ミステリー小説の中でも特に人気がある、警察小説のおすすめの作品22選をご紹介させていただきます。
警察小説はテレビドラマ化や映画化もされていて、大変人気があります。
警察小説おすすめ作品22選をご紹介~人間ドラマの裏側に真実がある~
また警察小説はジャンルも広く、本格的なものからハードボイルドに至るまで、さまざまなジャンルを楽しむことができます。
中でも人気のものは、シリーズ化されていて、テレビドラマなどで、連続モノとして放送されています。
そんな人気の警察小説のおすすめ作品を厳選して、作家別に22選ご紹介させていただきますたので、お楽しみ下さい。
1、『マークスの山』上・下 高村 薫
南アルプスで起きた事件から、被疑者、被害者、刑事やその他の関係者の様々な人間模様が描かれている話です。
異様な犯罪者と異様な犯行動機に翻弄される警察の姿があります。
自由に動き回る犯人に対して、検察や公安による不可解な捜査妨害とも思える事件介入があるのです。
忍耐と根気で事件の裏に潜む真実に近づいていく、合田雄一郎警部補の姿が凄まじく描かれています。
ここがポイント
まるでドキュメンタリーを読んでいるかのような、細部まで書き込まれた描写に、目が離せなくなってしまいます。
警察小説の金字塔と言われている作品です。
2、『狐狼の血』 柚月 裕子
昭和最後の年、広島を舞台に、暴力団対応のベテラン刑事である大上の度を越えた行動を、その直属の部下についた、正義感の強い若手刑事、日岡の目線で語られる話です。
裏社会との癒着を噂されながらも、世間の安静を図ろうとする大上を心の中で否定しながらも、段々と惹かれていく日岡だったのです。
ここがポイント
警察と任侠の世界の権力闘争の描写が、終始リアルに描かれていて、手に汗握る展開に目が離せなくなってしまいます。
やがて一触即発寸前となった、二つの暴力団の勢力の間で、一方に肩入れしつつ、抗争を阻止しようとしていることが、見えてくるあたりから、物語はダイナミックに動き出していくのです。
心が震えてしまう警察小説です。
3、『不協和音 京都、刑事と検事の事件手帳』 大門 剛明
幼き日に離ればなれになった兄弟が、大人になり、刑事と検事の立場で出会い、反目し合いながら事件の真相に挑んでいく5編からなる連作短編集です。
刑事であった父が犯したとされる冤罪事象によって、幼い頃に兄弟は、離ればなれに育っていたのです。
事件の裏にある、真実を見切れない兄に対し、鋭い助言を放つ慧眼をもった弟。
ここがポイント
自白にスポットをあてた事件を巡る2人のやり取りは、さながら不協和音の響きのように感じてしまいます。
しかし、根底では父の疑惑を晴らしたいという、共通の想いも潜んでいるかのように思います。
交錯する人間模様に、数々の事件が絡み合う作品です。
4、『幻夏』 太田 愛
23年前、夏の終わりに起きた失踪事件の謎を追った、社会派犯罪サスペンスです。
冤罪により、警察権力の恐ろしさを知った少年が、謎の失踪をしたのが23年前の12歳の夏のことでした。
その少年とひと夏を過ごした友は警察官となり、ある事件の捜査を進める中で、忘れられない過去との共通点を発見してしまうのです。
ここがポイント
一つの冤罪をきっかけに、人生を狂わされた家族の苦悩を描きつつ、日本の司法構造の問題点を浮き彫りにしています。
主人公である同級生の視点で、友の決断と波乱の人生を切なくも美しく描いた作品です。
5、『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』 深町 秋生
組織犯罪対策課、八神瑛子シリーズの第一弾であり、世間を震撼させた女子大生刺殺事件の真相に挑む話です。
管内で発生した、大物ヤクザの娘が、ナイフでズタズタにされて殺されたことが発端で、事件は人身売買や裏ビデオ、同胞の裏切りなどの関連捜査で、めまぐるしい展開を迎えます。
ここがポイント
女性でありながら、ヤクザやアウトローとも手を組み、暴力や犯罪も躊躇わず目的の為には手段を選ばないのです。
何が彼女をそこまでさせるのか、ボロボロになりながら、組織に疎まれながらも、ただひたすらに犯罪者を追いかけるのです。
バイオレンス描写も盛りだくさんで、刺激的な作品です。
6、『隠蔽捜査』 今野 敏
