独自の世界観を持った、石持浅海氏のおすすめ作品15選をご紹介させていただきます。
サラリーマンをする傍ら、執筆活動も続ける兼業作家です。
2002年に「アイルランドの薔薇」という作品でデビューを果たし、クローズド・サークルものを主に手掛けていましたが、最近では短編集や形式にこだわらないミステリーを書くことも多くなってきました。
兼業作家と言えども、年に3~5冊のペースで作品を発表しています。
※クローズド・サークルとは:密室ものという捉え方ですが、ミステリーにおいては外界との接触を断たれた、「吹雪の山荘」とか「嵐の孤島」のように広義な意味の密室を指す場合が多いようです。
【独特な世界を描く作家】石持浅海のおすすめ15選をご紹介
石持氏の作風は少し変わった設定が多いのは、兼業作家であるが故、他のミステリー作品を読む時間が少ない為、他の誰も考えないようなトリックを書けば、被らないだろうということのようです。
そんな訳で奇天烈な作品が多い石持氏ですが、一度はまってしまうとなかなか脱け出れなくなってしまいます。
当サイトが厳選した、石持浅海氏のおすすめ作品15選をどうぞお楽しみください。
1、『罪人よやすらかに眠れ』
北海道、札幌市にある、中島公園にある不思議な《館》に吸い寄せられるように集まる、様々な境遇の客たちの話です。
そしてその館に迷い込んだ客たちは、謎多き住人によって真実を暴かれることになるのです。
6篇からなる連作短編集で大変読みやすく構成されていて、続きが後を引くようなストーリー展開になっています。
ここがポイント
一般的な謎解きミステリーとは趣が違う面白い謎解きになっていて、石持氏の仕掛けが伺えます。
続編を待ち望む読者の方が多いのも頷けます。
2、『賛美せよ、と成功は言った』
碓氷優佳シリーズ5作目であり、殺人に対する息の詰まりそうな心理戦が開始される話です。
予備校時代の仲間の祝賀会で起こる殺人事件、犯人は分っているのに何を追及しようとしているのだろうか。
ここがポイント
石持氏独特の心理描写が存分に味わえて、結末への誘導するテクニックには、感服してしまいます。
読み終わってから、その意味ありげなタイトルに納得してしまいます。
3、『君の望む死に方』
ガンで余命宣告を受けた会社の社長が、自分自身を殺させる役目を社員にさせる話です。
社員を殺人犯にさせないために、いろいろと画策はしていくのですが、障害が立ち塞がってくるのです。
ここがポイント
見事に計算された展開と、思いもよらない動機の設定は、さすがとしか言いようがありません。
ラストに気になる面白さが詰まっている、倒叙ミステリーの傑作です。
4、『月の扉』
ハイジャックをされた飛行機内で起こる殺人事件の真相に、探偵が挑んでいく話です。
ここがポイント
ハイジャックと殺人という2つの事柄が、同時に勃発してしまう状況のなか、探偵はロジカルに謎を解明していくのです。
適度に緊張感に溢れた、小気味いい気分に浸れること間違いありません。
座間味くんシリーズの第1作目です。
5、『心臓と左手ー座間味くんの推理』
安楽椅子探偵の座間味君が登場する、6編からなる連作短編集です。
今までに解決した事件の話をして、真相を推理するという流れになっています。
ここがポイント
一つひとつの推理に無理がなく、「なるほど」と思わせてくれる説得力があります。
安定した面白さがあり、トリックがどうこうという謎解きではなく、事件にかかわったものがどういう心理状態だったのかというところに焦点を当てています。
座間味くんシリーズの第2作目であり、次のシリーズを待ち望む読者が激増してます。
6、『Rのつく月には気をつけよう』
ここがポイント
大学時代からの飲み友達が3人集まり、ゲストを招いて酒を酌み交わす、グルメミステリーのような7編からなる連作短編集です。
ゲストが持ち込む謎を解き明かしていくのですが、これがまた面白くて、のめりこんでしまうのです。
一見、くだらなそうな話でもこの3人にかかれば、たいそうな酒の肴になることは間違いありません。
食欲が出てくるミステリー作品です。
7、『届け物はまだ手の中に』
恩人の復讐のために殺人を犯し、そしてその事実をもう一人の人間に突きつけなければ、復讐は完結しないという話です。
そして、もう一人の人間にその殺人の事実を突きつけたいのに、何故なのか、なかなか会えないのです。
ここがポイント
何もかもがバラバラのように見える設定が、かえって興味をかき立てます。
迫りくる不穏な空気の漂い方に、石持氏の狙いがある作品です。
