実際の拝み屋である、郷内心瞳氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
1979年に宮城県に生まれ、郷里で「拝み屋」を営んでいます。
2013年に「調伏」「お不動さん」という作品で、第5回「幽」怪談実話コンテスト大賞を受賞します。
※拝み屋:霊などを拝んだり、祓ったりする人であり、祈祷師とも呼ばれます。
郷内心瞳おすすめ作品8選をご紹介~実話系怪談を克明に描く~
拝み屋と作家は対極にある仕事だそうで、恐ろしい出来事を消し去るのが、拝み屋であり、実際のものよりも怖いものにするのが、怪談作家だそうです。
拾った原石をゴミ箱に捨てるのか、ピカピカに磨き上げて、展示するかという位の大きな違いがあるそうです。
これからの執筆方向としては、読者の方が自分の身に起こるかもしれない、もっと日常に寄せた怪談実話を書くことを目標にしているそうです。
そんな郷内心瞳氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、恐怖を存分に味わってください。
1、『拝み屋郷内 怪談始末』
拝み屋を営む郷内氏が、幼少期から現代に至るまで見聞きした様々な怪異を語る、実話シリーズの短編集です。
最初は普通の怪談話のようでありながら、桐島加奈江の話が出てきたあたりから、現実なのが妄想なのかの区別ができなくなってしまいます。
この世とあの世の境界さえ怪しくなり、絶妙な構成なので、奇妙な世界に引きづりこまれてしまいます。
ここがポイント
怪談実話は因果関係が不明で、摩訶不思議な話が多く、説明がつきにくいからこそ、怖く感じてしまいます。
この世の者ならぬ異形の存在が、あまりにも生々しく、平気に生者に仇なしていくのです。
実話ならではの不思議な恐ろしさが堪能できる作品です。
2、『拝み屋郷内 花嫁の家』
「母様の家」と「花嫁の家」の連作2編が収録された、怪異を柱として語られる怪談話です。
拝み屋の郷内氏が遭遇してしまった、万に一つの凶悪な事件の話であり、二つの話は実はリンクしている為、一つの話として捉えたほうが納得できます。
実話なのですが、守秘義務の為、当然脚色はしているものの、かなりの恐怖を感じてしまいます。
怪異そのものも、かなりものですが、それよりも登場人物の気味悪さが際立っています。
ここがポイント
郷内氏の霊的体質と文章力により、普通の実話怪談話とは一線を画す怖すぎる作品です。
3、『拝み屋怪談 逆さ稲荷』
拝み屋の郷内氏が、幼少期から拝み屋になるまでの間に出合った、怪異を軸とした怪談短編集です。
ここがポイント
幼い頃から「見える」人であった郷内氏自身が体験したことや、周囲で見聞きした話を纏めた怪異譚が綴られています。
実家の恐ろしい話の末に、自身が拝み屋になるに至った経緯が語られ、よくある怪談話とは違い、オチはありませんが、最初に張られた伏線が、恐ろしい形で回収されていくあたりは、背筋がゾッとしてしまいます。
後半から怒涛のように押し寄せてくる怖さが爆発的な作品です。
4、『拝み屋怪談 禁忌を書く』
まるで怪異版ショートショートのような話が、53編綴られています。
今作は郷内氏の関わった4人の女性についての語りを中心に、構成されていて、前作程の怖さはないものの、姿なき脅迫者の存在がヒタヒタと伝わってくるところは、やはり気持ちのいいものではありません。
ここがポイント
ただ不気味で恐ろしい話ばかりだけでなく、優しく切ない想いの話も散りばめられていて、人の生き死にの十人十色の繋がり方に安堵したり、寂しかったり、共感したりしてしまいます。
ただ単純に眠れなく程怖いというホラーではなくて、比較的穏和に纏められている作品です。
5、『拝み屋備忘録 怪談双子宿』
怖さ控えめの短い話が、55編綴られた短編集です。
怖さが控えめな分、リアル感がかなり増していて、そういう意味では面白く、楽しめます。
何かと見間違い?気のせい?と思ってしまうのですが、やはり何か異質のものが存在しているような感になります。
ここがポイント
人づてで聞いた話も拝み屋目線で描かれているので、また一味違った怖さを感じてしまいます。
全体的にギュッと詰まった構成になっていて、ゾクゾクしながら楽しめる作品です。
6、『拝み屋備忘録 怪談首なし御殿』
ヒヤッとする中にクスッと笑える話もあり、中々読み応えのある怪談実話短編集です。
前半部分は怪異が去ったと油断をした後に、追い打ちを受ける話が収められています。
「二連チャン」のように笑える話から「痙攣」のような背すじが凍ってしまいそうな話までが、バラエティー豊かに綴られています。
表題作である「怪談首なし御殿」は郷内氏が夢で見た不気味な屋敷に引き寄せられてしまう連作短編になっています。
ここがポイント
実話怪談の語りてとは、打って変わり、郷内氏の生業である拝み屋を姿が垣間見れる作品です。
7、『拝み屋備忘録 ゆきこの化け物』
今作は祟りや障り、憑き物など、厭な話が詰め合わせのようになっています。
祟りと憑き物という今作のテーマに即した約60話が綴られていて、そのほとんどが自業自得と言わざるを得ない経緯を持っているので、未だにこういう不届き物がいるかと思うと、情けなくなってしまいます。
「祟り」というよりも「罰が当たった」という表現の方が、しっくりとくるように思ってしまいます。
要は他人に優しくすることが、自分にも跳ね返ってくると思いますし、増して、その逆を行っている人は、家族を大切にすると口で言ってみても行動は伴わないものなのです。
ここがポイント
ひとの因業により生み出される様々な怪異が味わえる作品です。
8、『拝み屋異聞 うつろい百物語』
移ろう四季の怪異と拝み屋である郷内氏の日常が垣間見える、新感覚の百物語です。
ここがポイント
怪談というよりは、不思議な話、理解できない話というニュアンスが、強く感じられる展開になっています。
ただただ恐怖を煽るだけでなく、日常を清く生きることや、他人を敬う心の大切さを訴えている話もあり、気持ちが正されます。
短いながらも不可解な現象の話や、全く解明されていない不気味な話もあり、それでいて、リアルであるが故にオチがないので、余計に怖く感じてしまいます。
この世のものではない者たちへの憐れみや慈しみが、感じられる作品です。
まとめ
郷内心瞳氏の作品のご紹介はお楽しみいただけましたでしょうか。
拝み屋として、また作家としての実際の怪異は伝わりましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
そして、本当の怪異を味わってみて下さい。