現職警官が連続殺人犯として捕まり、その事実を隠蔽しようとする上層部と、白日の元に晒そうとする主人公である警察官僚の竜崎信也の話です。
警察官の矜持や使命には目をつぶって、事件をもみ消すのか、自分自身の降格を覚悟してでも、事実を報告するかの選択を迫られるのです。
組織の軋轢に苦しみながらも、基本的な道徳観を実践する竜崎への好感度が、いつの間にか高まっている展開になっていきます。
正論を貫き通して問題に立ち向かい、最小限のダメージで収束させていく姿にスカットしてしまいます。
ここがポイント
抜け道を通ることなく、自分に恥じることのない生き方をすることは、やはり最強なのです。
現代社会の暗い闇にも、通じる部分もある作品です。
7、『アナザーフェイス』 堂場 瞬一
今はシングルファーザーで、刑事総務課所属の元捜査一課の刑事であった大友が、誘拐事件に挑んでいく話です。
元演劇青年で、人心掌握に長けた優しいシングルファーザー刑事という異色な大友をはじめ、熱血漢な同期、未熟な後輩、頑なな記者など、登場人物たちも個性豊かな面々なので、飽きることなく楽しめます。
かなり早い段階から、真相への目星がつきそうになりますが、ある意味、刑事らしくない大友の推理・捜査に嵌ってしまいます。
また冷静沈着な雰囲気のある大友が放つ「警視庁には私がいます」という熱い気持ちが溢れる言葉にも驚いてしまいます。
事件の捜査をする中、手掛かりが次々に繋がっていくミステリーの楽しみもしっかりとあり、真相は分かり易くなっていますが、後味はかなりヘビーな気持ちになってしまいます。
ここがポイント
警察エンターテインメントのツボをほぼ全部押さえている、バランスの良い作品です。
8、『ストロベリーナイト 警部補 姫川玲子』 誉田 哲也
姫川玲子シリーズの第一弾であり、連続殺人事件の捜査で浮上した”ストロペリーナイト″という言葉の真相に、警視庁捜査一課の警部補である姫川玲子が挑む話です。
公園の植え込みで発見された、ビニールシートに包まれたい死体の謎を追う姫川玲子はノンキャリアの刑事としては、異例の早さで昇進した29歳の警部補なのです。
ここがポイント
ミステリー要素はやや薄めですが、その分濃厚な刑事ドラマが魅力であり、裁判のシーンは思わず、グッときてしまいます。
グロテスクな殺人描写も、刑事たちのキャラとコミカルな会話で、緩和されてしまいます。
追いかけたくなるような、シリーズ作品です。
9、『64』 横山 秀夫
昭和64年に起きたD県警史上最悪の未解決事件である「翔子ちゃん誘拐殺人」をめぐっての刑事部と警務部の全面戦争の話です。
人事をめぐる警察組織内の対立、マスコミ対警察の軋轢、その狭間で心が揺れ葛藤しながらも、警察官且つ組織人として、使命を全うする広報官の三上の姿があるのです。
ここがポイント
過去の少女誘拐殺人事件を軸に警察内部の人間模様が、濃密に描かれていて、それだけでも十分に堪能できますが、最後に思わぬ形で、伏線が回収され、真相が解明されていく様には、思わず唸らされてしまいます。
長文を感じさせない、のめり込んでしまう作品です。
10、『機能警察』 月村 良衛
新型近接戦闘兵器である「龍機兵」を擁する、警視庁特捜部の活躍を描いた近未来の警察物語です。
正体不明のテロ組織と、それに立ち向かう傭兵3人で構成された、警察の新しい組織との攻防が描かれています。
スピーディーな展開と派手なアクションに加えて、3人の過去や旧態依然とした、警察の保守派との軋轢も興味をそそられます。
キャラ設定も巧みであり、ハラハラ、ドキドキ感もあり、楽しめます。
ここがポイント
警察小説であると同時に、SF小説の要素も併せ持つ作品です。
11、『教場』 長岡 弘樹
警察学校を舞台に、観察眼の鋭い風間教官が、様々な出来事の真相を明かしていく6話からなる連作短編集です。
ここがポイント
警察学校は一人前の警察官に育て上げる場ではなく、篩(ふるい)にかけるための場であると主張する風間教官なのです。
その為、足の引っ張り合いなどもあって、その思惑を暴いていくミステリーでもあるのです。
教場に残る者、去っていく者、紙一重のような気もしてしまいますが、これだけ苦しい思いをすれば、厳しい警察官という仕事もきっと全うできるあろうと思います。
続編が待ち遠しくなる作品です。
