リズムを持って描く、森絵都氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
日本児童教育専門学校及び早稲田大学卒業後、アニメーションのシナリオ(映画「ブラックジャック」「エースをねらえ!」)などを手掛けていきます。
1991年に第31回講談社児童文芸新人賞を受賞した「リズム」という作品で作家デビューを果します。
また同作品で第2回椋鳩十児童文学賞も受賞しています。
森絵都おすすめ作品8選をご紹介~シュールで健やかな世界を描く~
それからも破竹の勢いで、数々の賞を受賞し、ついに「風に舞いあがるビニールシート」という作品で第135回直木賞を受賞します。
そして2007年には「DIVE!!」という作品が漫画家され、2008年には映画としても公開されました。
心掛けていることは、常に前と違うこと、新しいことを思って、創作活動をしているとのことです。
そんな森絵都氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
『リズム』
中一少女、さゆきの揺れ動く心を描いた話です。
周りの変化に翻弄されながらも、未来に向けて強く立ち向かっていく、中学一年生。
兄のように慕っている従兄妹の真ちゃんが大好きで、淡い恋心も抱いているようです。
ある日、真ちゃんの両親が離婚するのではないかという話を耳にして、さゆきの心は揺れ動きます。
大人になると忘れてしまう、中学時代の気持ちや宝物のような大切な瞬間を丁寧に描写しています。
ここがポイント
自分のリズムを忘れずに持ち続けることが大切だと分かる作品です。
『つきのふね』
中学生の主人公の周りで起きる出来事を通して、青春時代にふと感じるような不安定さを思い出させる話です。
親友のこと、将来のこと、ノストラダムスの大予言のことなど、全てひとまとめにして、生きることが中学生の視点で描かれています。
生きる実感が得にくい現在の世の中で、こうありたい自分、現実の自分、そうじゃない自分が突然目の前に現れて、どうしたらいいか分からないまま、その空気に流されてしまいます。
ここがポイント
お互いを拠り所に再生していく過程が、丁寧に描かれている作品です。
『カラフル』
自殺未遂した中三の男の子が、自分の人生を他人目線で、見つめてやり直していく話です。
前世で犯したある罪で、輪廻転生から外されてしまった魂でしたが、天使業界の抽選に当たり、僕は再挑戦のチャンスを得るのです。
そして、僕は中三の小林真としての生活を始めるのです。
人間生きていれば、良い事もそうでない事もいろいろあって、自分では気づかなくても、見方によっては、自分とは違う解釈をされていることさえあります。
でも折角の一度しかない人生なのだから、カラフルに彩って生きていきたいと思うのは当然な事なのです。
ここがポイント
そうです、そんな人生にするのもしないのも、自分次第なのですから、肩の力を抜いて、しなやかに強く優しく生きて行けばいいのです。
感慨深いものを感じてしまう作品です。
『DIVE!! 上・下』
シドニー五輪を目指し、赤字部門のスポーツクラブの飛び込み部門を存続させようとする話です。
飛び込みに青春をかける3人の少年、翌年に迫ったシドニー五輪を目指し、アメリカ帰りの熱血コーチが指導を行っていきます。
わずか1.4秒の滞空時間で演技を魅せる飛び込み競技、飛び込みについて全く知識がなくても、その世界に魅了されてしまいます。
ここがポイント
一人ひとりそれぞれが、いろいろな想いや葛藤を抱えて、それに向き合った生きている魅力的な人物達、そして胸を熱くするストーリー展開はかなり痺れてしまいます。
清々しくて、爽やかなスポーツ小説です。
『永遠の出口』
普通の少女、紀子の小学三年生から高校三年生までの九年間を綴った9編からなる連作短編集です。
今、思えば、何でもないようなことだなぁと思えることも、その当時は必死になって、新鮮な体験をしていたのです。
普通の女の子の普通な話なのですが、絶妙に自分のこころの中に入り込んできて、共感したり拒絶したりと、懐かしい気持ちを思い出させてくれます。
ここがポイント
価値観であるとか、小中学生時代の悩みとか、高校生の頃の初恋とかが、まるで走馬灯のように巡ってきて、頷きたくなります。
なんでもない自分の過去でしたが、その頃はいつもキラキラ輝いていたように思います。
『いつかパラソルの下で』
突然亡くなった厳格な父親が、実は浮気をしていたという話です。
厳格な父が亡くなった後に発覚した浮気、それを発端に三人の兄姉妹が、父の過去の秘密を探っていくのです。
そして三人は父の故郷の佐渡島へ行き、知らなかった父の人生を垣間見ることで、父への捉え方が変わっていくのです。
ショッキングな過去が明かされていくのかと思いきや、すごく共感できる身近な心境を感じ取ってしまうのです。
父は単に厳格者ではないことを、おとなしいと思っていた母は、小心者だと知っていたのです。
ここがポイント
親に責任を押し付けるのではなく、自分の人生は自分で切り開いていくものなのです。
『風に舞いあがるビニールシート』
大切な何かの為に、一生懸命に生きる人間を描いた6編からなる短編集です。
社会人6人の生き様を丹念に描いていて、彼らは皆、生きていく上で譲れないこだわり(執着)を持っているのです。
大切にしていることは、人それぞれに違い、それぞれの価値観を守りながら、時には我儘であり、屁理屈をこね、エゴイストとして描かれています。
ここがポイント
大切なものは一つであるとは限らず、その中で優先順位をつけることも難しいのです。
自分にとって大切なものは何だろうとあらためて考えさせられる作品です。
『ラン』
若くして家族を失った主人公、環(たまき)の話です。
独りぼっちになるのではなく、「あの世」に近づいていると思いながら生きてきたのです。
そして22歳の時の出会いが、その後の彼女の人生を変えていくのです。
家族を失って後ろ向きになっていた環が、走ることを通して元気になっていくのです。
ここがポイント
目標を持って行動すると、人は強くなり、未来を変えていけるのだということが実感できます。
前向きに頑張ろうという気持ちが、わきあがってくる作品です。
まとめ
森絵都氏の作品は楽しんでいただけましたでしょうか。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
きっとハマってしまうと思います。