2021年、人気のミステリー・推理小説42選をご紹介させていただきます。
様々なランキングで、人気のあるミステリー作品ばかりを集めさせていただきました。
ミステリー小説の大家の作品は勿論のこと、新進気鋭作家の作品もあり、その面白さにかなりハマってしまうと思います。
”今が旬”の人気ミステリー・推理小説選びの参考にしていただけたらと思います。
【2021年最新版】人気のミステリー・推理小説おすすめ42選をご紹介
作品の中に一歩足を踏み入れるともう抜け出せなくなってしまう、そんなミステリー小説ばかりを集めてご紹介させていただきます。
なお、作家によりましては、過去の作品等、未だ人気がある作品も合わせてご紹介させていただいています。
やはり、人気がある作品は、いつまでも読み継がれていくものなのです。
そんな人気の42選をご紹介させていただきますので、お気に入りの作品がきっと見つかると思います。
さあ、新しいミステリーワールドの扉を叩いてみませんか。
1、『ラプラスの魔女』東野 圭吾
元警官の男が、若い女性のボディーガードをするところから話は始まります。
SFっぽいのですが、いかにも実際に起こりそうな出来事に仕上がっています。
特殊な能力を持っている人間は他人が思っている以上に、本人自身かなり深刻な問題として思っているものなのです。
ここがポイント
東野氏、作家デビュー30周年にして80作目の記念すべき作品です。
読まなければ後悔します。
2、『人魚の眠る家』東野 圭吾
仮面夫婦に知らされる娘の突然の悲報、果たして夫婦はどんな決断をするのでしょうか。
東野氏、デビュー30周年の記念作品ということで、大掛かりで周到なトリックがあると思いきや、なんと、脳死とか臓器提供とかの重くて、深刻な医療問題をテーマにしています。
ここがポイント
予想をはるかに超える悲痛なストーリー展開ですが、何故かすがすがしい気持ちにしてくれます。
なんといっても、東野氏の描写の卓越した筆致に感服してしまう作品です。
3、『希望の糸』東野 圭吾
様々な事情を抱えた家族が、絡み合って殺人が起きてしまう話です。
加賀恭一郎シリーズのように思えますが、実際の主役は従兄弟の松宮刑事であり、彼の出生の秘密と事件の真相がリンクする形でストーリーは展開していきます。
最初は別々の話に思えたことが、やがて、一つにまとまっていくのです。
ここがポイント
幾重にも重なり合った偶然と不運、それらが最も深く合わさった時に事件が起きてしまうのです。
根底にあるのは親が子を、子が親を想う気持ちだったのです。
人は誰の為に、そしてなんのために生きているのか、考えさせられる作品です。
4、『クスノキの番人』東野 圭吾
ある事情で、神社のクスノキの番人を任された青年と、そのクスノキへ祈念に訪れる人々の織りなす話です。
ここがポイント
心温まるミステリーのようなファンタジーであり、満月の夜と新月の夜にクスノキに祈念することによって、不思議な現象が起きるのです。
言葉だけでは伝えられない思いは、優しくて悲しいものなのです。
社会から取り残されたような青年も、クスノキの番人という仕事を通して、段々と成長していきます。
クスノキに宿る神秘の力とその番人として、そしてそれを祈念する人たちの切ない思いが絡みあう奇跡の作品です。
5、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野 圭吾
雑貨店のポストへ手紙を出すことで、時空を超えて人と繋がる人間ドラマです。
少年3人が盗みをして逃げ込んだ古い家は、かって悩み相談を受けていた有名なナミヤ雑貨店だったのです。
そんな時、届いた一通の手紙に少年たちが返信していくところから、物語は展開していきます。
人生経験がある訳でもない3人が、考えた末に書いた返事は、相談者にとって人生を大きく左右してしまうのです。
ここがポイント
人生で思い悩むことはいっぱいありますが、人との繋がりや、他人の些細な言葉で動かされることも大いにあるのです。
とにかく温かい気持ちになれる作品です。
6、『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』東野 圭吾
父親を殺人事件で失った娘が、マジシャンの叔父と共に犯人を捜していく話です。
