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浅田次郎おすすめ15選をご紹介~小説は天然の美しさが基本~

人情味溢れる作風に特徴のある、浅田次郎氏のおすすめの作品15選をご紹介させていただきます。

高校卒業後、陸上自衛隊に入隊、その後任期満了にて除隊し、アパレル業界など様々な職に就きながら、投稿生活を続け、1991年に「とられてたまるか!」という作品で作家デビューを果します。

その後1995年には「地下鉄(メトロ)に乗って」という作品で吉川英治文学新人賞、1997年には「鉄道員(ぽっぽや)」という作品で第117回の直木賞を受賞しています。

その後も数々の文学賞を受賞し、2015年には紫綬褒章を授与されています。

また、現在は直木賞、吉川英治文学賞の選考委員をつとめています。

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浅田次郎おすすめ15選をご紹介~小説は天然の美しさが基本~

浅田氏は自宅では執筆時に限らず、あぐらで過ごすことが多いとのことで、飛行機や電車の長旅の時もあぐらをかくそうです。

また、子供の頃から読書が好きで、図書館で借りた本はその日のうちに読み終えて、翌日に返すというパターンだったらしく、1日1冊の読書が当たり前になっていたそうです。

趣味は買い物する事、本を読むこと、そして競馬とのことで、下戸であり、かなりのヘビースモーカーのようです。

そんな浅田次郎氏のおすすめの作品15選をご紹介いたしますので、お楽しみください。

1、『プリズンホテル1夏』

小説家の木戸孝之介がヤクザの大親分である叔父の仲蔵が経営するプリズンホテルに招かれ、そこで起きるドタバタ人情劇に遭遇する話です。

そのホテルは従業員が極道の者たちであり、訪れる客は極道の団体や自殺寸前の不幸一家、熟年離婚間際の夫婦など一般のホテルとは、いささか趣が違っていたのです。

ここがポイント

ジョークとか、ホロリとするドラマが込められた、まるで落語の世界のような話であり、人間社会が創出する必要悪を皮肉的に表現しています。

文章が読み易く、展開もスピード感にあふれていて、引き込まれてイッキ読みしてしまいます。

気持ちが滅入った時に、笑顔にしてくれる作品です。

2、『日輪の遺産』

太平洋戦争が終焉に向かおうとしている混乱の中、日本の再建を信じて懸命に戦い、命すら投げ出した日本人の話です。

過去と現代の場面が交差しながら、感動と切なさ、清々しさや悲しみなど、いろいろな感情が胸に広がってきます。

ここがポイント

何が善で何が悪とか決めつけをせずに、人間と時代を正面から描いている姿勢に共感してしまいます。

この国をそして、命を守ろうとした日本人に深い感動がこみ上げると共に、喪われた命への悲しさを強く感じる作品です。

3、『活動寫眞の女』

京都大学の学生が、三十年前に死んだはずの女優の幽霊と恋に落ちる話です。

京都を舞台にテレビ業界に押されて斜陽となっていく映画産業の中、あまりにも美人過ぎて出番が回ってこなかった大部屋女優の悲哀と監督との恋愛、そして幽霊となってからの京大生、清家との塾愛が描かれています。

一見すると非現実的な世界の物語が、すっと入ってきて、映画全盛期の昭和初期から学生運動が激しかった昭和四十年代が映画フィルムを介して交錯する展開を面白く捉えています。

ここがポイント

人を愛することに理屈はいらないと感じさせてくれる、時空を超えたファンタジー作品です。

4、『蒼穹の昴』

蒼穹の昴シリーズの第一弾であり、中国で1300年間続いた科挙に挑む青年、文秀と、幼馴染ながら貧しい家に住む少年、春児が希代の占い師から輝かしい将来を予言され、清代末期の乱世に翻弄されていく話です。

清朝末期、日本が明治維新を経て国力を挙げて西洋に対抗しだしたのに対して、清では西太后が絶大な権力を振るい、西洋列強の思うままに事が進み始めていたのです。

ここがポイント

そんな中、文秀は科挙の試験で上位の成績で官僚に登用され、春児は宦官の道を進むことを決めて、国を動かそうとしていくのです。

そして衰え行く清朝の中で、冷酷非道だと思われていた西太后は、近くに控える宦官の目線から見ると、滅亡の一途を辿る清朝に捕らわれた聡明な少女だったのではと思ってしまいます。

