丁寧な心理描写が評判の佐々木丸美氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
大学中退後、1975年、在学中に執筆した「雪の断章」という作品が、二千万円テレビ懸賞小説の佳作に入選し、作家デビューを果たします。
同作品は一躍ベストセラーになり、1985年に斉藤由貴主演で、「雪の断章ー情熱ー」と言うタイトルで映画化されています。
佐々木丸美おすすめの作品8選をご紹介~叙情的で繊細な文体~
叙情的で繊細な独特の文体で綴られる作品は、ミステリー・恋愛・心理学・美術・超常現象・哲学等、様々な要素を含み、どのジャンルにも分類し難い、佐々木丸美氏独特の世界を築いています。
また、作品それぞれが、どこかで繋がっているのも特徴の一つであり、明らかになる人物の関係や心理など、事件は次第に壮大な物語を構築していくのです。
更なる活躍が期待される中、2005年12月25日、急性心不全の為、享年56歳で、その生涯を閉じてしまいます。
そんな佐々木丸美氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
『雪の断章』
孤児四部作の第一弾であり、孤独で過酷な境遇を背負った少女と、偶然出逢った青年の織りなす切ない話です。
孤児である少女、飛鳥が引き取り先の家での酷いいじめに耐え切れず、逃げ出し、その際、以前に助けてもらった青年、裕也にまたしても助けてもらい、一緒に暮らすようになります。
孤独だった心を温めてくれる、祐也や彼の友だち、知人そして初めてできた親友に幸福を感じつつも、飛鳥は他の人々の間に線をひき、本心を閉じ込めていたのです。
ここがポイント
尊敬と憧れの対象であった祐也への恋心も然り、陳腐になりがちな設定なのに、北国の雪景色を背景に、とても美しい文章で丁寧な心理描写が施されています。
ミステリー要素も味わえる、ヒューマンドラマ作品です。
『忘れな草』
孤児四部作の第二弾であり、二人の孤児の少女が、ある会社の相続争いに巻き込まれる話です。
前作「雪の断章」の姉妹編であり、泣き虫の葵と美しい弥生、正反対に育てられた二人の少女の恋と友情、そして彼女達を取り巻く大人たちの陰謀が描かれています。
一人の男を愛してしまった、二人の少女の愛憎相半ばする友情が、物語の主旋律をなし、そこが格別な読み応えに繋がります。
ここがポイント
常に一人の男性を挟んで対峙しなけばならない二人の少女の宿命と、そこに描かれた友情の過酷で熾烈な美しさは忘れることができません。
不思議な魅力のある作品です。
『花嫁人形』
孤児四部作の第三弾であり、家族であるはずなのに、一人だけ愛情も学問を受ける機会も奪われてきた昭菜の話です。
4姉妹の中で、異質の昭菜、家族の中で無視されながらも、成長する姿に胸を打たれてしまいます。
そして、孤児という境遇と許されぬ恋に苦しむ昭菜は、ある事件をきっかけにして、新たな秘密と罪を背負うことになってしまうのです。
ここがポイント
鳥肌が立ってしまうくらいに、文章の美しさに感極まってしまいます。
思いを遂げられぬ恋、複雑で混沌とした人間関係をここまで緻密に描き切る、佐々木氏の筆力には圧倒されます。
リズム感が溢れる、素敵な作品です。
『風花の里』
孤児四部作の第四弾であり、幼き日に出合った青年に憧れる少女の話です。
莫大な遺産と、シリーズを通して出てくる大会社の権利を巡っての争いに巻き込まれていく、少女の姿が、恋愛を絡めながら語られていきます。
ここがポイント
全ての謎が分かったとは言えませんが、一つの流れを別の視点から、終わりを眺める感じで捉えていけます。
こうして、違った視点から今までの王子様やライバルを見ると、非常に不憫で自意識過剰で、今までの主人公たちから見た彼らとは全然違う印象を受けてしまうのです。
音の余韻を吸い取るかのような雰囲気のある作品です。
『崖の館』
館シリーズ三部作の第一弾であり、莫大な遺産を持つ、おばが住む、崖の上の館に訪れた高校生の涼子と、いとこたちの話です。
2年前に亡くなった、おばの娘、千波の死の謎解きが、雪に閉ざされた館で始まるのです。
しかし、到着当日から、館の絵画消失をはじめとする、不可解な事件が起こりはじめるのです。
次第に身の危険を感じ始めてきた涼子たちは、皆人知れず、2年前に館の裏の崖から身を投げた千波というおばの娘のことを思い出していたのです。
ここがポイント
クローズドサークルの王道を行きつつも、閉じた世界だけに止まらない、ストーリー展開が楽しめる作品です。
『水に描かれた館』
館シリーズ三部作の第二弾であり、前作「崖の館」の続編であり、財産目録作成の為に鑑定家が4人派遣されてくるはずだったのが、何故か1人多い5人になってしまったのです。
そして奇妙なことに、その夜、聖書を抱えた少女が館に保護され、不思議な現象と殺人が起きてしまうのです。
今回も独特の世界観で、輪廻転生や宗教、心理学、美術論、超自然等の話が繰り広げられていきます。
一応、ミステリーという形の決着は見せているので、仕掛けられたトリックなどはかなり楽しめます。
ここがポイント
常識を揺さぶられる感覚になる作品です。
『夢館』
館シリーズ三部作の第三弾であり、輪廻転生を繰り返す、千波と吹原の話です。
ここがポイント
孤児四部作と交差していて、これまで描かれてきた物語が、千波と吹原を正面に据えていて、これでもかという位にリンクしています。
迷子になった4歳の千波が、吹原に出合い、養われていくシーンはまるで孤児四部作の続編の様であり、語られる人物は懐かしい人ばかりです。
そして成長するまでの困難はお約束の試練であり、16歳になった千波が崖の館へ行き、前世の記憶を取り戻し、全てが報われるのです。
神秘的であり、魅力に溢れた作品です。
『罪灯』
未必の故意の犯罪を扱った、4編からなる連作短編集です。
春夏秋冬それぞれの名前を持つ、4人の少女が、偶然起こった事故に対して、少しの殺意や悪意を持って、人が死ぬ方へ、あるいは、容疑者の立場が悪くなる方へと導いていきます。
直接、手を下したわけではないので、実際に裁かれることはないのですが、心理的な側面から罪が暴かれて、現実を知り少女たちは大人へと変わっていくのです。
ここがポイント
登場人物は佐々木氏のいつものパターンですが、心理描写が丁寧で読み応えのある作品です。
まとめ
佐々木丸美氏の作品はお楽しみいただけましたでしょうか。
新作はもう読むことはできませんが、素晴らしい作品の数々を残してくれました。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。