殺された元教師の兄のことをマジシャンである弟が、警察や教え子、姪っ子など登場人物のやり取りから、推理を働かせ、謎の解明に挑んでいきます。
ここがポイント
物語りが曲線的に進み、人々の心理状態や経済状態、社会的地位、コロナ禍などと混ざり合い、軽快な流れで展開していきます。
殺人事件なのに、切り口が軽く、あえてそういう演出なのかと思ってしまいます。
ミステリーを十二分に堪能できる作品です。
7、『犬神の杜 よろず建物因縁帳』内藤 了
犬神に憑りつかれる物語であり、ホラーのような怖さはあまり感じませんが、犬神や蠱毒(コドク)の話は奥が深くて、かなり惹きつけられてしまいます。
ここがポイント
昔からの言い伝えとかしきたりというものは、理屈や感覚で納めきれないものが、たくさんあるのかもしれません。
祟りという言葉には、かなりゾクッとしてしまいますが、あながち、すべてが迷信だと考えることができないと思ってしまいます。
読後感は少し悲しい気持ちになる作品です。
8、『かがみの孤城』辻村 深月
不登校になった中学生の主人公が鏡の中に入っていくという、ファンタジーのような展開の作品です。
鏡の中は自分と同じような人ばかり、その仲間たちと協力しあいながら絆を深めていきます。
ここがポイント
登場人物の微妙な心理描写が大変リアルで、臨場感がタップリ味わえます。
謎が解明された時の爽快感がたまらなく、気持ちいいです。
9、『孤狼の血』柚月 裕子
昭和の末期に広島で発生する、ヤクザ同士の抗争に、まるでヤクザのような刑事が挑んでいく作品です。
広島弁が満載で、まるで、深作欣二監督のヤクザ映画、「仁義なき戦い」を彷彿させるハードボイルドチックな展開です。
ここがポイント
警察組織にとって、はみ出し刑事とかは目ざわりですが、本当は必要なものかもしれません。
10、『検事の信義』柚木 裕子
検事、佐方貞人シリーズの第四弾であり、4編からなる短編集です。
真っ当な裁きとはいったいどういう裁きなのでしょうか、様々な事件には様々な要因と状況が存在し、その積み重ねで事は起こってしまいます。
結果は動かしようもなく、歴然としているのですが、そこに至るまでのプロセスは様々であり、特別な事情があったり、しがらみであったりと、それらを微に入り細に入り調べることで、事件の本質が見えてくるのです。
抱えている仕事は驚くほど多いのに、納得できないことを放っておけない性格であり、忖度という文字は佐方検事には無縁なのです。
ここがポイント
ブレない人間はどんな職業であっても、素晴らしいと思える作品です。
11、『暴虎の牙』柚木 裕子
「狐狼の血」シリーズの完結編であり、暴力団の抗争が続く広島、呉原でヤクザも恐れず、仲間を率いてシノギを奪う沖虎彦を軸に、刑事の大上と日岡を描いた話です。
任侠に身を置く熱い男たちの魂が激しくぶつかり合い、そして消え入る刹那が眩いばかりの光を放っています。
ここがポイント
命を賭してまで仁義を貫く侠気に魅せられ、胸が熱くなってしまいます。
昭和から平成への場面展開の描写には、かなり痺れてしまいます。
沖はカタギには手を出さず、相手にするのは薄汚い極道だけなのです。
男たちの不器用さが、痛くて、切なく感じる作品です。
12、『いまさら翼といわれても』米澤 穂信
米澤氏の古典部シリーズ最新作にして、誰もが大人になるために挑む、謎に焦点をあてて、ストーリーは展開していきます。
このシリーズの落としどころは、決してミステリーの謎解きなどではなく、青春ど真ん中の人間模様に尽きると思います。
ここがポイント
友達のために必死になれた、そんな素敵な青春時代を思い出させてくれます。
最後まで読んでいただくと、タイトルの意味がなるほどと分かります。
13、『Iの悲劇』米澤 穂信
一度、廃村になった村にIターンとして、新たな住人を移住させる役所の「蘇り課」で働く主人公たちが、移住者たちのトラブルに対処していく連作短編集です。
移住者が巻き起こす数々の問題や謎を解決していくのですが、村を去るものを引き留めることができなくなってしまうのです。
こんなにもクセが強い人ばかりが集まり、次々に問題が起こる謎は、最終章で明らかになっていきます。
日本の抱える限界集落の現実を見ているようであり、人口減少による予算の削減は当然なのです。
ここがポイント
最後に突きつけられた苦い現実に、やりきれない気持ちがこみあがってくる作品です。
