怪異蒐集家である、中山市朗氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、映画監督になることを志して、和泉聖治監督の「魔女卵」で、助監督を経験しています。
また、1984年に今までなかった日本映画にメイキング・ビデオの企画を提案し、ヘラルド映画や黒澤プロダクションに持ち込み、日本映画界初のビデオ班を現場に実現させています。
中山市朗おすすめ作品8選をご紹介~怪談は人を魅了し続ける~
1990年に木原浩勝氏との共署で「新・耳・袋~あなたの隣の怖い話」という作品を出版して、作家デビューを果します。
この作品は漠然然りとした怪談という分野に体験談と思われる話だけにこだわった演出と、体験した人達の名前をAさん、Bさんなどとすることで、実話系怪談という新分野を開拓したのです。
1999年には、京極夏彦氏、東雅夫氏、木原浩勝氏らと日本文芸界に怪談の復興をもたらそうという趣旨の「怪談之怪」を結成しています。
そんな中山市朗氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、存分に怖がっていただければと思います。
1、『新耳袋 第五夜 現代百物語』
現実に起こった得体の知れない不思議な体験を集めた怪異集です。
ここがポイント
普通のよくある怪談とは違い、不思議な出来事に、推測や憶測がなく、事実をそのまま伝えているところが怖いのです。
実際の体験談が綴られているので、文章に書かれたそのままが恐怖を味わえるのです。
完結していないがために、未だにその恐怖が続いているのかと思うと、強い恐怖を感じてしまいます。
原点回帰をテーマに編纂されたという、この第五夜は、じわりじわりと怖さが増してくる作品です。
2、『新耳袋 第七夜 現代百物語』
新耳袋の第七夜は、日常の隙間に囁かれる妖を集め綴った話です。
今話は章題がこれまでと異なる趣向となっていて、より一層百物語の雰囲気を強く感じることができます。
収録されている話は、怖いというよりも気味が悪かったり、奇妙な話が多いように思います。
ただ、縁にまつわる話の畳みかけるような展開は、今までのシリーズの中でも、突出した怖さを感じてしまいます。
ここがポイント
ここまで執着的で恐ろしい話は、他ではなかなかお目にかかれないと思います。
3、『新耳袋 第八夜 現代百物語』
新耳袋は巻によって構成が変わるシリーズであり、今作はたったの三章といったザックリとした構成ですが、これがなかな良い雰囲気を醸し出しているのです。
章分けや話数に対する構成などが、かなり工夫されていて、著者の拘りが如何なく発揮されていることが分かります。
ここがポイント
収録されている話は、どことなくノスタルジックな印象を抱くものが多めであり、背筋の凍るような怖さは無いにしても、しんみりとした怖さが後を引いてしまいます。
怖くなるのが分っていて、夜に読んでしまい、あとがきでまた怖さが倍増して底知れない恐怖に陥ってしまうのです。
4、『なまなりさん』
執拗ないじめから死に追いやられた、婚約者から成る呪いと、もともと祟られる血筋にあった或る一家への呪殺霊による二重の祟りが描かれた話です。
自業自得とは言えども、ジワリジワリと年月をかけて迫りくる恐怖におののき、そして確実に壊されていく加害者たちの姿が伺えます。
それだけに留まらず、周りまでも巻き込んでいく、恐ろしい呪いの念には圧倒されてしまいます。
ここがポイント
読んだことを後悔してしまいそうになるほど、恐ろしい作品です。
5、『怪談狩り 市朗百物語』
現実世界の歪みから滲みだす恐怖と、拭いきれない恐怖を狩り集めた100話です。
全体的に「新耳袋」のテイストを継承しているので、ゾワッとする話が満載です。
実際にあった事件や事故に関する話もかなりあって、こんな時の事件(事故)では、やっぱりこんな怪異現象が起きているのかと納得してしまいます。
それは当時者でない限り、知り得ないことであり、より真実味が伝わってきて、余計に、怖くなってしまいます。
ここがポイント
百話ある怪談集を一晩で完読しようとすると、怪異が起こるというのは有名な話だそうです。
6、『怪談狩り 禍々しい家』
家や建物にまつわる怪談が、まとめられている話です。
どの話もはずれはなく、流石の中山氏の力量を感じさせてくれます。
淡々としすぎの気はしないでもありませんが、それはそれで「新耳袋」以来の持ち味として納得してしまいます。
また、話の中には異常に不穏なものも紛れていて、油断は出来ないし、ただ目玉は何と言っても「山の牧場」後日談シリーズにつきます。
ここがポイント
奇妙な建物など、何かワケありだと感じさせつつ、その正体さえ分からなくて、心霊的な何かが出てきてくれれば、まだしも納得できるのに、出てこないからこそ怖さが増幅してしまいます。
地縛霊が一番怖いかもしれません。
7、『怪談狩り 黄泉からのメッセージ』
日常に潜む小さな違和感や、怪異を丁寧に掬い上げた戦慄の怪談実話集です。
ここがポイント
ヒャッとする怖い話よりも、どこかしら温かくてホッとする話であり、不思議な存在が生きている者に何かを伝えようしているような内容です。
あの世とこの世をつなぐものは、一体何だろうかと思ってしまいます。
ほんのちょっとした隙間や、ふとした瞬間にどこからともなく聞こえてくる、和らかげで優しい囁きが心に響くのです。
それは不思議であり、嬉しくもあり、哀しくもあるのです。
8、『怪談狩り あの子はだあれ?』
日常の中にある怪異、妖怪、神隠し等、意味不明で理解不能な、うすら寒くなるような話を集めた怪談実話集です。
ここがポイント
幽霊が出ないのに、怖くて不思議な話が満載で、狐や狸、河童や天狗などの妖怪話や、はたまた異次元の不思議な話、土地や家、神社にまつわる怖い話など、いろいろな実話怪談が味わうことができます。
ライトな怪談話が中心の中では特に「友人への供養」、「不動産」、「神様の通る道」など得体の知れないものに生活を狂わされていくのが、本当に怖いと感じてしまいます。
最初から最後までワクワクしながら読める実話怪談です。
まとめ
中山市朗氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
さぞかし、怖がっていただけたと思います。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
そしてもっともっと、怖がっていただけたらと思います。