元お笑い芸人の肩書を持つ、藤崎翔氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
高校卒業後に、お笑い芸人を目指して上京し、2010年まで、三島裕一氏とお笑いコンビ「セーフティ番頭」というコンビで、6年間、お笑い芸人として活動していました。
コントの台本を100本以上書き上げたり、NHKの「爆笑オンエアバトル」5回挑戦し、結果1度オンエアされています。
コンビを解消した後は、ホームヘルパーの資格を取得したり、清掃業などのアルバイトをしながら、小説を執筆していきます。
藤崎翔おすすめ作品8選をご紹介~予想不可能な展開で魅了~
様々な文学賞に応募する中、2014年、初めて書いた長編ミステリー「神さまのもう一つの顔」という作品が、第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、作家デビューを果します。
賞を貰ってから、自分はミステリー向きなのではと感じた藤崎氏は、短編中心だったのですが、徐々に分量を増やしていきます。
執筆時間は早朝の清掃バイトを終えてからであり、家賃4万5千円のアパートに籠って、夜の9時頃まで書き続けるそうです。
夏場は冷房代がもったいないので、浴槽に浅く水を張り、素っ裸でそこに体育座りをして、チラシの裏に書くというのが執筆の定番のスタイルだそうです。
そんな藤崎翔氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。
1、『神様の裏の顔』
神様のように尊敬されていた元教師の坪井誠造が亡くなり、その通夜の席に集まった人々の回想から、思いもよらぬ神様のような人格者の裏の顔が、あぶり出される話です。
神様と思われる位、いい人であった坪井も、ただの人間だったというのは、タイトルからも読み取れますが、一面真っ黒であったオセロが、ひっくり返るように事態は一変してしまうのです。
ここがポイント
しかし、話はそれで終わらず、ラストにはまた裏の顔が、、、、、。
読みやすく、それでいて後半は予想もつかない展開、ギャグもあり、とにかく面白く楽しめます。
また、通夜に集まった人たちにも裏の顔があり、それぞれの心の内が、丁寧に描かれているので、分かり易くなっています。
ミステリーとギャグが見事に融合した、異色の作品です。
2、『殺意の対談』
本作は、対談+心の声という構成で、7つの話が独立しているわけではなく、緩く繋がっている連作短編集です。
読者がもうひとつの繋がりに気付いたあたりから、各話の緊密な繋がりが、見え始めてきて、最後はドタバタと話がひっくり返りながら、予想不可能なラストへと、展開していくのです。
とにかく登場人物の誰もが、小悪党だったり、歪みきっていたりと、ろくな奴はいないのですが、この作者独特の妙な愛嬌により、彼らの悲惨な末路には、それなりの無常観を感じてしまいます。
ここがポイント
終盤には、敵の裏の裏をかくような仕掛けが待ち受けており、サスペンスミステリとして退屈させない構成になっている作品です。
3、『お隣さんが殺し屋さん』
専門学校へ通う為、田舎から上京し、アパートで一人暮らしをすることになった天然娘の美菜と、長身で強面のお隣さんである雄也の話です。
タイトルどおり、殺人もたくさん描かれるものの、コミカルなセリフやコントのような状況が散りばめられているので、全く暗さが感じられません。
殺し屋の数々のミッションが、気持ちのいいミスリードで、繰り広げられていて、それらとは対照的な、美菜と友達たちの能天気な掛け合いも面白く、小説なんですが、コミックを読んでいるような感覚に陥ってしまいます。
ここがポイント
こういう、のほほんとした世界観を満喫していただけに、ラスト50ページで次々に明らかになる、驚愕の事実と、伏線回収が気持ちいい作品です。
4、『指名手配作家』
口論の末に担当編集者を殺してしまった小説家が、逃亡中に出会った女性のゴーストライターになり、小説家としての人生の起死回生を狙う話です。