14、『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』南 杏子
終末医療の実態を現役の女医が描く衝撃のデビュー作品です。
ここがポイント
死という恐怖とどう向き合っていくのか、そしてそれに自分がどう関わっていくのかを示唆してくれる、バイブルのように感じてしまいます。
在宅医療の問題にも深くメスを入れた内容であり、感動すること間違いない作品です。
15、『零れた明日-刑事の挑戦・一之瀬拓真』堂場 瞬一
芸能事務所社員の女性が殺害され、その事件解決に挑む刑事の話であり、堂場氏得意のの警察小説シリーズです。
芸能界と暴力団の癒着体質は相も変わらず蔓延っている、そんな中、子供が生まれたばかりの若手刑事が東奔西走していきます。
ここがポイント
真実とはいったい何なのか、真実を突き止めても結局、社会の大きな権力に押しつぶされていくのでしょうか。
自分以外に守るべきものがあるということも考えさせられる、作品です。
16、『不信の鎖 警視庁犯罪被害者支援課6』堂場 瞬一
警視庁犯罪被害者支援課シリーズであり、ブラック企業の社長の娘が殺害され、被害者家族としての社長を犯罪被害者支援課が関わっていく話です。
別件で逮捕された男が、2年前のその事件の犯行を自供したため、操作が急展開される中、新たな事実が明らかにされていきます。
怒りを爆発させる被害者の父である大崎と支援課の村野は再度向き合うのです。
ここがポイント
被害者支援のあり方がテーマとなっていて、被害者が悪人であったとしても、守るべきなのか、支援すべきなのか、その判断は何処にあるのか等いろいろと考えさせられます。
中断できない面白さがある、作品です。
17、『生者と死者-酩探偵ヨギガンジーの透視術』泡坂 妻夫
先ず、書籍自体が袋とじになっていて大変面白い仕様なのです。
短編小説かと思いきやタイトルの長編小説が現れてきます。
ここがポイント
テレビ番組の「アメトーーク」でも紹介されて大変人気のある珍しい本(小説)です。
試みは斬新極まりないですが、評判としてはやはり、仕掛けに驚いた読者が多いです。
推理作家の大家であり、遊び心を自分の作品で表現したことに乾杯です。
18、『破滅の王』上田 早夕里
太平洋戦争真っただ中の中国で、治療法皆無の殺人細菌兵器開発の依頼を受ける男を取り巻く話です。
最初は緩やかなストーリー展開で進んでいくのですが、中盤になるにつれ、一気に加速していきます。
登場人物も事細かに描かれていて、臨場感がタップリと味わうことができます。
ここがポイント
信念を貫き通すことがこんなにも難解であることがよくわかる作品です。
19、『僕が殺した人と僕を殺した人』東山 彰良
連続殺人鬼「サックマン」の謎に迫る、4人の少年たちの青春の話です。
1980年代半ばの台湾と2015年のアメリカの出来事が時代を超えて、交わりながらストーリーは展開していきます。
ここがポイント
殺人鬼は誰なのか、とてもやるせない結果と変えることのできない過去に彼らは、どういう風に決着をつけていくのでしょうか。
期待を裏切ることのない作品です。
20、『仇敵』池井戸 潤
元銀行マンの池井戸氏が描く、様々な出来事に視点をあてた痛快復讐劇の連作短編集です。
上司の不正を暴こうとして、逆に退職に追い込まれる主人公が渾身の力で、立ち上がっていく様子は頼もしい限りです。
閑職に追い込まれても、彼の闘志の炎は消えてはいなくて再度、立ち上がったのです。
ここがポイント
サラリーマンが、実際にはできないことを代行してやって貰っている、と感じてしまうスカットする作品です。
21、『ノーサイドゲーム』池井戸 潤
大手自動車メーカーの本社、経営戦略室から左遷された男、君嶋が、ラグビー部を立て直す話です。
君嶋は赤字を垂れ流す自社のラグビーチーム、企業の不採算部門として、切り捨てられる瀬戸際のチームの再建に取り組んでいくのです。
営利追求だけでなく、企業経営、社会的貢献、コンプライアンス、そして旧態組織への挑戦といった方面まで、話は広がっていきます。
ここがポイント
企業内スポーツの難しい立ち位置、本社内での卑劣な策略などに怯まず、突き進む君嶋の姿が爽やかに描かれています。
明日への活力を貰える作品です。
22、『スリジエセンター1991』海堂 尊
