ミステリーの楽しさを教えてくれる、歌野晶午氏のおすすめ作品20選をご紹介させていただきます。
大物ミステリー作家、島田荘司氏のお墨付きをもらった歌野氏は、「長い家の殺人」でデビューを果たします。
そして、本格ミステリー作家への階段を上り始め、2003年に発表した、「葉桜の季節に君を想うということ」という作品で、ついに大ブレイクを果たします。
しかしここまで来る道のりの途中には作品に対するバッシングもあり、断筆していた時期もありましたが、見事に復活を遂げています。
【予想を裏切るラストに衝撃】歌野晶午のおすすめ20選をご紹介
デビュー当時は本格的なミステリーを執筆していましたが、断筆後は「ROMMY越境者の夢」という最初の作品で、大胆な変身を遂げ、かなり異彩を放った作品を執筆するようになります。
それからは年に1~2冊のペースで新作を発表し続けています。
作風では【どんでん返し】といえば、歌野氏と言われるくらい、読者は騙されます。
さあ、歌野氏の仕掛けがいっぱい詰まったおすすめの作品20選をご紹介いたしますので、どうぞ楽しんでください。
1、『葉桜の季節に君を想うということ』
元私立探偵に持ち込まれた、悪質極まりない霊感商法の調査を皮切りに、様々な話に発展していく物語です。
過去と現在を行き来しながら、騙されることの連続で、ストーリーは展開していきます。
ここがポイント
本当にたくさんの謎が詰まった作品であり、2度読み3度読み、したくなる読者が多いのも納得してしまいます。
タイトルからはとても想像できない内容に驚愕すること間違いありません。
2、『ずっとあなたが好きでした』
13編からなる短編集であり、単純な恋愛小説のように見えますが、実は歌野氏の仕掛けがたくさん隠されている作品なのです。
コントのオチのような話や、ミステリー色満載の話、ドロドロした不倫から微笑ましい恋愛話等、年代もバラバラで趣向も違うのです。
ここがポイント
しかし、どの話もうまくまとまっていて、いつもの歌野氏らしいと侮っていると、ラストの3話で驚愕します。
ただの恋愛小説ではなく、いい意味で期待を裏切られる作品に間違いありません。
3、『密室殺人ゲーム王手飛車取り』
見ず知らずの5人が、ネット上で繰り広げるリアルな殺人ゲームに参加する話です。
章ごとに出題される趣の違う問題には悩まされますが、5人の掛け合いが大変面白く、目が離せなくなります。
ここがポイント
序盤から伏線は、いたるところに張り巡らされていて、驚愕の連続です。
物足りなさが続く、ラストの終わり方も次作への伏線にちがいないと思います。
4、『春から夏、やがて冬』
スーパーに勤める保安員が、万引きした女を捕まえたところから、物語は展開していきます。
保安員はこの万引き犯の女性を警察に、突き出さなかったことから、驚くべき因縁に遭遇するのです。
ここがポイント
人間の心の葛藤があらわに描かれていて、救いようのない話なのかとおもいきや、思わぬ展開へ進んでいくのです。
しかし、これほど人間味溢れたミステリーに出会うこともそうないと思います。
読み終えた後の衝撃が、半端なくて呆然としてしまいます。
5、『ハッピーエンドにさよならを』
ハッピーエンドではない11編からなる短編集です。
様々なテイストが味わえる作品が詰まっていて飽きることがありません。
ここがポイント
実際に現実で起こりそうな出来事ばかりなのですが、歌野氏らしさはどの作品にも健在しています。
読んだ後に、なにかしらの恐怖を感じでしまう読者が多いようです。
6、『死体を買う男』
何とも気持ち悪いタイトルですが、かの江戸川乱歩と萩原朔太郎が探偵となり、自殺の真相を探っていく話です。
毎夜、月を見て泣いていたという、女装の学生が、南紀白浜で、首つり自殺を遂げ、不信に思った二人が真相を探っていくのです。
ここがポイント
内容は大変合理的なストーリー展開になっているのですが、二重三重のカラクリが隠されていたのです。
乱歩と朔太郎もかなり魅力的に描かれているかと思いきや、意外とコミカルなのです。
アイデアをいっぱい詰め込んで、最後にビシッと決める技は流石です。
7、『絶望ノート』
いじめを受けている中学2年生の生徒が、日記として綴っている、「絶望ノート」がこの作品のすべてを物語っています。
ここがポイント
最初は淡々といじめの実態を綴っているのかな、くらいで読んでいて、やるせなくなるのですが、途中から一気に加速してどんな思考で、こんなことが思いつくんだと、驚愕してしまいます。
最後まで翻弄されっぱなしの作品であり、結末の衝撃度はハンパないです。
8、『ディレクターズカット』
テレビ局のやらせ取材に、視点をあてた話です。
簡単に言えば若者の暴走と、大人の暴走が引き起こす悲惨な話です。
ここがポイント
悪意のない欲望がどこまで通用するのか、理性は消えてしまったのか、という難解な問題にもぶち当たります。
いずれにしても、後味の悪さはイヤミスを超えています。
9、『家守』
5編からなる短編集で、どの話も家がテーマになっています。
ここがポイント
本来であるならば、寛げて、安心できるはずの家が、そこはかとない怖さを纏ってしまっているのです。
ストーリー展開に何かしらのアクセントを持たせていて、ボリューム感も多分にあります。
全体的に暗いイメージはあるものの、はずれがない描写に安心して読めてしまいます。
短編集でありながら、かなりの読みごたえがある作品です。
10、『ガラス張りの誘拐』
連続少女誘拐殺人事件の犯人が、自殺して事件は終結したかのように思えたのですが、実はそうではなかったという話です。
ここがポイント
話は3部構成になっていて、最後まで読まないとつながりが分からないという仕掛けになっています。
