様々なテイストで読者を魅了する、篠田節子氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、市役所に10年以上勤務し、1990年、35歳の時に執筆した、パニックSFタッチの中編ホラー小説「絹の変容」という作品で、小説すばる新人賞を受賞し、市役所勤務を辞めて、作家業に専念することとなります。
作風としては広義のミステリーやホラーに分類されるますが、本人的にはあまりジャンル意識がないようです。
篠田節子おすすめ10選をご紹介~様々なテイストで読者を虜に~
作品を描くための取材は、自分の発想を膨らませるために必要不可欠なことであり、新しいものを摂取していかないと、同じところに留まってしまうという観点から、新しい世界を開拓していくためにも、取材を大切にしているとのことです。
そして、しっかりした取材をもとに大作に取り掛かっているとのことです。
そんな篠田節子氏のおすすめ作品を刊行順に、10選ご紹介させていただきますので、どうぞお楽しみください。
1、『神鳥ーイビス』
27歳で夭折した明治の女性日本画家が死の直前に書いた「朱鷺飛来図」という絵と、その作者の謎を追っていく女性イラストレーターと作家の話です。
ここがポイント
二人は時空を超えた世界で、繰り広げられる恐怖へと誘われていき、奥深く入り込んでしまうのです。
朱鷺たちの人間への怨念、憎悪が凄まじく描かれていて、あの美しい鳥からは想像もできません。
ホラーとパニックが、融合したような作品です。
2、『女たちのジハード』
夢を追いながらも、厳しい現実に立ち向かい、頑張っている保険会社に勤める5人のOLの話です。
どの女性も個性的であり、融通が利かなそうで、それでいて、真直ぐな感じで、一生懸命に生きている様が描かれています。
リストラという言葉は出てきますが、バブル華やかしき頃の物語なので、時代を感じさせる描写が多くあります。
ここがポイント
時代が変わろうとも一生懸命に生きる女性の姿が、素敵に思える作品です。
3、『死神』
福祉事務所のケースワーカーの仕事を題材にした、8編からなる連作短編集です。
病気で働くことができない、労働意欲が沸かない、家庭の問題や、社会の基準からはみ出した弱者にとっての最良の道とは何なのかが綴られています。
ここがポイント
読んでいて感傷的な気持ちになってしまいますが、身近に感じることも多々あって、人とは強さと弱さを併せ持つ生き物だということが分かります。
人間の狡さ、弱さ、したたかさなど、一筋縄ではいかない様子を、ケースワーカーの仕事を通して表現している作品です。
4、『神の座ーゴサインタン』
日本とネパールの農村を舞台にした、豪農の跡取り息子の没落と再生を描いた話です。
旧家の後を継いだ主人公の結木輝和は、ネパール人の妻を娶りますが、奇行癖のある妻は、宗教の教祖に奉られて、ご託宣に従って、輝和は無一文になってしまうのです。
やがて失踪した妻を探して、輝和はネパールへ旅立つのです。
怒り、悲しみ、怖れ、絶望と輝和の心は、揺れ動き、彷徨いながら失踪した妻を探して、神の山、ゴサイタンの麓に辿りつき、生きる意味を悟るのです。
ここがポイント
豊かさとは何かというテーマを終始問いかけられているような、壮大なスケールを感じる作品です。
5、『仮想儀礼』上・下
仕事を無くした男二人が金儲けのために考えたのは、新興宗教のビジネスであったという話です。
ネットでの悩み相談から始めた新興宗教は、会員をみるみる増やしていき、企業のスポンサーもついて大教団になっていきます。
しかしすべてがうまくいくはずもなく、問題が発生して次第にさびれていきます。
話の中にはかなり過激な描写もありますが、巧妙な筆致の文章と登場人物の描写が素晴らしく目が離せません。
ここがポイント
人の愚かさや、恐ろしさを強く感じてしまう作品です。
6、『弥勒』
ヒマラヤに位置する架空の小国家パスキムが舞台の話です。
その国パスキムで革命に巻き込まれ、強制労働キャンプのようなところで暮らすようになる、新聞社社員の永岡。
ここがポイント
個人の持つ信仰心や尊厳、正義、生きるとは何かを感じさせてくれます。
重く、深く、ガツンとくる作品です。
7、『レクイエム』
ここがポイント
生きる上で大切なものを失った人たちを描いた、6編からなる幻想短編集です。
全体的にどんよりとした雰囲気の中、先に続くように、そして何かを終わらせようとする様々な結末が、描かれています。
幻想的な雰囲気があり、不思議な感覚に陥ってしまいます。
独特な世界観のある作品です。
8、『天窓のある家』
女性の心理を掘り下げた9編からなる短編集です。
ホラー、サイエンスフィクション、ハートフルストーリー等、女性の生き方を問うものが、描かれています。
ここがポイント
女性の日常の小さな不満や嫉妬、閉塞感などが、どれもある意味狂気に変貌していくのです。
自分の生きざまを振り返ってしまうような作品です。
9、『秋の花火』
全く異なるジャンルの作品を収めた5編からなる短編集です。
一話一話に篠田氏の個性が溢れていて、まるで長編を読んでいるような充実感が味わえます。
ここがポイント
人生の悲哀の中に垣間見える姿が、うまく描かれていて、文中に引き込まれてしまいそうになります。
人間の持つ業について、深く考えさせられる作品です。
10、『ロズウェルなんか知らない』
過疎化が進む町で、UFOやオカルトで町おこしを企てる若者たちを描いた話です。
とにかく痛快で、面白くドキドキさせてくれる展開で、ストーリーは展開していきます。
ここがポイント
愚かしいけど、一生懸命行動をするメンバーにとても愛着が湧いてしまいます。
考えさせられる課題を含んだ作品です。
まとめ
様々なテイストを持った篠田節子氏の作品のご紹介はお楽しみ頂けましたでしょうか。
長編が多いですが、長さが気にならないくらいにかなり楽しませてくれます。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。