現役の医師である海堂氏が描く、天才外科医の野望の話で、シリーズ3部作です。
テレビドラマでも放送された「ブラックペアン1988」そして、「ブレイズメス1990」に次ぐ最終章です。
ここがポイント
私の手術が受けたければ、全財産の半分を差し出すことが条件だと主張する天才外科医ですが、それは国の医療行政への痛烈な批判を込めた思惑だったのです。
このシリーズのファンにとっては堪らない作品ではないでしょうか。
23、『陽気なギャングは三つ数えろ』伊坂 幸太郎
陽気なギャングである、天才強盗4人組がついに強敵によりピンチにさらされることになる話です。
善意で救った相手が実はひどい食わせ者だったのです。
このシリーズの3作目でありながら、笑いの要素も忘れることなく、織り込まれていて、相変わらずのテンポの良さでストーリーは展開していきます。
ここがポイント
予想できないラストに衝撃が走ります。
24、『クジラアタマの王様』伊坂 幸太郎
夢の中で戦いに勝利すると、現実でも成功し、負けると不幸な目に合う、そんな夢を見る3人の男たちの話です。
新型インフルエンザの話があまりにもタイムリーであり、コロナウィルス収束もこんなふうになればいいのにと思ってしまいます。
ここがポイント
夢の中の戦いはファンタジーですが、意外と現実離れした感じはなく、皆何かと戦いながら、生きているのだと改めて思ってしまいます。
カオスな展開ですが、難なく世界観に入り込める作品です。
25、『未来』湊 かなえ
イヤミスの女王が描く、デビュー10周年の書き下ろしであり、20年後の未来から届いた1通の手紙から話は始まります。
そしてその届いた手紙に返事を書き続ける主人公に起こる群像劇が基となり、ストーリーは展開していきます。
ここがポイント
終盤に明らかになる謎に、驚愕してしまい、湊氏の最高傑作と呼ばれる「告白」に匹敵する面白さが味わえます。
いつものようにイヤミスの読後感を感じてしまう作品です。
26、『落日』湊 かなえ
実際に起きた15年前の殺人事件の映画化を考える監督と脚本家が、事件の詳細を調べていくうちに、背景の隠された真実にたどり着いていく話です。
ここがポイント
辛い過去を引きずりながら生きる2人の追憶と、関係者からの新たな情報収集が、単なる事件を身近な出来事へと変貌させていくのです。
殺害された家族と縁があった映画監督の香に、同じ町内で姉が同級生であった脚本家の真尋。
過去の香と現在の真尋のエピソードが交互に語られ、物語が交わり、それぞれが思い違いをしていることが分ってきます。
そして様々な事が解明されて、バラバラであったピースが全て揃い、落日の先に真実が見えてくるのです。
いみじくも希望を感じる終わり方に救われる作品です。
27、『カケラ』湊 かなえ
田舎町に住む女子高生が、大量のドーナツに囲まれて亡くなった話です。
その子はモデルみたいな美少女だと言われる一方で、学校一のデブだという噂もあったのです。
そしてその少女が死に至るまでの過程を、美容外科医が関わった人たちに、インタビュー形式で質問し、段々とその真実が明らかになっていくのです。
ここがポイント
自分の考えのみで、相手のことも考えず、自分自身に都合の良い解釈をして、自分勝手に納得しようとしている人ばかりなのです。
誰が悪いのか、誰のせいでもないのか、誰に共感できるのか分からなくなるイヤミス作品です。
28、『凍りのくじら』辻村 深月
カメラマンであった父親が失踪してから5年の月日が流れ、主人公である少し性格の悪い、女子高生の理帆子は母と二人暮らし、そんな女子高生にまつわる話です。
理帆子は今まで他人を見下してばかりいたので、いつか、しっぺ返しにあうみじめな自分を想像してしまいます。
これではいけないと感じ真剣に人と向き合うことに気付いていくのです。
ここがポイント
ドラえもんの道具をモチーフにしたストーリーは展開は、斬新なアイデアでとても面白く楽しめます。
張り巡らされた、伏線はきちんと最後には回収されていて、さすがの一言に尽きる作品です。
29、『未必のマクベス』早瀬 耕
IT企業に勤める男の周りで起こる様々な事象に視点をあてた、犯罪小説に名を借りた恋愛小説です。
エキサイティングなストーリー展開であり、マクベスに例えてあるのも、早瀬氏の鋭い感覚だと思います。
