壮快な読後感に浸れる、倉知淳氏のおすすめ作品を10選ご紹介させていただきます。
1994年に「日曜の夜は出たくない」という作品で、倉知淳としての作家デビューを果たします。
デビューから20年以上経過していますが「生きていける、ギリギリの量だけ計算して働いている」というような寡作作家であり、まだ著作は17冊しかありません。
倉知淳のおすすめ10選をご紹介~切れ味の鋭い仕掛けを展開~
ユーモラスで親しみやすい作風ですが、ミステリーの完成度としては高いクオリティを持っています。
デビュー以来、主に短編でライトな本格ミステリーを主軸として発表していて、切れ味の鋭い仕掛けや、謎解きを展開しているのが特徴です。
そんな倉知淳氏の作品を10選刊行順に、ご紹介させていただきますのでお楽しみください。
1、《日曜の夜は出たくない》
猫丸先輩が登場する、痛快無比の7編からなるデビュー作品となる連作短編集です。
ここがオススメ
コメディ調であったり、ホラー風味だったりと、色々なテイストが詰まっています。
全ての作品に共通しているのは、神出鬼没の変人である猫丸先輩が噺家のような軽妙な語り口で登場し、事件を解決していく姿がとても痛快です。
一冊で様々なミステリーの味が満喫できる作品です。
2、《過ぎ行く風はみどり色》
豪邸の密室となった離れで、第一の殺人が起き、そして降霊会の最中に第二の殺人が起こる話です。
例のごとく猫丸先輩が登場し、興味のあるものに夢中になれる猫丸先輩の姿勢が、真実を暴くのに役立ちます。
ここがオススメ
話のあらゆるところに小さな伏線やヒントが張り巡らされていて、読むのが楽しくなってしまいます。
爽快な読後感にもなれて、優しく感じられる作品です。
3、《占い師はお昼寝中》
ぐうたら占い師である、辰寅叔父の推理が冴える、6編からなる連作短編集です。
渋谷のおんぼろビルの「霊感占い所」は、怪異な現象に悩むお客が、やってくるのです。
ここがオススメ
いい加減な仕事の仕方のように見えますが、背景に潜んだ人たちの心理を読み解く、見事な推理を発揮するのです。
日常の謎を霊や妖怪の仕業にして悩みを解決するスタイルで、それがどこか現実離れしていて、独特な雰囲気を醸し出しています。
文体も柔らかくて読みやすい作品です。
4、《星降り山荘の殺人》
雪で隔離された山荘で、殺人事件が発生する話です。
ここがオススメ
読者に殺人事件の謎解きを促し、場面が変わるごとに作者からのヒントが、小見出しになっていて、楽しむことができます。
窮地に落ちた主人公を探偵が救い出すロジックは、きちんと組み立てられ、思わず拍手したくなる程の爽快感が湧いてきます。
本格ミステリーが、味わえる作品です。
5、《ほうかご探偵隊》
小学校5年生の僕が、友達とともに学校で起きた連続消失事件に挑む話です。
謎解きの楽しみとユーモアに満ちていて、派手さはありませんが、不可能な状況や暗号解読、ミッシングリング等、本格推理のエッセンスが凝縮されています。
ここがオススメ
終盤は二転三転して、なかなかの読み応えがあり、大人も子供も楽しめる作品です。
6、《片桐大三郎とXYZの悲劇》
エラリー・クイーンの「ドルリー・レーン悲劇四部作」になぞらえた4編からなる中編集です。
聴力を失った往年の大スターの片桐大三郎が、付き人である。通称、のの子と事件を解決していきます。
ここがオススメ
片桐大三郎の型破りな行動や、長い前置きからヒントを得ることができ、余裕で謎解きを楽しむことができます。
続編が待ち遠しい、作品です。
7、《シュークリーム・パニック》
バラエティーに富んだ、傑作本格ミステリーが味わえる、6編からなる短編集です。
殺人事件も起こらなければ、血が流れることも起きません、しかし、事件は起きるのです。
軽妙な語り口で、少しクセのあるキャラクター、そして、さりげない謎が絶妙に組み合わされているのです。
ここがオススメ
文体の冗長さとか理屈っぽさまでをもスパイスにしていて、とても安定感がある作品です。
8、《皇帝と拳銃と》
ここがオススメ
犯人視点で語られる、4編からなる短編集です。
倒叙ミステリーの同一探偵による連作であり、死神然とした乙部警部VS完全犯罪を目論む犯人たちとなります。
その見た目に恐れや気味の悪さを感じる犯人たちが、乙部警部に静かにじわじわと追い詰められていくのです。
派手さはありませんが、じんわりと沁みてくる面白い作品です。
9、《豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件》
殺人事件で構成されている、6編からなる短編集です。
どの事件も奇妙奇天烈で、謎解きや犯人捜し等は殆どなく、何故そうなったのかを楽しむという感じになります。
ここがオススメ
まるでバカミスのような気分が味わえ、最後の作品には猫丸先輩が登場し、あの愛くるしさと、鬱陶しさは相変わらず健在です。
軽く楽しめる作品です。
10、《ドッペルゲンガーの銃》
倉知氏の技が冴えわたる、3編からなる連作中編集になります。
3編とも不可能殺人がテーマとなっていて、キャリア刑事である兄と、女子高生ミステリー作家の妹が、事件に挑んでいきます。
事件の分かりやすい不可能性の表現が絶妙であり、トリックを思わず推理したくなります。
ここがオススメ
どの話も真相の完成度は高く、やられた感が存分に味わえる作品です。
まとめ
倉知淳氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
倉知氏の隠れた魅力が、堪能できると思います。