12、『犯人に告ぐ』上・下 雫井 脩介
誘拐殺人犯を取り逃がした過去を持つ特別捜査官の巻島が、連続児童殺人事件の指揮を執る劇場型捜査の話です。
主人公である巻島警視が、自らテレビに出演して、犯人を炙り出す「劇場型捜査」を実行していくのです。
ここがポイント
知恵を絞る警察側、私欲のために横槍をいれてくる内通者、それを嘲笑うかのように文書を送りつけてくる犯人、それぞれの思惑が交錯し、目が離せなくなってしまいます。
警察組織だけではなく、テレビ業界の内部までも詳細に描かれています。
事件や犯人の非道さよりも、捜査の行く末に重きをおいている作品です。
13、『警官の血』上・下 佐々木 譲
警察官三代に渡る物語であり、そこには清廉潔白だけでは務まらない警察官の苦悩と矜持が描かれています。
公安のスパイを経て、念願の駐在所勤務となった民雄は、父である清二が生前追っていた二つの殺人事件について、独自の捜査を始めるのです。
しかしたどり着いた真実は、民雄を打ちのめすばかりでなく、彼は非業の死を遂げてしまうのです。
その息子である和也もまた、警察官になるのですが、こともあろうに、最初の任務は上司となった男の内定だったのです。
祖父、清二が抱え、父、民雄を押しつぶした罪とは一体何だったのでしょうか。
ここがポイント
警察官人生を全うするために、正義とは何か、罪とは何か、そしていい警察官とは何者なのかを問われているような作品です。
14、『完全黙秘』 濱 嘉之
現職大臣の刺殺事件が起こり、犯人は現行犯逮捕されるのですが、完全黙秘を貫き、身元が判明しないまま起訴される話です。
政治家絡みという事で、警視庁公安部の警部である青山が調査することになるのですが、過去にも同じような完全黙秘のまま裁判を受けた容疑者がいると知り、興味を持った青山は調査を進めていくのです。
そして暴力団、政治家、宗教や芸能界にまで複雑に絡んだ、戦後の闇に及んでいく展開になります。
ここがポイント
公安ものの面白さは、地道かつ秘匿に捜査を続けて、最後にドーンと一斉検挙に持っていくところだと思います。
作者の濱氏は元警視庁公安出身なので、リアリティ感がたっぷりと味わえる作品です。
15、『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』 稲葉 圭昭
覚醒剤使用で逮捕された、元北海道警の警部本人が、服役後に出版したいわゆる暴露本です。
「平成の刀狩り」と言われた、全警察をあげての銃器摘発が背景にあり、それが引き金となって、担当部署はノルマ達成のために、次第に手段を選ばず、銃を不正な手段で集めるようになっていったのです。
地元のヤクザに情報提供者を作り、一線を越えて、向こう側へ行ってしまった男の悲劇が描かれています。
ここがポイント
捜査のためならとか、正義のためならとかで、最初の一歩を間違えると、どんどん深みにハマっていってしまうのです。
まさしく警察庁という本社の下で、成績を競う支社さながらだったのです。
ガサ状なしの家宅捜索、おとり捜査、やらせ逮捕など、警察が日常的に繰り返している違法捜査が描かれている驚愕の作品です。
16.『女刑事音道貴子 凍える牙』 乃南 アサ
女刑事、音道貴子シリーズの第一弾であり、謎の人体発火と獣による咬傷が、複雑に絡み合う奇怪な事件に挑む話です。
捜査員紅一点である、音道は容姿端麗であるがバツイチであり、やや男性不信のきらいがあります。
そんな彼女の相方となったのは、超男尊女卑の化石のようなオッサン刑事の滝沢だったのです。
ここがポイント
物語はオオカミ犬「疾風」が登場してから、深みを増し、静かに強く生きようとした一人と、一匹の言葉を交わさない対話がそこにあったのです。
そしてタイトルにも絡んでいるオオカミ犬疾風と、バイクを転がす音道の生き様が重なり合うような感じで、エンディングへとひた走るのです。
切なくも心温まる作品です。
17、『新宿鮫』 大沢 在昌
新宿鮫シリーズの第一弾であり、新宿鮫と恐れられる新宿署のはぐれ刑事、鮫島が、一人でひたすら犯罪者に喰らいついていく話です。
キャリアでありながらそれを鼻にかけず、鮫でありながら狼のような立ち振る舞いを常とし、己の嗅覚に絶大の信頼を寄せているのです。