長編にもかかわらず、最初から最後までハードボイルドチック感が伝わってきます。
ここがポイント
ヒヤヒヤ・ドキドキ感が好みの読者は見逃せない作品だと思います。
※マクベス:シェイクスピアによって書かれた戯曲。
30、『リアルフェイス』知念 実希人
金さえ出せば、顔を変幻自在に変えてくれる天才美容外科医が登場する医療サスペンス作品です。
登場するキャラクターも大変魅力的で、その描写の筆致は素晴らしいです。
ここがポイント
絶対に騙されないぞと思っていても、結局騙されてしまうのです。
終盤に差し掛かる前のドキドキ感は半端なく面白いです。
騙されるのが好きな人も、そうでない人も是非読んでみてください。
31、『無限のi』上・下 知念 実希人
精神科医師の識名愛衣が、眠りから醒めない正体不明の病気、イレスに立ち向かう話です。
祖母のユタの力を受け継いでいた愛衣は、患者を目覚めさせる為に、患者の夢(夢幻)の世界に入り込み魂を救おうとしていきます。
ここがポイント
前半のファンタジックな展開と違って、後半は一気に謎が謎を呼ぶようなサスペンスチックな展開になっていきます。
23年前の真実、連続殺人、特別病棟のイレス患者全てが一つにつながっていき、夢幻の世界と現実世界のバランスが絶妙です。
魂が揺さぶられる作品に間違いありません。
32、『ため息に溺れる』石川 智健
個人病院の婿養子の「ため息に溺れてしまいました、云々」という奇妙な遺書を残した遺体が発見される話です。
警察は筆跡も本人のものと断定して、自殺として扱ってしまいます。
それを不審に思った女刑事が再捜査をしていきます。
誰からも愛された婿養子に一体何があり、彼を追い込んだのか、いや殺人であったとしても殺される理由が分からない。
ここがポイント
意外性を押し出して描かれていて、イヤミスっぽさが残る作品でした。
33、『ミステリークロック』貴志祐介
4篇が納められた短編集であり、難解なトリックあり、新しいトリックありとバラエティに富んだ作品です。
ここがポイント
一つの作品に謎解きがいっぱい詰まっていて、その道のプロでなければ解明できないように仕掛けがいっぱい隠されています。
貴志氏の作品の中では意外性に富んだ作品で、読んだ方がトリックの難解性に四苦八苦しているようです。
謎解きに自信のある読者の方、挑戦してみてはいかがでしょうか。
34、『罪人の選択』貴志 祐介
繊細で独特の世界観があり、想像したこともない感覚に陥ってしまう4編からなる短編集です。
ここがポイント
収録の4作中、3編がSFで、長編にしても通用するほどの凝った設定が、物語を圧迫している印象を強く受けてしまいます。
表題作は1946年と1964年の二つの時間軸で、一方に猛毒が入った一升瓶の焼酎とラベルのない缶詰のどちらかを罪人に選択させるしっかりとしたミステリーになっています。
他のSFの3編の中でも、未知の病に挑むスラム出身の研究員を描く終末世界ものの「赤い雨」は今の時期にピッタリ過ぎています。
特異な設定をうまく生かした作品です。
35、『屍人荘の殺人』今村昌弘
謎の研究機関の暴走によって、山荘に閉じ込められた大学生探偵たちが遭遇する殺人事件を描いた話です。
クローズドサークルもののミステリーであり、いきなり探偵役の主人公であろうと思われる人物が死んで?しまうのです。
探偵不在のまま、この先どうなるのかと思っていると、きちんと繋がる次の展開にもっていってくれます。
ここがポイント
クローズドサークルものにありがちな、次々に殺人が行われていくと思いきや、この話はその常識を覆してくる、次の一手が用意されていたのです。
今までのミステリーにはない、新しい手法による斬新さが味わえるのです。
最後までハラハラドキドキ感が続く作品です。
36、『魔眼の匣の殺人』今村 昌弘
「屍人荘の殺人」の続編であり、神がかった的中率の予知能力を持つ老女が住む山奥の寒村を訪れた複数の男女が、人里離れた閉鎖的な場所で不思議な殺人事件に巻きこまれる話です。
前作と異なるかたちのクローズドサークルものであり、予言に縛られた人々がそれぞれの思惑と想定外の出来事の連続の中で、罪を犯していきます。
前作よりもミステリー色が濃く、登場人物の配置にも配慮されていて、無駄が少なくなっています。
ここがポイント
予知能力とミステリーの組み合わせ、要するに非論理と論理な組み合わせが斬新であり、楽しめます。