8、『攪乱者』
普段は一般人の仮面を被ったテロリストの3人組の話です。
その3人組に依頼される任務は、奇妙なことばかりだったのです。
でもやがてそのこと自体が意味を成すということが、じわじわと分かってくるのです。
ここがポイント
一見無意味な行動が、世の不安を煽るテロにつながっていくのです。
最後の最後まで全く読めないスリリングさは、見事というほかはありません。
9、『アイルランドの薔薇』
石持氏のデビュー作品であり、本格推理界に衝撃を起こした長編です。
南北アイルランド統一に貢献しようとした人物が、殺害された事件を日本人科学者が解明する話です。
ここがポイント
密室の中で推理合戦が繰り広げられていくなかでの、人物描写が特に素晴らしく臨場感がタップリと味わえます。
大変読みやすく、最後まで楽しませてくれる作品です。
10、『まっすぐ進め』
付き合っている男女の関係を男性の視点で語る、恋愛小説のような話が綴られた5編からなる連作短編集です。
日常、目にする事柄が何だか不思議に見えて、疑問を抱いてしまう、そんな事象を取り上げて話題にしています。
ここがポイント
最後にすべてが繋がっていく展開なので、続けて読んでいくと、より楽しむことができます。
また登場人物がみな魅力的であり、謎解きミステリーだけでなく、優しくて温かい恋愛小説でもあり、一冊で2度たのしめる作品です。
11、『温かな手』
謎の生命体である兄妹の名探偵が、人間の周りで起こる様々な事件を解決していくという、少しSFチックな7編からなる連作短編集です。
この兄妹探偵は人のエネルギー(余分な栄養エネルギーや過剰な感情エネルギー)を吸って生きているという奇抜な設定なのです。
ここがポイント
未知の生命体の不思議なキャラクターが、謎解きをより魅力的なものにしているところが、何とも楽しませてくれます。
真の見どころは最後の一遍で、タイトルにもなっている「温かな手」であり、何故、未知の生命体を主役に配したのか、石持氏の意図が切ない真相と共に明かされるのです。
優しくもあり、悲しくもある作品でした。
12、『三階に止まる』
石持氏初の短編集であり、全8編が収録されています。
マンションにしろビルにしろ、誰もボタンを押してないのに、必ず3階で止まるエレベーターがあったら気持ち悪いですよね。
ホラーには程遠く、少し気持ち悪いのか、いやほどほどに気持ち悪い、そうです「世にも奇妙な物語」風の話が綴られているのです。
ここがポイント
後からじわーっと来る怖さが何とも言えなく、ライトイヤミスのような作品です。
13、『顔のない敵』
対人地雷をテーマにした6編の連作短編集と、処女作短編で編まれた第一短編集が綴られています。
ここがポイント
様々なエピソードをミステリー仕立てにして、「対人地雷」の現実をイヤというほど突きつけてきます。
フクションではあるけれども、対人地雷の存在はフクションではないという石持氏の言葉に、深い思い入れを感じてしまいます。
ミステリーの域にとどまることなく、地雷のことを伝える側面も持ち合わせている、作品であり、感動しきりです。
14、『身代わり島』
景観素晴らしい三重県の鳥羽湾に浮かぶ本郷島で、他殺体がみつかる事件が発生する話です。
その他殺体は、大ヒットアニメ映画である、「鹿子の夏」のイベントメンバーの一人だったのです。
ここがポイント
登場人物それぞれの推理によって、ミスリードされつつも、ラストで伏線は回収されます。
いかにも2時間サスペンスの原作になりそうな話ですが、誰が犯人ではなく、殺人の動機が何だったのかに視点を置いている点が石持氏らしいです。
読み心地は大変良く、アニメを見ているような気分に浸れます。
15、『二歩前を歩く』
石持ミステリーの真骨頂と称される作品であり、科学では解明できない現象が次々に起こる話です。
6編を収録した短編集ですが、本格ミステリーではありません。
自然に起こったら気持ち悪いことばかりで、洒落た演出には毎回驚かされてしまいます。
ここがポイント
最後の最後で物語の空気感がガラッと変わる、石持マジックが味わえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。すこし、いや、かなり変わった作風の石持氏の作品を、15選ご紹介させていただきました。
どの作品も石持氏独特の思いが込められていて、楽しんでいただけると思います。
一風変わったミステリーをあなたのお気に入りに加えてみませんか。