読者をいい意味で裏切る常習犯の歌野氏、やはり何かあると思っていました。
ミステリーの楽しさを教えてくれる作品です。
11、『魔王城殺人事件』
小学校5年生の子供たちが結成した探偵団が主人公なり、死体消失事件に巻き込まれていく話です。
町外れの屋敷に探検に行った探偵団が、庭に建てられた小屋で、死体の発見と消失現象を目撃してしまうのです。
しかもその後、その死体が遠く離れた大阪で発見されるのです。
ここがポイント
かなり、子供向けに書かれた作品のように思いますが、謎解きの面からも、大人も十分に楽しむことができます。
子供のころはやはり、好奇心が旺盛で、「見たらダメ」とか「行ったらダメ」、みたいなことに対して、子供たちは反対のことをやりたがるものなのです。
ドラマ化がされそうな作品です。
12、『密室殺人ゲーム2.0』
前作の「密室殺人ゲーム王手飛車取り」につづく2作目と思いきや、釈然としないまま物語は展開していきます。
ネット上で繰り広げられる奇妙な推理合戦は、5人のゲーマーによって実際に行われた、殺人トリックだったのです。
ここがポイント
中盤からようやく本筋にはいり、前作を逆手に取った流れになっていきます。
前作以上の奇想天外なトリックが多く、大いに楽しませてくれます。
いつも通りに最後の最後に、驚きが隠されているのです。
13、『そして名探偵は生まれた』
難事件を解決したお礼に招かれた別荘で、招待主が殺されるのですが、なんとそこはクローズド・サークルだったのです。
そんな話を含めた3つの中編と、ボーナストラックからなるパズラー・ミステリーです。
ここがポイント
かなり遊び心がある作品でブラックジョーク満載だったり、緊迫感が溢れたり、トリックが駆使されたりと、楽しませてくれます。
気が抜けない作品ばかりで、かなり楽しめておすすめです。
14、『正月十一日、鏡殺し』
歌野氏初の7編からなる短編集であり、日常に潜む陰湿な人間模様を描いた話が綴られています。
ここがポイント
大掛かりなトリックはありませんが、人間の心の闇に視点を当てています。
心理描写の秀逸さに見事に引き込まれ、臨場感がタップリと味わえる話ばかりです。
イヤミス以上と言っても、まちがいない作品です。
15、『ジェシカが駆け抜けた七年間について』
人を陥れようとする計画に、7年もの月日を要した、叙述ミステリー作品です。
監督に選手生命を台無しにされたと、失意のうちに自殺したマラソンランナーのアユミを同じクラブチームのジェシカは自分の事のように、胸を痛めていたのです。
そして7年後、新たな事件が勃発してしまうのです。
ここがポイント
心理的なトリックが駆使されていて、さらには時系列のトリックも使われています。
ミステリーを超えた、上質なスポーツ的な読み物としても楽しめます。
タイトルのように、七年間を駆け抜けた感覚に浸れる作品です。
16、『舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵』
中学生になった舞田ひとみが、メインとなって活躍する話が6編綴られた、短編ミステリーです。
ひとみは退屈な日々にあぐむ女子中学生3人と共に、刺激を求め、日常に潜む謎に挑んでいくのです。
ここがポイント
ネタの内容は小粒ですが、歌野氏の見せ方が上手く、プロットの巧みさに唸ってしまいます。
タイトルから結構ゆるいミステリーのように思われがちですが、なかなか結構シリアスな内容になっています。
次作にも、期待を馳せる作品です。
17、『放浪探偵と七つの殺人』
8編の傑作短編を収録したミステリーです。
さすらいの名探偵、信濃譲二が奇想天外な難事件の謎を見事な推理と行動で解決に導いていきます。
全般的にコンパクトにまとめられていて、ちょっとしたスキマ時間に読むにはピッタリです。
ここがポイント
快適なほどに騙されるトリックは健在で、快感さえ感じてしまいます。
異なる楽しみ方ができて、納得できるオチやテンポの良さにもしっくりくる作品です。
18、『世界の終わり、あるいは始まり』
連続する誘拐殺人事件に、我が子が関わっているのではないかと懸念を抱く父親の話です。
そしてその不安が段々と大きく膨れ上がっていくのですが、それは親子のコミュニケーションの問題だったのでしょうか。
ここがポイント
現実と妄想の間に渦巻く、疑念の気持ちが明確に分かってきます。
一味違う歌野作品が、堪能できます。
19、『さらわれたい女』
美しい人妻が借金だらけの便利屋を訪ね、「私を誘拐してください」という奇妙な依頼をしてくる話です。
引き受けたはいいが、やがてその依頼がとんでもないことに発展していくのです。
ここがポイント
人間の表と裏の心理を描いた作品であり、結末への展開は驚きの連続です。
歌野氏の隠れた名作の一つです。
20、『ROMMY越境者の夢』
歌手のROMMYが絞殺死体で発見され、さらにその死体が切り刻まれてしまったという話です。
一体誰が何のために、天才歌手に隠された驚愕の真相とは、果たして何だったのでしょうか。
ここがポイント
驚きの展開から切ないテーマにたどり着いた途端、悲しさと感動が溢れ出てきます。
ストーリー展開は大変テンポが良く、様々な謎や違和感も、ラストでスッキリ解消されます。
歌野氏、起死回生の作品でもあり、気持ちよく騙される作品です。
まとめ
テンポがよく、さらさら読めるミステリーでありながら、2転3転は当たり前、さらにその先にも驚愕の展開が待ち受けているのです。
そうです、それが歌野晶午なのです。
選りすぐりのおすすめの20選をご紹介させていただきました。
ミステリーの世界にどっぷりと浸って騙されてください。