自らの視点で時代を捉える、佐伯泰英氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、映画・テレビCMの撮影助手を経て、1975年からカメラマン及びノンフィクションライターとして活躍します。
1981年に「闘牛士エル・コルドベス1969年の叛乱」という作品で、ドキュメント・ファイル大賞を受賞します。
1987年には初の小説である「殺戮の夏コンドルは跳ぶ」を発表しています。
佐伯泰英おすすめ10選をご紹介~安心して読める時代小説を描く~
以後、多数の国際謀略小説やミステリー小説を発表し、1999年には初の時代小説である「密命」を送り出しています。
以降、たくさんの時代物人気シリーズを立ち上げ、「月間佐伯」の異名を取るほど、ハイペースで作品を発表する人気時代作家として知られています。
人間味あふれる人物造形、豊かな物語性など、高い評価を受け、読者の人気を博しています。
そんな佐伯泰英氏のおすすめの作品10選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、『密命(巻之一)見参!寒目霞斬り』
豊後相良藩、藩主から密命を帯び、密かに江戸入りした金杉惣三郎が切支丹本の究明にあたる話です。
剣の強さを隠してきた惣三郎が、藩に起こった事件を解決すべく、藩を抜け、江戸の市井の中で生活をしていくのです。
その生活の中で、札差やら、鳶やら、同心らと交友を結び、最後には事件を解決していきます。
しかし、藩主からの密命とは言え、脱藩の体裁を取っていたため、藩内からは裏切り者の扱いを受けてしまうのです。
ここがポイント
正統派の時代物であり、困難を切り開く賢さと、潔い武士の生き様を感じます。
時代小説ファンには見逃せない作品です。
2、『陽炎の辻-居眠り磐音江戸双紙 1』
居眠り磐音シリーズの第一弾であり、九州の関前藩中老の息子である、坂崎磐音が藩内騒動が元で自藩を離れ、江戸の深川六間堀で、浪々の日々を送る話です。
最初は磐音にとっては、気の毒な展開で始まるのですが、浪々の日々を送っていた磐音が、ひょんなことから、両替商の用心棒となり、幕府の屋台骨を揺るがす陰謀に巻き込まれていくのです。
ここがポイント
穏やかでありながら、颯爽と悪を斬り、自分の力は誇示せず、飄々としている姿が何ともカッコイイのです。
人を妬まない心の美しさ、折り目正しい背すじの伸びた武士らしい清廉さが漂ってくるのです。
読みやすく、情景が浮かぶ痛快な時代小説であり、なんと51巻まである作品です。
3、『沽券-吉原裏同心<10>』
吉原炎上後の仮宅営業が続く中で、茶屋の売渡しが続き、しかも元の主人夫婦が殺害される事件に絡む話です。
「沽券にかかわる」の沽券は直訳すると、土地や建物の権利書みたいなものであり、それをドサクサに紛れて、手に入れようとする悪人がいたのです。
吉原の危機と感じた会所の四郎兵衛は、神守幹次郎の助けを借りて、一連の事件の黒幕を追いかけていくのです。
ここがポイント
そして吉原乗っ取りの裏には、さる大名家の策謀が見え隠れしてきて、事件の全貌が段々と明るみにされていくのです。
痛快で楽しめる娯楽時代作品です。
4、『仇討-吉原裏同心<16>』
年明けの吉原で横行する集団窃盗事件と、吉原会所(吉原の奉行所)が仇討騒動に巻き込まれる話です。
年が明けた、「御免色里」吉原で、客の懐中物や花魁の櫛笄(くしこうがい)が次々に盗まれ、悪童たちの仕業と、さっそく捕縛に吉原裏同心の神守幹次郎があたっていきます。
しかし、その背後にはさらに大きな影が、ちらついていたのです。
ここがポイント
吉原に触手を伸ばす勢力に、幹次郎の剛剣がうなり、新必殺武器の小出刃が威力を発揮していくのです。
そして、一段落したと思う間もなく、仇討騒動が勃発してしまい、全てを知り尽くした、粋な計らいの「吉原裁き」に読後感も爽やかさを感じてしまう作品です。
5、『鉄砲狩り 決定版:夏目影二郎始末旅(八)』
幕府の練兵場から演習の最中に、最新の鉄砲十挺とカノン砲の設計図が盗まれ、夏目影二郎が探索に乗り出す話です。
