ワクワク感を感じさせてくれる、吉田修一氏の作品10選をご紹介させていただきます。
1997年に「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞して小説家デビューを果たします。
作風は実に幅広く、純文学作品からスパイが活躍するエンターテインメントまで描いています。
自分では違うものを書いている意識はないそうで、”この人"を書きたいという感覚で書いているのだそうです。
この記事の目次
吉田修一のおすすめ10選をご紹介~徹底的なリアリティを追求~
文章を書くのは小説とエッセイだけで十分とのことで、SNSはやらなくて、自分で感じたことを小説以外で発信したいと思ったことはないそうです。
社会の価値というものは常に変貌していくので、極力気を付けていて、安易に世の中の影響は受けないようです。
そんな吉田修一氏のおすすめの作品を10選刊行順にご紹介させていただきますのでお楽しみください。
《最後の息子》
吉田氏の作風の全てが分かるような3編からなる短編集。
少しユーモラスでありながらきちんと人間を描いているタイトルの「最後の息子」、血と地をテーマにした人々の暮らしをテーマにした「破片」、高校水泳部員の限界に賭ける葛藤と性への欲望を爽やかに描いた「Water」。
どの話も登場人物たちの不器用な生き方に、胸が締め付けられるような感覚になってしまいます。
タップリと余韻に浸れる読後感になります。
《パークライフ》
タイトルの「パークライフ」と「fiowers」の2編を収録した短編集。
パークライフ:地下鉄でうっかり話かけた女性と日比谷公園で会うようになった「僕」の毎日を描いている話。
flowers:引越し屋で働く若い男の周辺の人間模様を描いている話。
単調な生活に流されがちになる日々をふと立ち止まって、人との出会いや風景、そして感情を大切に捉えていくことを教えてくれるような作品です。
《パレード》
若い男女4人の奇妙な同居生活、その怠惰に流れていく毎日の暮らしにさらに1人が加わる話。
章ごとに住人それぞれの視点で話していく展開で、物語は淡々と進んでいきます。
ただの青春物語のように見せて、実は登場人物たちの抱える微妙な闇や歪みがとても絶妙に描かれていて、惹きつけられてしまいます。
何かゾクッとして楽しませてくれる作品です。
《悪人》
殺害された一人の女性を巡り、その周囲の複数の人々の様々な視点から描かれる、真実と明らかになっていく犯人を描いた話。
登場人物一人ひとりが丁寧に描かれているので、どっぷりと浸りながらも面白く読み進んでいけます。
悪人はいたるところにいるのに、本当の完全な悪人はいないのかもしれないという気持ちになります。
加害者家族と被害者家族のそれぞれの心理描写とか行動に、心が打たれる作品です。
《さよなら渓谷》
桂川渓谷で起こった幼児殺害事件の容疑者として実母が浮かぶ話。
週刊誌記者が事件の真相を探っていくうちに、隣人夫婦に疑惑を抱いていきます。
そして過去のレイプ事件に絡んだ関係が明らかになっていき、事態は思わぬ展開へと進んでいきます。
犯してしまった過ちは消し去ることはできないけれど、それでもその罪を償おうとする人間の良心が報われる期待感を感じてしまいます。
脳が揺さぶられそうな作品です。
《横道世之介》
大学進学のため長崎から東京へ出てきた、横道世之介と彼に関わった人たちとの出来事を描いた青春物語。
どこかトボけていて、純粋で、でも、18歳らしい男の子の青春の日常物語を綴っています。
良き昭和の時代が描かれていて、ところどことに現在の友人たちの様子も、ツギハギで入っていて楽しくなります。
せつないけど温かい話がいっぱい詰まった作品です。
《平成猿蟹合戦図》
出会うはずのない人々が出会って予想もしない目標に向かって、一つになって戦いに挑んでいく話。
復讐劇とサクセスストーリーという奇妙な取り合わせなのですが、登場人物が皆、魅力的で大変楽しめます。
うだつの上がらない人生も、もしかすると適性のある職業に就けば、信じられないような奇跡も起こるのではという感にさせられます。
わくわくしながら読める作品です。
《太陽は動かない》
鷹野一彦シリーズの第一弾であり、新油田開発の利権争いの渦中で起こった射殺事件に鷹野が挑んでいく話。
疾走感のあるスパイ映画のように敵味方が入り乱れたり、立場が変わったりとドキドキする展開で物語は進んでいきます。
アジア各地が舞台になっていて、それぞれの話が繋がり始めるとますます面白くなり目が離せなくなります。
壮大なスケールに圧倒される作品であり、後を引いてしまいます。
《愛に乱暴》上・下
東京郊外で義理の両親と同じ敷地内であるが、別々の住居に住む夫婦に関わる話。
夫の不倫相手の妊娠により、離婚を切り出されてしまう妻、しかし頑なに自分の立場を守ろうとする妻。
現在と過去が交錯して、パラレルワールドのような不思議な感覚に陥ってしまいます。
やったら、やり返される、因果応報的な作品です。
《怒り》上・下
夫婦殺人事件から始まり、犯人を追う警察と犯人と思われる3人の男とその周辺を描いた話。
3人それぞれが違った場所での何気ない日常や何気ない出来事に、何故か引き込まれてしまいます。
そして少しづつ犯人像が明らかになるにつれ、一見普通にみえる人の持つ「怒り」の大きさがズッシリと伝わってきます。
人を信じることの難しさが分かる作品です。
まとめ
徹底的なリアリティを追求し続ける吉田修一氏の作品は、いかがでしたでしょうか。
幅広い作風でかなり楽しめると思います。
まだ読んだことがない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
あなたの読書ライフが広がりますよ。