全ての世代に人気がある、上橋菜穂子氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきます。
大学院博士課程単位取得退学後、各大学の助手、非常勤講師などを経て、現在は女子大学の特任教授をしています。
1989年に「精霊の木」という作品で児童文学作家としてデビューをします。
2014年には児童文学のノーベル賞と称される、国際アンデルセン賞の作家賞を受賞しています。
そして、2015年には「鹿の王」で本屋大賞を受賞し、全国の書店員や著名人からも絶賛の声が上がりました。
上橋菜穂子おすすめ8選をご紹介~異世界の物語を優しく描く~
物語が生まれるのはいつも、風景が見えた時だそうで、前触れもなく突然脳裏に浮かんだその風景の意味も、辿り着く道筋も見えぬまま、手繰り寄せるように物語を紡ぐそうです。
また、ファンとの交流も大変大切にしていて、サイン会、講演会なども頻繁に行っています。
そんな上橋菜穂子氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。
1、『精霊の守り人』
異世界の生物に卵を産み付けられ、宮廷を追われた皇子のチャグムと、雇われ用心棒の女性であるバルサとの旅を描いた話です。
舞台設定は精緻に作りこまれていて、作中の伝説は、さながら神話のようにも思えます。
ここがポイント
その世界観も一切の手抜きはなく、語り継がれる神話と隠された本当の歴史、重なる二つの世界、民族ごとに異なる宗教観や政治に関わる策謀までも綿密に描き出しています。
登場人物一人ひとりの抱える人生や思いが、文章や言葉に滲み出ていて、彼らの生き生きした姿が、感じられます。
子どもから大人まで、楽しめる作品です。
2、『月の森に、カミよ眠れ』
古代の日本を舞台にした、神々と人間とのふれあい、そして別れを切実に描き出した話です。
神話、古事記に近い感じで、神と人間が共に生きていた時代ですが、神がこの世から段々と去っていく様が描かれています。
ここがポイント
文明の発展という名のもとの人間の業が、未来を豊かにすると思い込むことで、神の領域に突き進んでいくのです。
でも、それは単に豊かにするのではなく、未来を奪っている事だという事に、人間は気付かない振りをしているだけなのです。
哀しい物語のはずなのに、どこか希望にも満ちた作品です。
3、『虚空の旅人』
隣国のサンガル王国に新王即位のお祝いに行った、チャグムが事件に巻き込まれる話です。
あの幼かったチャグムが逞しく成長した姿に変貌しています。
サンガル王国の新王即位の儀で起こる事件に、巻き込まれてしまったチャグムと従者シュガはどうなってしまうのか。
国王の次男であるタルサン、姉で三女のタルーナらと共に国の存亡に関わる陰謀に、立ち向かう彼らの姿に引き込まれてしまいます。
ここがポイント
自然やシャーマニズムへの敬意も感じられ、サスペンスとしてもファンタジーとしても楽しめる作品です。
4、『孤笛のかなた』
呪者に従わされた霊狐の野火と、母を殺されて、祖母に育てられた小夜、そして政治的な陰謀で屋敷から出ることを妨げられた小春丸の3人が出会い、政治的陰謀に巻き込まれていく話です。
精霊を操ることのできる呪者が神と人の世の間にいた時代に、悲しい運命を背負った小夜と小春丸が出会った幼少時代から物語は始まります。
ここがポイント
草いきれ、土のにおい、花の色がその文体から浮かび上がってくるようです。
そして長い間、小夜を見守り、自らの命をかけて戦う野火の姿が印象的に描かれています。
切なくも美しい魂と愛の物語です。
5、『獣の奏者 1闘蛇編』
母を失い天涯孤独の身となった少女エリンが、豊かな自然のもとで、生き物への興味を育み、やがて獣ノ医術師を目指す話です。
純粋で真直ぐな少女エリンは世の中の思惑の埒外で、自然の不思議にじっと目を凝らし、耳を済ませるのです。
渡りもので、周りの人から冷ややかな目で見られていた母、その母との死別を機に、エリンは生まれ故郷を捨てて、新たな世界へと旅立つのです。
自分の知識を駆使して、生き物の謎をひたすらに考えるエリンの姿に、本当の賢さを教えられます。
ここがポイント
架空の世界の話であるはずなのに、天を舞う王獣、地を駆ける闘蛇から、自然の神秘が感じられる作品です。
6、『天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編』
隣国と同盟を結ぶ為、密かに旅立ったチャグムを探すために出るバルサ。
この壮大なサーガの終幕へ向かう三部作の序章は、バルサ視点てのチャグムを探す旅なのです。
国の事など分からない、ただチャグムに幸せになって欲しいと願うバルサと、欲しくもない皇太子の地位ゆえの因縁に捉われるチャグムだったのです。
そんな二人は果たして出会えるのでしょうか。
ここがポイント
緊張感が続き、権謀術策が飛び交い、人間関係が入り乱れていきます。
覚悟をして生きるバルサとチャグムの心魂に、震えてしまう作品です。
7、『物語ること、生きること』
物語を書くにはどうしたらいいのか、と言う自分への問いかけに纏わるあれこれを、上橋氏自身の経験や過去を振り返りつつ語る一冊です。
人類学の道に進み、研究者として、アボリジニなどの研究をしつつも、捨てきれなかった作家になるという夢が心の中で燃え滾っていたのです。
物語ることに対して意識的で、いかに作家になろうともがいた日々の語りは、とても興味深く、上橋氏にとって、かけがえのないものだったのです。
ここがポイント
自分で自分の背中を蹴っ飛ばす勇気というものが、とても大事という事が痛いほど分かります。
8、『鹿の王(水底の橋)』
西洋医学と東洋医学がモチーフになっていて、人を助けることについて、二つの違う文化から捉えていく話です。
外部から異質なものが入り込んでくると、それに対抗すべく異質なものを排除する方向に物事は動いていってしまうのです。
そしてそれによって、本来持っていたはずの力が削がれていってしまいます。
ここがポイント
医学のあり方を問う内容であり、命をながらえること、命の終わりを迎えることなどについて、自問自答してしまいます。
人の可能性を信じてみたくなる、温かな物語です。
まとめ
上橋菜穂子氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
今、この時期だからこそ、素晴らしいファンタジーの世界を堪能していただきたいと思います。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
上橋ワールドの虜になって下さい。