ここがポイント
彼女の家に匿われることとなった小説家は、潜伏先での新しい生活など、これだけなら、目新しさは少ないのですが、共に暮らすことになった、これまたワケありの女性との奇妙な関係や、彼女がその中で口にする、その場しのぎの数々の嘘や奇策が、ことごとく好転につながる様子が面白いのです。
随所に訪れるピンチを嘘で切り抜けながらも、着々と裕福な家庭を築いていくあたりは、何とも奇妙な展開で、共感できるようなできないような気分になります。
序盤のサバイバルパートや、この作品そのものが物語のオチになっている構成の妙は、藤崎氏らしさを感じますが、やはり主人公が小説家ということで、リアルな藤崎氏の呟きと思ってしまう場面もあったように思える作品です。
5、『逆転美人』
美人であるが故に、不幸な人生を歩んできた香織の半生を綴った「逆転美人」という手記を巡る話です。
美人に生まれたことが、全ての不幸に繋がったという香織の手記で物語は、幕を開けます。
いくら嫉妬や、いじめの対象になり易いからと言っても、美人というだけでそこまで不幸になるのかと、突っ込みたくなります。
余りにも美人不幸自慢のように感じ、読む気も失せつつあったのですが、後半でまさかのどんでん返しにあってしまいます。
それに隅々まで仕掛けられたトリックに唖然としてしまい、しかもその直後、追記でもやもやした違和感が一気に解決していくのです。
ここがポイント
紙の本でしか、出来ないトリック、見事な作品です。
6、『読心刑事・神尾瑠美』
他人の心を読むこと(テレパス)によって、次々に難事件を解決していく女性刑事、神尾瑠美が主人公の5編からなる連作短編集です。
R県警捜査一課の検挙率の高さと、残業時間の短さには、秘密があったのです。
ここがポイント
それは、テレパスの女性刑事、神尾瑠美の存在であり、先に犯人を特定し、そこから犯人の心を読んで、証拠探しに至るという逆捜査なのです。
同僚たちの性格、性癖などの設定も面白可笑しく、読みやすく楽しめます。
犯人の心情がユーモラスに描かれているので、殺人事件なのに、何故か笑いを誘う軽めの警察小説です。
7、『逆転泥棒』
空き巣で前科二犯の善人(ヨシト)が、出所して、空き巣に入った先は、初恋の相手、マリアが住む家だった話です。
後日、偶然を装って再会したマリアに、なんと「夫を殺してくれない?」と持ち掛けられてしまうのです。
しかもマリアの夫は、善人と幼馴染の武史だったのです。
ここがポイント
完全に叙述トリックで勝負する正統派ミステリであり、それが明らかになった時は、「えっ、何で」という混乱に陥ってしまいます。
思わず前のページに戻って、もう一度流れを確認せずには、いられなくなってしまいます。
懐かしくも切ない平成の青春が交錯する作品です。
8、『モノマネ芸人、死体を埋める』
往年のプロ野球選手、竹下竜司のモノマネだけで、生計を立てているマネ下竜司こと関野浩樹だったのですが、その頼りの元プロ野球選手の竹下が、殺人を犯してしまい、死体遺棄の手伝いをする羽目になってしまう話です。
モノマネ芸人とご本人という設定が、面白く、協力せざるを得ない関係として、説得力があり、マネ下のふり回っされぷりも無理がなく、楽しめます。
また、マネ下視点は勿論のこと、間にちょくちょく入る竹下視点も面白く、どうしようもない男なのですが、憎みきれないのです。
ここがポイント
藤崎氏らしく、ラスとはいろんな人物の本性が出まくりで、その後の彼等の後日談的なエピソードも、意外性や苦笑いありつつで、楽しめます。
喜劇的な要素が含まれた、ミステリとは少し異なるテイストが味わえる作品です。
まとめ
藤崎翔氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
予想不可能な展開に魅了されたと思います。
まだ読んでいない作品がありましたら、この機会に是非、読んでみてください。
読書の楽しみが広がりますよ。