川越への墓参りに行く途中に、探索し始めた影二郎が色々と探っていくうちに、どうやら川越藩の意志として動いているわけではなく、家老の家系につながる者が裏で糸を引いているのを突き止めてしまいます。
そんな中、一緒にいた若菜が拐かされてしまい、なんの情報もない影二郎はただ、情報が入るのを待つだけだったのです。
さらには、影二郎とは互いに助け助けられの関係できた、国定忠司も登場するのすが、段々と追い詰められ始めているのです。
ここがポイント
鳥居耀蔵との戦いも本格化してきて、ますます、面白くなっていくシリーズであり、次の展開が気になる作品です。
6、『剣と十字架-空也十番勝負 青春編』
今回は隠れキリシタンが居住する長崎県の野崎島が舞台で、異人剣士との戦いの話です。
未だ決着がついていない東郷示現流一派との戦いは、無益な戦いを避けた空也が五島列島へ逃れたため、ひとまずおあずけとなります。
しかし、執拗に示現流一派が迫ってくるに及び、空也はさらに列島の奥深くへと旅立つのです。
そして、そこには予想だにしなかった、サーベルを使う偉人神父との戦いが待っていたのです。
ここがポイント
ますます面白さを増していく、このシリーズ、舞台の描写や歴史も楽しめる作品になっています。
7、『異郷のぞみし-空也十番勝負 青春編』
今回は海を隔てて朝鮮を望む島が舞台となっていて、高麗剣法の達人との勝負の話です。
今作は登場しませんでしたが、空也は相変わらず、東郷示現流の一派に追われているので、無益な争いを避けるために、対馬、壱岐、平戸を巡り長崎に向かうのです。
ここがポイント
異国の剣も学んで、自分のものにしてしまうほどの柔軟さが、空也の強さの一端なのかもしれません。
また、このシリーズの面白さの一つに、江戸や関前藩のエピソードを挟み込んでくれるところが、何とも趣があって堪りません。
まだまだ続く修行の旅、無事を祈りつつ、次作が楽しみになります。
8、『飛躍 交代寄合伊那衆異聞』
シリーズの完結編であり、無敵で大人物の主人公、座光寺藤之助が一介の地方の下級武士から、旗本になり、世界に羽ばたく大商人になるまでの話です。
ここがポイント
日本の歴史の中でも、戦国時代に比肩するほどにヒーローが多く存在した幕末で、これだけの活躍をする人が討幕派の人間とほとんど関わらず、海外との交渉に夢をかけていたのです。
途中何故か、やけに強い剣豪との闘いが入り、半ば死を覚悟する藤之助のくだりがあるのですが、東方交易は新しい夜明けを迎えて新時代へと突入していくのです。
様々な意味で表題の通り「飛躍」の作品です。
9、『残花ノ庭-居眠り磐音江戸草子13』
今作は美人局事件の解決、隣長屋のおそめちゃんの失踪事件の解決、阿蘭陀から来た使者と医者に関する事件など盛りだくさんの話です。
磐音の果てしないお人好しさと、律義さに感動しながらも、おこんさんとの距離が縮まらずイライラするところも、また魅力の一つとなっています。
決闘シーンはほんの少しですが、緊迫感のあるこのシリーズの醍醐味とも言えます。
ここがポイント
更には関前藩にあっては江戸家老、ご正道にあっては田沼意次との対決も、避けられないものになっていき、今後の展開が楽しみになります。
10、『新酒番船』
丹波杜氏、長五郎の次男で蔵人見習の海次が、新酒番船に乗って大活躍する話です。
数ある灘の酒蔵の中で、いち早く江戸に届いた新酒が、向こう一年高値で取引される名誉が得られるのです。
そしてそのために使われるのが番船であり、途中の嵐や海賊を乗り越えるために、工夫を凝らした船と腕利きの船乗りが、勇壮な構想を繰り広げるのです。
ここがポイント
海次は秘めた想いを抱えながらも、性に合う船乗り、男として成長していくのです。
海に生き、愛される男たちの立ち振る舞いに心躍る作品です。
まとめ
佐伯泰英氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
数々のベストヒット時代物シリーズを創出している佐伯氏のエネルギーには、目を見張るものがあります。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
きっとハマってしまうと思います。