ミステリーホラー界の新星が描く、澤村伊智氏の8作品をご紹介させていただきます。
幼少の頃より読書が大好きで、特に小学生なってからは、怪談やホラー作品に慣れ親しむようになったとのことです。
大学卒業後、出版社に入社するも2012年に退職して、フリーライターの道を歩むことになります。
この記事の目次
澤村伊智おすすめの8作品~新たなホラーブームを巻き起こす旗手~
2015年に澤村電磁として応募した「ぼぎわん」という作品で、第22回日本ホラー小説大賞の大賞を受賞します。
同年、同作品を「ぼぎわんが、来る」と改題して、小説家デビューを果たします。
その後の発表作品も評判を呼んで、日本ホラー小説界の期待の新星としてかなり注目されています。
そんな澤村伊智氏の8作品を刊行順に、ご紹介させていただきますのでお楽しみください。
1、《ぼぎわんが、来る》
比嘉姉妹シリーズの第一弾であり、澤村氏のデビュー作品で、”ぼぎわん“という得体の知れない妖怪のようなものに付け狙われる一家の話です。
そしてその一家を救おうとする、霊能者姉妹の活躍が描かれています。
全3章の構成になっていて、それぞれ異なる登場人物の視点で怪異を語っていく展開になります。
ココに注目
同じ状況の恐ろしさであるにも関わらず、視点が変わることで意識の比較ができて、違った見方の恐怖が味わえます。
怪談、都市伝説、民俗学等さまざまな要素を持っているホラー作品です。
2、《ずうのめ人形》
比嘉姉妹シリーズの第二弾であり、”ずうのめ人形“という都市伝説を聞いた人間は、人形に目玉を抉り出されて殺されるという話です。
まるでリングの貞子のように呪いが伝播していき、死人も出てしまうのです。
しかもその伝播の方法や、呪いの断ち切り方も不明のままなのです。
ココに注目
伏線の回収がとても鮮やかであり、ホラーというよりもミステリー的な面白さも味わえます。
特に今回の作品は、真相を探る道程やミステリー部分の魅力が際立っているので、ミステリー好きな方にもかなりおすすめです。
3、《恐怖小説キリカ》
ある作家がホラー小説の新人賞を獲得して、順風満帆な日々が続くと思われた矢先、妻と共に嫌がらせにあってしまう話です。
ココに注目
作家、澤村伊智が主役であり、フェイクドキュメンタリー風のような恐怖小説仕立てになっています。
どこまでが事実で、どこからが創作なのか、境界を見極めることも困難になってしまいます。
一体、澤村氏の頭の中はどうなっているのでしょうか。
今後の作品にも期待が膨らんでしまいます。
4、《ししりばの家》
比嘉姉妹シリーズの第三弾であり、夫の転勤先の東京で幼馴染に再会して、相手の家を訪問してみると、その家は不気味な砂が散る家であったのです。
ホラー的な表現よりも、喉が渇くような砂の表現が絶妙に描かれていて、読み障りの悪い文字選びが本当に秀逸であると感心してしまいます。
ココに注目
文章の配列にもかなり凝っていて、面白い配列が施してあり、予期せぬことが起きるような感覚に陥ってしまいます。
明らかに異様な空間の自宅へと平然と客を迎え入れる、笑顔の方が恐ろしくなってしまう作品です。
5、《などらきの首》
ココに注目
比嘉姉妹シリーズ初の短編集であり、6話構成になっていて、安定の面白さがそれぞれに味わえます。
澤村氏の”怪異"に対しての考え方や、表現のバリエーションの多さには驚いてしまいます。
最後の1行にゾクッとさせられる作品が多いですが、やはりタイトルの「などらきの首」が一番恐怖を感じてしまいます。
6、《ファミリーランド》
近未来の家族を描いた、6編からなるSF短編集です。
テクノロジーの力で変貌した家族の諸相をグロテスクで、やや誇張気味な設定で描かれていますが、どこか現在とも繋がっているようにも思えて、SFだからと笑い飛ばせない妙な迫力を感じてしまいます。
ここに注目
技術が世の中を便利にしようとした結果、人との繋がりが希薄になったり、逆に強くなりすぎたりするのは、不思議に思ってしまいます。
そんな中でも、最後にはその不気味さを見事に反転させて、今ある大切なことをきれいに描いて、終焉に持って行くところに、澤村氏の筆力を感じてしまいます。
今までのホラーとは少し異なった物語ですが、技がひかる作品です。
7、《邪教の子》
とあるニュータウンに越してきた不思議な家族は、新興宗教の信者だったという話です。
その新興宗教の信者である母親に、虐待されている少女を助け出そうとする子どもたちが中心の前半と、その新興宗教の真相に迫ろうとするテレビ局員の男性を主人公とした、後半の2部構成になっています。
前半のあちこちで感じていた違和感が、後半部分で解かれていく展開は、スリリングで興奮してしまいます。
ここに注目
細かな誤認トリックとか、気付かなかった部分もあり、さらに「邪教の子」とは誰を指すのかも、読むうちに変わっていく展開も面白く楽しめます。
いつものホラー要素はかなり薄いですが、カルトの不気味さやヤバさ、潜入もののハラハラ感が味わえる作品です。
8、《ひとんち》
不気味な雰囲気が堪能できる8編からなる短編集です。
どの話も現実ではあり得ないのですが、もしかして、もしかしたら、どこかで現実に起きた話かと感じてしまう位に、身近な話に思えてしまいます。
ここに注目
思わずスルーしてしまうほどの日常のささやかな違和感は、だからこそ、知らず知らずのうちに忍び寄ってきて、気付くと得体のしれないものに、背後を取られてしまっているのです。
怪異を直接に見せないチラ見せで、怖い雰囲気を盛り上げてくれる作品です。
まとめ
新進気鋭のホラー作家、澤村伊智氏の作品は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
斬新さを感じていただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
新しい恐怖を存分に味わってください。