ロジカルな構成が魅力的な、相沢沙呼氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
大学を中退し、2009年に「午前零時のサンドリヨン」という作品で、東京創元社主催の第19回鮎川哲也賞を受賞し、作家デビューを果します。
自分は作家になるだろうと思い、10代の半ばから小説を書いていたそうですが、まさか、ミステリー作家になるとは当時思っていなかったそうです。
相沢沙呼おすすめ8選をご紹介~真の醍醐味は証拠へ導くロジック~
推理小説を夢中になって読み始めたのは、大学生になってからだそうで、それまでは、ライトノベルに親しんでいて、ミステリーとは無縁だったようです。
ミステリーを書くことになったキッカケは、倒叙ミステリーの傑作で、映像化された古畑任三郎シリーズだったそうです。
また、近年ではライトノベルの執筆や、漫画原作なども手掛けているとのことです。
そんな相沢沙呼氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、『マツリカ・マジョルカ』
マツリカシリーズの第一弾であり、いまいち冴えない少年、柴山祐希が、廃墟に住む謎めいた美少女、マツリカに、パシられながらも学園の謎に挑む話です。
柴山は勉強も運動も苦手で、友達もいなく、クラスでも目立たなく過ごしてきたのですが、廃墟ビルに一人で住んでいる、魔女のような女子のマツリカに出合い、少しずつ自分の内面が変化していくことに気付いていくのです。
4話からなる連作短編方式になっていて、最初の3話は学校内で起きる小さなミステリを、安楽椅子探偵よろしく、マツリカがいとも簡単に解決してしまいます。
最後4話目は伏線を張られた叙述ミステリであり、かなり楽しめて糸を引く展開です。
ここがポイント
一見コミカルな中にも、ブラックさが漂う作品になっています。
2、『マツリカ・マハリタ』
マツリカシリーズの第二弾であり、段々と自分の世界が広がってきた柴山が、1年生のりかこさんの怪談話を聞き、調査を開始する話です。
謎を探る中、友達が増えて、少しずつ感情を出していくことが、できるようになってくる柴山。
今回も4話からなる短編形式で、相変わらず柴山の劣等感が、激しいのですが、各話のラストの「ありがとう」の一言で、少しずつですが、自身の存在意義を感じて救われていくのです。
ここがポイント
ミステリー部分はかなり面白くなっていて、話のオチにも余韻が出ている楽しめる作品です。
3、『マツリカ・マトリョシカ』
マツリカシリーズの第三弾であり、校内の「開かずの扉」の秘密に柴山とマツリカが挑む話です。
今回は本格ミステリーの長編であり、2年前の密室で起きた事件と今回の制服盗難事件が絡んでいて、濡れ衣を着せられそうになった柴山と謎解きに奮闘する仲間たちの様子が描かれています。
過去のマツリカシリーズとは打って変わって非常にロジカルな構成になっていて、柴山が徐々に仲間を増やしているのも、成長の証です。
ここがポイント
今回は出番が少なかったのですが、柴山の窮地に颯爽と現れたマツリカが、異様にカッコよく思えます。
登場人物たちの掛け合いにも、楽しめる作品です。
4、『雨の降る日は学校に行かない』
女子中学生の内なる秘密を掬い取った6編からなる連作短編集です。
学生が抱える大人になることの不安、いじめ、カースト、不調などを抱えながら、学生生活を送る様子が繊細に描かれています。
学校生活が自分の中で多くを占めていた時代、そこにうまく馴染めない少女たちの息苦しさを、これでもかと言うほどに、描かれています。
大人に近づいていく、不安定な自分をダメな奴だと自分で苦しめる様は、とても痛々しく辛くなってしまいます。
親切心を装いながら、繊細な悪意を持って、平気で相手を傷つける輩もいるのです。
ここがポイント
少女たちの心の叫びを、感じてもらいたい作品です。
5、『ココロファインダ』
高校の写真部に所属している4人の女の子を主人公とした、4編からなる連作短編集です。
ここがポイント
4人の1人称で語られる4つの物語は、当たり前の日常の中で、真剣にコンプレックスと戦う写真部員たちの苦悩と成長が描かれています。
それぞれの立ち位置や過去、抱える悩みを写真に撮るということに絡めて綴られていて、友達同士惹かれたり、嫉妬したり、また助けあったりと、同じ時期に青春を過ごしたものでなければ、理解しあえない絆があるのが分かります。
辛くもあり、温かくもある作品です。
6、『午前零時のサンドリヨン』
酉乃初の事件簿シリーズの第一弾であり、マジックが得意な女子高生の酉乃初と、彼女に一目惚れしたクラスメイトの男子高校生、須川の周囲で起きる日常の謎に挑む4編からなる連作短編集です。
高校では地味で冴えない少女が、放課後になるとレストラン・バーの「サンドリヨン」で、鮮やかなマジックを披露するというユニークなヒロイン設定になっています。
そしてその彼女が、学園で起きる不思議な事件を、その優れた観察力と記憶力を駆使して解決していくのです。
ここがポイント
構成自体としては、最初、短い事件が、いくつか重なっているような感はありますが、そこに散りばめられた伏線を最後の事件で鮮やかに回収していきます。
酉乃の魅力的なキャラも、ちょっとくすぐったくて、もどかしくなるくらいの須川との恋模様も癒されてしまいます。
程よく起伏があって、読みやすい作品です。
7、『小説の神様』
小説の神様シリーズの第一弾であり、売れない男子高校生作家の千谷と、同い年で人気の女性作家の小余綾の二人が、小説を合作する話です。
二人が内に秘める想いを、ぶちまけるような魂からの叫びと、ぶつかり合う姿がとても印象的に描かれています。
二人が苦しんできたのは、この作品を作るためにあったのだと、感じてしまいます。
もがき苦しみながら言葉を綴る者と、苦労しないでも言葉を綴れる者が、共作を作り上げていくのです。
ここがポイント
二人の主張はどちらも間違っていないからこそ、余計に葛藤を生んでしまうのです。
創作者の苦難と喜びと戦いが、ぎゅっと詰まった作品です。
8、『Medium 霊媒探偵城塚翡翠』
ふとしたきっかけで出会った、推理作家の香月史郎と霊視能力を持った城塚翡翠が、難事件に挑んでいく話です。
城塚翡翠はその霊視能力で事件の犯人を、たちどころに当てて見せるのですが、肝心の推理の過程がなく、その推理をするのが、香月史郎なのです。
この名コンビは、その手法で次々に難事件を解決していくのですが、最後の事件で城塚翡翠に命の危機が訪れてしまうのです。
ここがポイント
真にすべてが伏線という宣伝文句どおり、衝撃と興奮は計り知れないものがあります。
今までの事実が、覆される快感が味わえる作品です。
まとめ
相沢沙呼氏の作品のご紹介はお楽しみいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。