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佐藤亜紀おすすめ作品8選をご紹介~見えなかった側面を描く~

緻密な構成と文体で知られている、佐藤亜紀氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきます。

大学院修了後、ロータリー財団の奨学金を得て、1988年~1989年にかけて、フランスに留学しています。

1991年に「バルタザールの遍歴」という作品で、日本ファンタジーノベル大賞を受賞し作家デビューを果します。

2002年には5年ぶりの長編である「天使」を上梓して、第53回芸術選奨新人賞を受賞しています。

佐藤亜紀おすすめ作品8選をご紹介~見えなかった側面を描く~

佐藤氏曰く、作品を描く上での一般論的には、あらゆる状況は常に多義的であり、人間も自分の置かれた状況において、複数の理解を平行して持っている筈であり、それを前提として書かなければ、雰囲気を具体化したとは言えないのだそうです。

私たちは自分が見たとも思っていないものまで見ているので、ある経験を紙面に再構成しようとするなら、その、見えていない見えているものの存在を考慮しなければならないそうです。

そういう見えなかった側面を描いた佐藤亜紀氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。

1、『バルタザールの遍歴』

オーストリアのハプスブルグ家に連なる貴族に生まれ落ちた、ひとつの身体を共有する双子のバルタザールとメルヒオールの話です。

ひとつの身体を共有する双子という設定にも興味が引かれますし、必ずしもふたりの意見がいつも一致するわけではなかったり、身体はひとつなのに、お互い相手に対して、秘密があるというのも興味が湧いてしまいます。

そして帝国の崩壊や父の死とともに、没落し、ふたりは酒におぼれ、遍歴を重ねていくのです。

ここがポイント

ふたり同時に行動、会話していたり、実態と幽体が別行動をとったり等、それだけで十分面白いのですが、色恋沙汰、悲恋、宿敵、腐れ縁の悪党の登場、享楽と貧窮の両極端を行き来する展開等、多彩な内容となっています。

歴史上の人物や事件なども描かれていて、あたかも異国の異次元を彷徨った感覚に陥ってしまう作品です。

2、『戦争の法』

日本海側にあるN県が、日本国から分離独立を宣言し、独立を支持するロシアの庇護下で、社会主義体制の国となってしまう話です。

対抗するゲリラ軍に身を投じる少年が主人公であり、彼の回想という形で物語が展開していきます。

ここがポイント

皮肉とユーモアを織り交ぜながら、淡々と語られる少年の心模様は、戦時中とは思えない程、まるで夢の中の出来事のようでもあります。

千秋、伍長、主人公の父などの魅力的な登場人物たちとの関係も、不思議であり、面白味を増しています。

あまり読んだことのない、クオリティの面白さが味わえる作品です。

3、『鏡の影』

学僧のヨハネスが、濃密な中世を舞台に、世界を覆すはずの一点を探し、真理を求めるも堕落していく話です。

中世の麗しくもグロテスクな描写にも圧倒されてしまいますが、錬金術や魔性の美男美女も絡んできて楽しめます。

ここがポイント

まるで壮大な抒情詩を読んでいるようでもあり、舞台劇を鑑賞しているかのような感覚にも陥ってしまいます。

また、恋愛の愚かしさと美しさが皮肉で優雅な筆致で、描かれているのも、感心してしまいます。

幻想小説の雰囲気や、キャラクターの愛らしさだけでも十分に楽しめる作品です。

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4、『天使』

感覚の天才であるジェルジュが、鋭敏の才能を開花させ、第一次世界大戦の混迷を極めるヨーロッパを生き抜いていく話です。

「感覚」保持者の中でも天賦の才を持つ少年であるジェルジュは、大酒のみの養父の元で、極貧生活を送っていたところを顧問官と名乗る人物に拾われて、育てられます。

成長し、「感覚」をコントロールする技を磨いたジェルジュは顧問官の部下として、政府の諜報活動を行うことになります。

ここがポイント

第一次世界大戦前後に、貴族社会がまさに崩れ落ちようとする中で、貴族として、或いは超能力者として育てられた若者が、ヨーロッパで暗躍するのです。

「感覚」のひたすらな描写に圧倒される作品です。

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5、『ミノタウロス』

帝政ロシア崩壊直後の混乱の中で、人間が単純な生と単純な快楽を貪り食う存在となって、うごめく様を描いた話です。

成りあがりの地主の息子が、財産、身内等もろもろを奪われて、殺戮と略奪の限りを尽くしながら、惰性で生きていきます。

人間の脆さと醜さを、物静かなタッチで描いていて、主人公が凍える大地で無感動に日々を送っている世界が、生々しく伝わってきます。

ここがポイント

無節操な暴力、荒廃した性、それは内戦という出口のない迷宮に閉じ込められ、人間性を失っていく人々の物語になっていて、佐藤氏はそれを「ミノタウロス」に例えたのだと思われます。

心の奥深いところで感じることができる、重厚な作品です。

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6、『吸血鬼』

19世紀のポーランドの片田舎がが舞台であり、都市から赴任してきた役人のゲスラー夫妻が、田舎の風習や迷信等の未文明や生産性の低さなどの未開発による貧困に対面する話です。

ある日、領内で妊婦の無残な遺体が発見され、その埋葬方法にゲスラーは面食らってしまいます。

街と田舎、征服と服属、領主と小作人、正当と異端といった、二項対立がこれでもかと詰め込まれていて、光よりも陰の部分が数段濃い印象で受け取れます。

独立蜂起に揺れる村、生活の格差から生まれる領主と小作人の思想の違いと、様々な人の思惑が混沌し、展開していきます。

ここがポイント

吸血鬼そのものは出てこないのですが、それがまだ信じられていた時代の、現実と悪夢が入り混じった作品です。

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7、『スウィングしなけりゃ意味がない』

第二次世界大戦下のドイツで、ジャズに魅了された金持ちの我儘息子たちが、国外の文化を規制する国に抵抗を試みる話です。

暗い状況下で、半ばやけっぱちに人生を楽しむ若者たちは、戦争という個人ではどうしようもない事態に飲み込まれていきます。

ここがポイント

生き延びるために、仕方なく折り合いをつけざるを得ない歯がゆさ、無意味で圧倒的な暴力、そしてしぶとくカウンターを打つ逞しさが、うかがえます。

日々強まる抑圧の中でも、背伸びしたい少年たちを魅了する、イケてるジャズはキラキラしていたのです。

痛切に描かれていく、後半の疾走感が堪らない作品です。

8、『黄金列車』

舞台は第二次世界大戦末期のハンガリーであり、ユダヤ人から没収した財産を列車でオーストリアへ運ぶ、史実に基ずくフィクションです。

ユダヤ人から強奪した財物を「国有財産」とし、列車で運んでいくのですが、ソ連軍の侵攻が間近に迫ってきていて、行先は二転三転してしまいます。

敗戦色が濃厚となる旅路で、列車の貨車の中身を奪いに来る組織の内外部の輩たち、しかし、その「国有財産」は、そもそもユダヤ人から奪ったものなのです。

ここがポイント

そんな中でも、役人のバログは、良心と責務の狭間で、何とか悪意の不在を証明すべく行動していくのです。

何が正義であり、何が正しいのかが、分からなくなってしまいます。

虚しくなってしまいますが、ラストには、清々しさに包まれた素晴らしい感動が味わえる作品です。

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まとめ

佐藤亜紀氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。

まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。

読書の楽しみがひろがりますよ。

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