独自の世界観で魅了する、竹本健治氏のおすすめ作品10選をご紹介させていただきます。
大学在学中に中井英夫氏の推薦により、雑誌「幻影城」に「匣の中の失楽」という作品を連載し作家デビューを果します。
この後、ゲーム三部作と言われる「囲碁殺人事件」「将棋殺人事件」「トランプ殺人事件」を発表しファンを広げていきます。
これらの作品の中に登場した少年の牧場智久がその後の竹本氏の作品でメインの名探偵となっていくのです。
竹本健治おすすめ作品10選をご紹介~独自の幻想を紡いだ描写~
その後しばらくミステリーを離れ、80年代は主にSFやホラーを執筆していた時代がありました。
そして90年代に入り、久々の大作ミステリである、「ウロボロスの偽書」を発表し人気を博します。
勿論フィクションなのですが、現実と非現実との境界を曖昧にしていくという竹本氏の幻術が発揮されているシリーズとなります。
そんな竹本健治氏のおすすめ作品を10選ご紹介いたしますので、どうぞ楽しんでください。
《匣の中の失楽》
推理小説マニアの大学生、曳間が、仲間が書いている小説の予告通りに、密室で殺害された話です。
現実で起こる事件と、作中劇で起きる事件を、ミステリー愛好家である登場人物たちが、自分たちで推理していきます。
ここがポイント
三大奇書に連なる第四の奇書との評判通りに、現実と小説の区別がつかなくなる構成に驚かされます。
奇数章と偶数章のどちらかを現実に見るかによって、様々な解釈が生まれてきます。
何度も読まないと理解できない作品です。
《囲碁殺人事件》
ゲーム三部作シリーズの第一弾であり、囲碁タイトル戦で、「碁の鬼」と呼ばれる棋士が、勝利をほぼ手中にした翌日に首無し死体で発見される話です。
ここがポイント
何故、犯人は被害者の首を切らなければ、ならなかったのかの答えが、結構予想外で楽しめます。
盤面を使ったパズルは面白く、ゲームそのものが内容に深く関わっているのもユニークであり、囲碁をある程度たしなむ人であればもっと楽しめると思います。
謎解き部分も独特の味わいがある作品です。
《将棋殺人事件》
ゲーム三部作シリーズの第二弾であり、詰め将棋と恐怖がテーマとなっている話です。
ここがポイント
都市伝説の調査を進めていく中、二つの死体の謎が絡まり、詰め将棋の盗作の話と奇妙な繋がりをもっていきます。
謎が謎を呼び込んで、一体終結はどこなのか分からなくなってしまいます。
詰将棋の世界がこんなにも奥が深いと思い知らされる作品です。
《トランプ殺人事件》
ゲーム三部作シリーズの第三弾であり、トランプゲームを媒介とした話です。
序盤は密室から消失した謎が出てきて、それを覆うように精神病理の生気と、狂気の境やコントラクト・ブリッジのルールが語られて、意図するようにミステリーから遠ざかっています。
終盤になると三重の暗号解読と密室トリックの謎解きありますが、何故か困惑させられます。
ここがポイント
精神世界の深淵に踏み込んだような作品です。
《狂い壁・狂い窓》
もともと産婦人科病院として建てられた、築60年近くなる樹影荘に起こる奇妙な出来事の話です。
そこに住む6組の居住者たちを襲う怪異と、派生して起こる人為的事件が描かれています。
狂っているのは人なのか、はたまた建物なのだろうか、恐ろしい出来事が、圧倒的な筆力で綴られています。
ここがポイント
ホラーでもあり本格ミステリーでもある作品です。
《腐蝕の惑星》
日常が崩壊するまでを描いた、それ以前とその後の主人公たちを襲う、それ以後を描いた話です。
たった一つしかない現実に比べて、非現実は仮想現実、悪夢、虚構など無限であり、境界線は曖昧です。
色々と既視感を覚える話であり、連想するものはことごとく、後発だったりします。
ここがポイント
現実と虚構が入り混じったSFホラー作品です。
《ウロボロスの偽書 上・下》
現実と小説が入り乱れているメタミステリーです。
竹本健治氏の連載小説という作品であり、現実とフィクションの境界線が亡くなり、いろいろな要素がお互いに干渉し合っています。
ここがポイント
3つのパートで構成されていて、現実と小説を行き来して錯綜しているために、ミステリーとしての帰結を期待してしまうと肩透かしに終わってしまいます。
混乱ぶりを楽しむ作品なのかもしれないです。
《闇のなかの赤い馬》
ミッション系の男子校で、神父の焼死事件が連続する話です。
閉鎖された独特の雰囲気の中で起きる事件と、夢に見る赤い馬との関連性は何なのだろうか。
怪しい謎解きをはじめ、人体ローソク化現象とか汎虚学研究会など、いかにも竹本氏らしい描写です。
ここがポイント
歪んだ世界に深い陰影を添える作品です。
《かくも水深き不在》
多彩な物語が展開する4編からなる連作短編集と、書きおろし1編で構成されている話です。
ホラーからミステリーまで多彩な味の短編があり、一気に読ませる面白さがあります。
ここがポイント
そして全話に共通して登場する、精神科医の存在により、最後の一つの物語へと導かれ、一つの長編としても成立する構成になっています。
緻密なプロットと捻りの利いたアイデアに惹きつけられる作品です。
《涙香迷宮》
明治の傑物である、黒岩涙香が残した最高難度の暗号解読に挑む、IQ208の天才囲碁棋士、牧場智久の話です。
涙香の秘密の隠れ家が発見されたという設定で、そこには12の部屋に4首ずつ「いろは」式の歌が記されていて、これが暗号になっているという展開です。
そしていろは歌の暗号が絡んだ、一つの殺人事件に発展していきます。
ここがポイント
日本語の凄さや深さ、そして竹本氏の思考の凄さ等、驚きの連続です。
日本語の不思議さを追求している作品です。
まとめ
竹本健治氏の作品はいかがでしたでしょうか。
二度読み三度読みは、当たり前になってしまいます。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
そして、あなたのお気に入りに加えてみてください。