独特な世界観が味わえる、吉川トリコ氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
短期大学卒業後、2004年に「ねむりひめ」という作品で、新潮社の女による女のためのR-18文学賞の第3回大賞と読者賞をダブル受賞します。
同年に「しゃぼん」という短編作品で新潮社から作家デビューを果します。
2007年には「グッモーエビアン!」という作品を原作としたドラマが地元のテレビ局で放送された他、「戦場のガールズライフ」という作品がドラマ化され、BSフジで、全20話放送されています。
吉川トリコおすすめ8選をご紹介~女性をテーマに描き続ける~
本を読むのは、集中できる寝る前が一番多いそうなのですが、ジムに通っていて、サウナに入り、サウナの中でも本を読むそうです。
少し温度が低めで、結構長く居られるそうで、結構、他の人も本を読んでいるそうです。
今後も女性、少女というモチーフを主体に、いろいろと気になるトピックを総ざらいにして書いていきたいそうです。
そんな吉川トリコ氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、どうぞお楽しみください。
『しゃぼん』
不思議な世界観のままに、淡々と話が進んでいく4編からなる短編集です。
ここがポイント
歪であり、汚くて、不器用で投げやりな「女子」たちを、飾らない言葉で描く話であり、必要以上に凝った言葉遣いは一切ないのに、ふとした瞬間の描写には、はっとさせられます。
普通に見たらただの怠惰な生活を送っているだけで、ドン引きしてしまうようなことを、どうやったら、こんなにキラキラしたものに見せられるのだろうか。
眩しくないものまでが、眩しく感じてしまいます。
素敵に年を積み重ねていきたいと思える作品です。
『少女病』
少女小説家である母、織子と父親の違う娘たち三姉妹の話です。
家事一切を引き受けている地味な会社員の長女、都、売れない漫画家の次女、司、真面目な美少女高校生の三女、紫、そして、万年少女のような女性小説家で母親、織子のそれぞれの視点でストーリーは展開していきます。
ここがポイント
きっと女性はみんな、ずっとどこかに少女を持っていて、疎しいのに、愛おしいという大人になり切れない部分があるのです。
胸が苦しくなるような切なさと、とても甘いお菓子のような優しさが同居した「少女」のような気持ちになってしまいそうな作品です。
『夢見るころはすぎない』
空振り続きの高校生活で、最後の学園祭に、一発逆転のときめきを期待する女子高生たちの心情を描いた6編からなる短編集です。
知らないことが多かったから、知ろうとして、その時の精一杯で背伸びしていたあの頃が思い出されます。
あの頃の不器用さこそ、そして純粋さこそがなくてはならない「青春時代」を彩る大切な調味料であったのです。
ここがポイント
それぞれの物語に登場するいろいろな少女というフィルターを通して、あの若き日のキラキラした日常を彷彿してしまいます。
忘れたいものを思い出させてくれるような作品です。
『ぶらりぶらこの恋』
名古屋を舞台にした、29歳ピアノバーの雇われピアニストの女性、野中るり子が、主人公の話です。
お金もなく、不安定な日々を送る中、ある男性、平岡宗介にプロポーズをされます。
そして、行方不明の父を捜すことと、ピアノを買ってくれるということを条件に同棲を始めていきます。
一人は寂しいけど、束縛は嫌であり、安定は欲しいけど、自由でありたい等、わがまま放題のるり子。
そして、同棲相手との甘い生活に倦み、ピアノ教室の生徒の男性に刺激を感じてしまうのです。
ここがポイント
誰にでもある狡さと浅ましさを感じてしまう作品です。
『密やかな口づけ』
様々な形の愛が描かれた、気鋭女性作家による6編からなる官能アンソロジー集です。
ここがポイント
それぞれに描かれる性に対する日々や、どこにでもありそうなもの、そうでないものがバランス良く詰め込まれています。
男性作家が執筆する官能小説とは少々異なり、表現が繊細であり、女性の気持ちが分っているので、リアルさも実感できます。
女性官能小説の独特な世界観が味わえる作品です。
『名古屋16話』
名古屋市の16区と東海地区を舞台にしたショートショートです。
ありきたりの日常を切り取った話が中心で、人間味が強く感じられ、夢とか恋に気付いていく人々が、輝いて見えたり、時には切なく胸を締め付けられたりしてしまいます。
どこの地域でもそうですが、思い出の場所というものは、時代の変遷により、無くなってしまうものが多くあります。
ここがポイント
形は無くなっても、人々の心の中には強い想いでは残り続けていくのです。
地元ネタも面白く、作中の写真も素敵な作品です。
『こんな大人になるなんて』
不真面目でもないし、不良でもないけど、ちょっと道を外れてしまう女性たちが主人公の7編からなる短編集です。
明確な夢や目標などがある生き方だけが、人生ではないけれど、登場人物皆がなんか不器用で、欲情や規律、思い上がりなどを考えずに流されてきた女性たちなのです。
そして、彼女達の話をまるで相槌を打ちながら、聞いてしまうような読みやすさと、彼女達の心の奥底をまるで照らしているかのような言葉が面白く感じてしまいます。
ここがポイント
中々のエロさの中にも、不快さのないさっぱり感があり、どこか可愛らしくて、すこしうらやましく思える作品です。
『女優の娘』
伝説のポルノ女優だった母、赤井霧子の存在を隠し、アイドルをしている斎藤いとの話です。
母の突然の死によって、母の存在が明らかになり、その追悼ドキュメンタリー映画の案内人として、出演することになってしまう、いと。
母親の存在に縛られ続けてきたと思い、生きてきた彼女の悲痛でもあり、どこかに冷たさも感じてしまう、屈折した感情が変化していく後半は一気に引き込まれてしまいます。
ここがポイント
果たして、母親の人生は幸運だったのか、不運だったのか、母と娘、そして女としての魂は、皮肉にも同じだったのかもしれません。
不思議な世界に引き込まれてしまう作品です。
まとめ
吉川トリコ氏の作品はお楽しみいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
読書の楽しみが広がりますよ。