いま最も勢いのある若手作家の一人である、今村翔吾氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
1984年京都生まれで、現在は滋賀県在住であり、ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化調査員を経て、専業作家になります。
2016年に今川氏真の生き様を鮮烈に描いた「蹴れ、彦五郎」という短編作品で、第19回の伊豆文学賞の小説、随筆、紀行文部門最優秀賞を受賞します。
今村翔吾おすすめ作品8選をご紹介~熱いものを求める読者に捧ぐ~
歴史小説は油断すると、事跡をただなぞってしまうだけになってしまいがちであり、その時代を生きた人間の息づかいいまで書こうとするのなら、「なぜ生きるのか」というテーマは避けて通れないそうです。
また今村氏は、死を覚悟した時に残った思いが、その人の真実の思いであり、人間の生が凝縮する一点を書くことができるのが、歴史小説だと思っているとのことだそうです。
そんな今村翔吾氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。
1、『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』
羽州ぼろ鳶組シリーズの第一弾であり、火消組織の再建を依頼された主人公の松永源吾が、人手不足と少ない予算の中で、仲間を集め、連続放火犯と戦う熱い話です。
かって「火喰鳥」と呼ばれた江戸随一の武家火消である松永源吾は、とある火事が原因で、火消をやめていたのです。
そんな源吾の元へ壊滅した藩の火消組織を再建してほしいという依頼が来るのです。
ここがポイント
そして金もない状態から、曲者仲間を集め、ぼろ鳶と揶揄されながらも、江戸の街を、人の命を命がけで守っていく火消を結成する姿に胸が熱くなってしまいます。
熱い思いを抱えて集い、一丸となって江戸を襲う火事に立ち向かう人間ドラマ作品です。
2、『夜哭鳥 羽州ぼろ鳶組』
羽州ぼろ鳶組シリーズの第二弾であり、卑劣な手口極まりない一橋のますますの暗躍により、江戸火消が機能不全に陥るという大ピンチが訪れる話です。
江戸火消の規則を逆手に取り、更には火消の家族までを拐かすことで、消火活動を妨害する事件が頻発します。
そしてついに、八咫烏の異名を持つ、江戸一番の火消の加賀鳶を率いる大音勘九郎へも魔の手が伸びるのです。
ここがポイント
ぼろ鳶、加賀鳶は勿論のこと、矜持を取り戻した火消たちや男気ある船頭たち、急成長の新之助と読み応えたっぷりです。
男前がそろい踏みの、作品です。
3、『九紋龍 羽州ぼろ鳶組』
羽州ぼろ鳶組シリーズの第三弾であり、火事をおこした上に、押し入った家の一家を皆殺しにして、金品を奪う残虐非道な火事場泥棒の一味が出現する話です。
一方で国元の新庄班の財政は、困難を極め、火事場だけでなく、頭の痛い問題だらけのぼろ鳶組だったのです。
江戸火消最強で無敵の「に組」の辰一と共に奇想天外な逆転の発想で、火事場泥棒一味を出し抜き、江戸の町人を守るために奔走するのです。
ここがポイント
ストーリーの面白さも然ることながら、登場人物が皆、痛快なので、心が躍ってしまいます。
まさしく、火事と喧嘩は江戸の華を痛感させられる作品です。
4、『くらまし屋稼業』
くらまし屋稼業シリーズの第一弾であり、訳ありで、姿を晦ましたい人を手助けする「くらまし屋」の話です。
いかなる事情があっても、銭さえ払えば、まるで神隠しのように逃してくれる「くらまし屋」がいるのです。
メンバーも剣術に長けた平九郎を中心に、智謀の七瀬、変装の名人の赤池と粒ぞろいで、大胆で鮮やかに依頼を遂行してくれるのです。
ここがポイント
ミステリー的な要素や冒険活動的なワクワク感もあり、刀を交える場面の緊迫感や、まるで映画を観ているかのような高揚感も味わえます。
いわくありげな謎の組織も登場し、これからの展開が楽しみな作品です。
5、『童の神』
平安時代の酒吞童子の伝承をモチーフに、自由と平等を求め、時の朝廷権力に抗う「童」と呼ばれる異端の民を描いた話です。
童を束ねる主人公の桜暁丸に対するのは、源頼光と頼光四天王と呼ばれる伝説の猛者たちなのです。
英雄豪傑入り乱れて展開する、波乱万丈の一大スペクタクルに胸躍る一方で、そこには善も悪も存在しないことに気付きます。
本作を貫く本流は、人と人とが手を携えて、平穏に生きていく世を希求し続ける者たちの生命の迸りなのです。
ここがポイント
人を信じぬくことを諦めない魂の叫びが、伝わってくる作品です。
6、『てらこや青義堂 師匠、走る』
江戸時代の後期、元公儀隠密で寺小屋を営む十蔵と個性豊かな筆子たちが、将軍暗殺を企てる忍びの一団の宵闇を相手に活躍する話です。
公儀隠密であった十蔵が足を洗い、寺子屋の先生になったのですが、子供たちや隠密のしがらみにより、図らずも事件に巻き込まれてしまいます。
ここがポイント
忍者の価値観や忍術と道具を駆使して戦うシーンは、躍動感に溢れていて、自然と力が入ってしまいます。
そして天真爛漫な子供たちや、十蔵の苦悩と優しさに、複雑な思いを抱いてしまいます。
終盤の怒涛の展開は、息もつけない程に、夢中になってしまいます。
7、『八本目の槍』
賤ケ岳の七本槍と呼ばれた武将たちの目を通して、八本目の槍である石田光成を描いた連作短編集です。
共に秀吉の快進撃を支え、夢を語り合った仲間が、時の流れと共に立場を変え、己の生き方を曲げられていきます。
ここがポイント
しかし、その中で、百年先、千年先の国の姿を見据え、仲間を信じて突き進む物語は胸が熱くなります。
後世に残された記録は勝者の者が多い中、この物語の三成はそれとは異なり、類まれな知力と優しさに溢れていて、共感してしまいます。
時代小説に、現代性とミステリーと感動を織り込んでいる作品です。
8、『じんかん』
戦国武将である松永久秀の生涯を、織田信長が小姓に語り聞かせるという形で進められていく話です。
一般的に悪人と評される松永久秀であり、2度目の信長への裏切りを伝える中で、信長の口から語られる「九兵衛」の姿に、傑物の両者に共通する大きな夢を感じてしまいます。
史実では生い立ちがわからない分、物語の中で描かれると、松永久秀の本来の姿が鮮明になってくるように思います。
ここがポイント
久秀の描いたものは、野望というよりも世を変える大望だったのかもしれません。
豊かな想像を懐いて綴られる物語は、胸が熱くなってしまいます。
まとめ
今村翔吾氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
歴史の面白さが堪能できますよ。