以前からの拳銃密売人を追う鮫島だったのですが、警察官連続殺人事件が勃発したことで、同時に2つの事件を追う事になった事で、徐々にその関連性を明らかにしていくのです。
ここがポイント
組織体質に馴染まない鮫島が、アウトローであることを生かした捜査と独自の戦略で、事件の核心に迫っていくのです。
ハードボイルド警察小説の金字塔作品です。
18、『石の繭 警視庁殺人分析班』 麻見 和史
警視庁殺人分析班シリーズの第一弾であり、新人女刑事、如月塔子と個性派捜査班が猟奇殺人犯が起こす劇場型犯罪に挑む話です。
モルタルで石像の如く固められた変死体が発見され、その翌朝、犯人からの電話があり、なんと交渉相手に新人女刑事の如月を指名してきたのです。
自らヒントを提示しながら、頭脳戦を仕掛ける知能犯、そして警察を愚弄するかのように第二の事件が発生してしまうのです。
ここがポイント
犯人は何故、遺体をモルタルで固めたのか、何故、如月を指名したのか、そして事件の裏に隠された真相は果たして何だったのか。
今後の展開が楽しみなシリーズ作品です。
19、『もぐら』 矢月 秀作
元潜入捜査官が、主にヤクザ絡みの困り事を解決していく中、組織的陰謀に巻き込まれていく話です。
潜入捜査で地獄を見て、警察を去り、夜になると動き出し、ヤクザやチーマーに泣かされている依頼人のため、力でトラブルを解決していくのです。
その男の名は、闇社会で恐れられる「もぐら」だったのです。
いくつかの事件を解決していくうちに、その背後で何かが動き出していることに気付きはじめるのですが、それでもなお、もぐらは単身でアジトに乗り込んでいき、その力を見せつけるのです。
ここがポイント
哀愁と暴力を身に纏ったヒーローが、今日も悪の組織をぶっ壊していく作品です。
20、『ドクター・デスの遺産 刑事、犬養隼人』 中山 七里
刑事、犬養隼人シリーズの第四弾であり、今回の事件のテーマは安楽死です。
一人の少年の通報で、20万円で安楽死を請け負う「ドクター・デス」なる人物が、複数の突然死に関わっていることが判明するのです。
犬養刑事と部下の高千穂明日香は、悪魔のような医師を必死に追いかけていくのですが、その先には意外な事実が隠されていたのです。
ここがポイント
もし家族が不治の病に苦しんでいたとしたなら、楽になりたいと願っていたとしたのなら、自分は「安楽死」という選択肢を選ばない自信は、果たしてあるのだろうかと思ってしまいます。
今回もラストで、「そう来るのか」と、やられた感満載の作品です。
21、『アゲハ 女性秘匿捜査官・原麻希』 吉川 英梨
ハラマキシリーズの第一弾であり、鑑識課の原麻希の子供が誘拐されたことから、8年前に起きた事件と繋がっていく話です。
事件現場に届くアゲハからのメッセージの意味は何なのか、そして何の目的があるのかさっぱり見当がつかないのです。
犯人であるアゲハの正体を暴くために、八面六臂の活躍を見せ、麻希は犯人に挑んでいくのです。
その強い想いは刑事と母親の間を行ったり来たりしながらという、微妙な心理描写も上手く描かれていて、スピード感も満載です。
ここがポイント
組織の中で抗いながらも、自分の信念を曲げず、強い女性の情念が込められた、期待を裏切らない作品です。
22、『インビジブル』 坂上 泉
昭和29年、むせ返るような大阪の熱気の中、二人の警官が連続殺人事件に挑む話です。
当時、事件の捜査にあたる警察はまだ一本化されておらず、国警と自治警察が統合されるかどうかという混乱の時期に、コンビを組み捜査をすることになる大阪警視庁の新城と国警の守屋。
中卒の新城に対し、守屋は帝大卒のエリートであり、当初は全く噛み合わない二人が、徐々に打ち解け合っていくのです。
ここがポイント
実在の人物をモデルにした場面もあり、フィクションとはとても思えない、物凄い迫力に圧倒されます。
そしてもう一つの軸は、大戦末期に辛酸を舐めた満州や内蒙古の移民の方々、そして日本が犯した中国大陸での戦争犯罪についても触れています。
底辺の者が搾取される世の中にあって、警察の姿はまさしく救いであり、胸が熱くなってしまう作品です。
まとめ
おすすめの警察小説のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
警察小説の醍醐味を味わって頂けると思います。