独自の世界観が味わえる、恒川光太郎氏のおすすめの10作品をご紹介させていただきます。
恒川氏の作風としては独特の幻想的、民話的な世界観の中で豊かなイマジネーションを広げていくことだそうです。
また映画も大好きなようですが小説はオリジナルの世界観の香りや雰囲気で読ませる部分もあるので、原作を読んでから映画は見るそうです。
この記事の目次
恒川光太郎おすすめ10作品をご紹介~幻想的で精妙な描写~
29歳の頃遊びに行った沖縄が気に入ってしまい、移住し、塾の講師をしながら執筆した「夜市」で第12回日本ホラー小説大賞を受賞して書き下ろしの「風の古道」を併録した「夜市」で小説家デビューを果たします。
現在に至っても日常世界とすこしその先にある「異界」との不思議な関わりを描いた作品を数多く発表しています。
そんな恒川光太郎氏のおすすめの10作品を刊行順にご紹介させていただきます。
『夜市』
異世界を題材にした中編2作。「夜市」は昔、野球の才能と引き換えに弟を人さらいに売り渡し、10数年後に買い戻そうとする話。
もう一方の「風の古道」は6歳の頃彷徨った古道を6年後にもう一度友達と一緒に行く話。
どちらの話も表現が美しく描かれていて本当に夜市や風の古道が存在するような感覚におちいってしまいます。
おすすめポイント
確かにゾッとする話ですが幻想的な気分の方が勝ります。切なく綺麗な余韻に浸れます。
『雷の季節の終わりに』
地図にもない不思議な場所「穏」の世界。平和な世界なのだが不思議なことも多く、雷の季節には姿を消す住人達。
おすすめポイント
お伽噺のような世界観に圧倒されながら穏の世界がまさにあの世とこの世の狭間という感じでとても魅力的に描かれている。
人に憑りつく風わいわいや人を攫う鬼など目を覆いたくなる残虐シーンに慄きながらも話に引きづりこまれてしまう。
またしても、不思議な世界に連れていかれる心地です。
『秋の牢獄』
時間や異世界、空間の牢獄に閉じ込められる3編からなる話。
今日という日から抜け出せない恐怖、そして虚無に変貌「秋の牢獄」。
迷い込んだ異世界からどうしても抜け出せない不安、そして不安はやがて依存へと変貌「神家没落」。
幽閉された少女リオの心に膨らむ魔法の能力「幻は夜に成長する」。
おすすめポイント
忘れかけていた当たり前のことが再認識できます。
『草祭』
美奥という場所を舞台に広がる妖しい世界を舞台にした連作短編5編。
様々な人間や異形のモノたちが交差する世界で不気味だったり、妖しかったりするのに何故だか懐かしさも湧いてくる。
おすすめポイント
ファンタジーでありながら、何故か現実感も感じる不思議な作品であり、独自の世界観が味わえます。
『南の子供が夜いくところ』
日本からはるか南の島「トロンバス島」とその周辺を舞台にした全7編からなる連作短編集。
それぞれの話は独立しているようにみえるが微妙にリンクしていて、読む進んでいくと異世界が広がり始める。
おすすめポイント
エキゾチックで土着的な怪綺譚は独特な潤いを帯び、じわりじわりと迫ってくるような感さえあります。
未知の世界があるかのような展開にゾクッとします。
『竜が最後に帰る場所』
それぞれの話が独立している5編からなる短編集。
前半の話は緩やかに人間の醜悪を描いていて中盤から終盤の話はお得意の不思議な世界観がスクリーンいっぱいに写し出されています。
普通にある日常の風景の裏に潜むものを斜めから観たような感覚で描いています。
おすすめポイント
ホラー色はそれほど強くなく、強烈な余韻を残して違う世界に連れて行ってくれる作品です。
『金色の獣、彼方に向かう』
鼬(イタチ)がかかわる4編からなる短編集。
幻想的で美しい情景が浮かんではくるが、もの悲しさよりも少しの恐怖心が勝っているような感覚になる。
おすすめポイント
恒川氏は綺麗な表現の中に怖いものを描く天才であり、意識を異界へトリップさせてくれるのである。
非日常に間違いなく引き込まれる作品です。
『金色機械』
おすすめポイント
江戸時代を舞台に不思議な力を持った者たちの数奇な半生を描くとともに人の罪や正義の正当性を問う話。
古の昔から言い伝えられる「金色様」は果たして神か、仏か、妖怪か自分にとって敵か味方かわからない。
いくつかの物語が絡み合い、不思議な雰囲気の世界を作り出している。
長編ですが長さを感じさせない楽しい作品です。
『スタープレイヤー』
おすすめポイント
異世界に飛ばされ、そこで10個の願いがなんでも叶うスタープレイヤーになった女性の話。
最初は自分だけのために願いを使い、途中かから同じプレイヤーと出会い、願いを使うスケールが段々と大きくなっていく。
叶えられる願いの範囲があまりにも広すぎてそれを利用する人たちの欲望というものをまざまざと見せつけられてしまう。
SF作品としての設定が明白で非常に躍動感があり楽しめる作品です。
『月夜の島渡り』
おすすめポイント
沖縄を舞台にした7つの奇妙な話を集めた短編集。
物語は妖しくも美しく、熱気を孕んだまま常に影を伴った沖縄の情景を映しだしています。
異界と現実があいまいなまま接続し、何故か現実よりも異界の出来事の方がリアリティ感が溢れているようにみえる。
いかにも沖縄にあってもよさそうな場所です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
恒川氏の作品に幻想的で至妙な描写を感じていただけましたでしょうか。
読んでいない作品がありましたら是非この機会に読んでみてください。
心の中に幻想世界が広がります。