中国の壮大な歴史に圧倒される作品です。

5、『鉄道員(ぽっぽや)』

寂しさの中にジワリと温かさが沁み出しくる、8編からなる短編集です。

出会う筈がなかった、会えるはずのなかった人たちの出会いや接点が描かれています。

自分の感情とは逆のことをせざるを得ない社会の不条理や、やりたいのにできない、やりたくないのにやらなければならない、そんな状況での心情が見事に表現されています。

ここがポイント

繊細な描写により、まるで映画を観ているかのように、物語の情景や登場人物の心情がすっと胸に入り込んでくるのです。

小さな奇跡がいっぱい詰まった、心に沁みる作品です。

6、『珍妃の井戸』

蒼穹の昴シリーズの第二弾であり、清朝最末期、義和団事件そして列強諸国の北京侵攻の混乱の中、光緒帝の妃である珍妃の死を巡り、日英独露の四人の高官がその謎に挑む話です。

珍妃の死の真相を明らかにするために、四人の高官たちが七人の関係者に事情を聴いていくのですが、皆のいう事が食い違っているのです。

ここがポイント

真の犯人は一体誰なのか、通説で犯人は西太后とされているようですが、浅田氏の見解は違うようです。

四人の高官が最後に行き着いたのは、珍妃を誰よりも愛した夫で清国の天子である光緒帝であり、彼の証言がもたらしたのは衝撃の真実だったのです。

人間愛の集大成のような感慨深い作品です。

7、『天国までの百マイル』

事業に失敗し全てを喪った男、城所安男が、心臓病で余命宣告された母親に名医の手術を受けさせる為、百マイルの距離をひたすら走る話です。

どん底に墜ちた安男を支える女性たち、母が子を想う気持ち、子どもの生活を守りたい元妻の気持ち、愛する男の幸せを誰よりも願うマリの気持ちが伝わってきます。

中でも恋人のマリが自分の幸せを犠牲にしてまで、好きな男、安男に幸せになって欲しいという、思いやりの気持には思わず胸が熱くなってしまいます。

ここがポイント

家族の絆、人の優しさといったものの尊さが、真直ぐに響いてくる作品です。

8、『シェエラザード』上・下

太平洋戦争時に、二千人余りの民間人を乗せた豪華客船を転用した病院船の「弥勒丸」が、魚雷を受けて沈没してしまう話です。

国際条約によって、安全を保障されていたはずの弥勒丸が何故攻撃を受けてしまったのか、謎は深まるばかりです。

実際にあった昭和20年4月の「阿知波丸」事件がモデルとなっていて、忘却の果てに築かれた現在なのです。

弥勒丸の航海の真の目的を知りながら、救うことができなかった二千人余りの命、復路の船内はさぞ希望に満ちあふれていたに違いありません。

船の運命を知りながら、昭南から船を見送った男たちは、どんな思いだったのでしょうか。

ここがポイント

戦争することの愚かさを新たな角度から教えてくれる作品です。

9、『壬生義士伝』上・下

己が生きるため、妻子を養うために盛岡南部藩を脱藩し、新選組に入隊した清貧の人、吉村貫一郎の話です。

鳥羽伏見の戦いに敗れ、九死に一生を得た吉村は主家であった、南部藩の大坂蔵屋敷に逃げ込むところから話がはじまります。

見栄の武士道ではなく、人の義に生き、切腹を命令された本人の語りと、大正の世まで生き残った元新撰組員の語りによって明らかになる吉村貫一郎像が魅力的に描かれています。