精緻に練られ考え抜かれた、謎解きの面白さに圧倒されてしまう作品です。
37、『ノースライト』横山 秀夫
設計した家から、一家全員が消えた謎を、設計者で主人公の一級建築士が探っていく話です。
「あなた自身が住みたい家を建ててください」と言われて、設計した家だったのですが、実際そこには誰も住んでいなくて、依頼主とも連絡がつかず、たくさんの謎に引き込まれてしまいます。
始まりはミステリーなのですが、悪人も捜査する刑事も出てこなくて、建築の話とブルーノ・タウトの説明の話が多く出てきます。
ここがポイント
ノースライトのように淡く柔らかな光に照らされるかのように、少しずつ真実が明らかになっていきます。
人間ドラマに重きを置いた味わい深い作品です。
38、『いけない』道尾 秀介
4つの章に分かれている連作短編で、章末に写真があり、それが事件を解くカギになるという新しい形の話です。
同じ町で起きる殺人ミステリーであり、読み手が自然と推理する作り(要するに体験型ミステリー)になっていて、それでも想像の斜め上をいく真実が最後に写真で待ち構えているのです。
章ごとに違う話かと思いきや、繋がっていて、思い違いをしていたことに気付かされてしまいます。
ここがポイント
ミスリードそのものであり、まんまと道尾氏の策略にハマってしまうのです。
新しい趣向が駆使されていて、かなり楽しめる作品です。
39、『我らが少女A』高村 薫
合田雄一郎刑事シリーズであり、12年前の未解決事件と池袋で同棲相手に殺された上田朱美の事件が、ルポルタージュのような文体で進んでいく話です。
12年前の未解決事件の関係者の死について、新たな証言が飛び出し、その当時、事件の責任者であった合田も12年前に舞い戻っていくのです。
現在と過去が行ったり来たりしながら、当時の関係者たちが、自分たちの内面と向き合っていき、それぞれの人生を生きている姿が掘り下げられていきます。
ここがポイント
精密機械の歯車のような正確無比に、人間を描写する高村氏の筆力の冴えを見せつけられる作品です。
40、『カインは言わなかった』芦沢 央
有名監督が率いるダンスカンパニーの公園直前に、主役に抜擢されたダンサーの失踪を巡る話です。
ここがポイント
緊迫感に溢れ、最初に描かれる殺人事件らしきものと、監督の厳しい指導にいつしか狂気をまとうダンサーの突然の失踪に心を奪われてしまいます。
そしてそこからずっと、不穏な空気に包まれ、翻弄されていくのです。
役者に妥協を許さず、追い込む監督の行動は本当に指導なのか、パワハラなのかを疑ってしまいます。
代役が果たして本当の役割を知った時、芸術家は舞台を成功させるために、本当にここまでするのかと驚いてしまいます。
知らなかった世界が垣間見える作品です。
41、『極上の罠をあなたに』深木 章子
ここがポイント
悪人が謎の便利屋を使って犯罪計画を実行する4編からなる連作短編集です。
法に触れない範囲ギリギリで、何でもやる便利屋が悪人をそそのかして、手を組み犯行計画の一部に加担していきます。
しかし便利屋は直接手を下さず、依頼が完遂すれば、さっさと姿を消していく、傍観者的な立場なのです。
便利屋は常に冷静沈着で、依頼者に会った時の会話しか出てこないのです。
色々な想像ができて、面白く読める作品です。
42、『天上の葦』上・下 太田 愛
ここがポイント
戦前の言論弾圧に端を発している話であり、その時代の人間模様と現在の状況を巧妙に描いています。
上巻では、老人の不可思議な死、消えた公安警察官、読めない展開から、少しずつ権力の裏側が見え隠れしてきます。
下巻に入ると、戦時中の虚偽報道や公安そして現在のマスコミの在り方などいろいろと考えさせられることが多くなってきます。
公安との戦いは映像的に過ぎる感もありますが、情報統制や戦争そのものに対する太田氏の思いは確実に伝わってきます。
自分の姿勢を正さなくてはと思ってしまう作品です。
まとめ
2021年おすすめの人気のミステリー・推理小説を42選ご紹介させていただきました。
それぞれの作家の作風が理解できて、読むのも楽しくなってしまいます。
まだ、読んでいない作品等ありましたら、是非この機会に読んでみてください。
そして新しい作品の扉を叩いてみてください。
きっと、ミステリーの楽しみが広がると思いますよ。