまいます。
ここがポイント
威信回復に焦る大阪地検特捜部と、過失隠蔽を謀る大阪府警に反旗を翻し、古今堂の孤独な戦いが始まっていきます。
軽快な大阪弁で進められる物語は今回も読みごたえあり、かなり楽しむことができます。
終始一貫して、派閥に飲み込まれまいとする、古今堂に拍手を送りたくなる作品です。
『セカンドジャッジ ~出口の裁判官 岬剣一郎~』
岬剣一郎シリーズの第一弾であり、元警察官僚の岬剣一郎が更生保護委員を務めることとなった話です。
更生保護委員とは受刑者の仮出所を決める、いわば出口の裁判官なのです。
最初に担当したのは、18歳の時に殺人を犯した青年であり、更生を確信し仮出所を許可したのですが、出所後、行方を晦ましてしまうのです。
それと同時期に青年が過去に殺害した男の知人が不審死を遂げてしまうのです。
最期まで二転三転し、で気が抜けず、手に汗握る展開で楽しむことができます。
ここがポイント
人間の感情というものは、計り知れないものだということが分かる作品です。
『監察特任刑事』
ここがポイント
監察官を観察する任務の為に、新規に創設された部署で奮闘する中途採用の警察官を描いた話です。
元々税理士だった主人公、戻橋が、警察官に転身するという一風変わった設定の刑事モノになっています。
とある事件をきっかけに、戻橋は京都府警の内部的な犯罪に立ち向かっていきます。
そうして、密かに再調査する戻橋に警察内部からの様々な嫌がらせや妨害が入ってくるのです。
京都グルメや歴史の蘊蓄もあり、楽しめる作品です。
まとめ
姉小路祐氏の作品はお楽しみいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
読書の楽しさが広がると思います。