ここがポイント

義士であることへの尊敬の想いが、仲間から常に語られていて、吉村は男たちが認める本当の武士だったのです。

謙虚で優しくて心の強い人間の家族を絶やしてはいけないという、仲間の気持ちに引き込まれてしまいます。

真の武士の姿に、惚れ惚れしてしまう作品です。

文藝春秋
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10、『椿山課長の七日間』

接待の席でポックリと逝ってしまった椿山課長と、人違いでヒットマンに射殺された武田組長、そして、信号無視の車に轢かれた雄太少年の話です。

冥土から極楽へ送られる時にやり残したことがあると、特別逆送措置法の適用で初七日まで現世に戻ることができるのです。

但し、制限時間の厳守、復讐の禁止、正体の秘匿の制約があって、違反すると地獄に落ちてしまうのです。

身近な人の知らない一面を知って良かったと思うのか、知らなければよかったと思うのかは、心はその人だけのものなのです。

ここがポイント

どんな想いがあってもいいのですが、自分に向けた愛情に気付いてしまうと、泣きたくなるような嬉しさがこみあげてくるものなのです。

やはり愛情は生きているうちに伝えないと後悔します。

11、『輪違屋糸里』上・下

芹沢鴨がいるところの初期の新撰組を島原の芸妓、京西陣菱屋の女、隊士が暮らす宿の女房からの視点で進む話です。

女性ながらの現実的な思考で、武士道に邁進する隊士に一歩引いて接しながらも、その時世に生きる男たちを見守る器量を絶妙なバランスで表現しています。

芹沢派と近藤派、男と女、武士と百姓などの相違が描かれることで、各々の業や悲哀が鮮明に浮かんできます。

果たして新撰組が背負った「誠」の字はどんな想いを成し遂げるためのものだったのでしょうか、そして「名」を捨てて、芸妓として生きる女の人生とは何を意味していたのでしょうか。

ここがポイント

沖田総司語りで進む芹沢鴨暗殺までのくだりは、肌がひりつくような緊張感があり、それに巻き込まれていく、女たちの哀れさと逞しさを同時に感じてしまいます。

激動のこの時代を必死に生きた男女の息吹が、伝わってくるような作品です。

12、『憑神』

時は幕末、御徒士の別所家の次男坊で出戻りの彦四郎が、ある祠を拝んだことから、貧乏神、疫病神、死神に憑りつかれる羽目になる話です。

軽快なテンポで物語は進んでいきますが、時代は折も折、激動の幕末であり、御家人とくれば悲しい結末が待ち受けているのです。

江戸の最後、武士が武士でいることを疎まれるほどになっても、まだ義を通す堅物に神様がほだされていくのです。

甲冑を付けて、上野に向かう姿には清々しささえ感じてしまい、見送る家族の姿にホロリとさせられます。

ここがポイント

滅びゆく幕末の武士たちの悲哀を、深く描いている作品です。

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13、『降霊会の夜』

別荘地に住む英国人の女性の力を借りて、思いを残したままの霊と交流する話です。

主人公がふとしたことから「降霊会」に呼ばれ、その中で現れる過去に関わった人たちと交流をしていくのです。

前半と後半の2部に分かれていて、前半は少年期の事件、後半は学生の時の話になっています。

特に前半の降霊会は親を愛する子供の愛情の切なさと、リアリティ溢れる戦後感の描写に思わず自分自身もその喧噪の中へ引きづりこまれそうになってしまいます。

ここがポイント

人はいつでも小さな後悔の連続の中で生きていて、物事を忘れるからこそ、幸せの有難みが分かるのです。

しかし、それを忘れることの出来ない霊たちの告白には、非常に胸が痛くなります。

14、『一路』上・下

主人公、小野寺一路が、父の不慮の死により、一切の知識がないまま、十九歳で参勤交代の御供頭を拝命する話です。

色々な人間関係が謎に包まれる中、絶対に遅れてはならない行軍はハラハラの連続なのですが、何故か奇跡的な偶然が積み重なって、いろいろな幸運を引き寄せてしまうのです。

また、次々に襲いかかる試練が道中の結束を固めたり、疲弊も伴いますが、お殿様の一声が皆を奮い立たせるのです。

迷いなくついて行けるのは、名君の証であり、それぞれの一筋な想いに何度も心を動かされてしまいます。

ここがポイント

江戸末期の武家の心意気や、中山道の宿場町の雰囲気がしっかりと描かれている、読み応えのある時代作品です。

15、『大名倒産』上・下

ここがポイント

借金で首が回らなくなった大名家を、計画倒産しようと目論むお殿様の話です。

政治・経済の構造的な捻じれが永年の間に膨大な借金となって、武士や各藩に圧し掛かった幕末期に、その借金まみれの藩の始末を妾腹の息子に押し付けてしまうのです。

面白いことになったとやって来たるは貧乏神で、一国を引き倒せると大張り切りに張り切るのです。

しかし、それから七福神やら改心した貧乏神やらの協力もあり、幸運にも恵まれて、あの手この手を駆使しながら、完済には至りませんでしたが、何とか倒産は免れたのです。

抜群のエンターテインメント作品で、かなり楽しめます。

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まとめ

浅田次郎氏の作品はお楽しみいただけましたでしょうか。

色々なジャンルの作品があり、浅田氏の引き出しの多さには驚いてしまいます。

もし、まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。

浅田ワールドの虜になってしまいますよ。

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