今までの価値観を覆す、村田紗耶香氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきます。
大学在学中に小説家を志し、「書く人はここで躓く!」という本を見つけ、その著者である芥川賞作家の宮原昭雄氏の教えを請いて小説の書き方の勉強をします。
そして、2003年「授乳」という作品で、第46回群像新人文学賞の優秀賞を獲得します。(デビュー作)
村田沙耶香おすすめ作品を10選ご紹介~従来の価値観を覆す~
その後も数々の文学賞の候補に挙がったりして、ついに、2016年に「コンビニ人間」という作品で芥川賞を受賞します。
日頃は、なるべく会社勤めの人と、同じ生活リズムで過ごしたいと思っているので、土・日は執筆活動をやらないそうです。
また、作家仲間からは危うさを感じさせるアンバランスさから「クレイジー紗耶香」と呼ばれているそうです。
そんな村田紗耶香氏のおすすめの作品を10選ご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、《授乳》
斬新で強烈な話が3編詰まった、短編集です。
ここがポイント
3話、全て女性が主人公であり、3人に共通するのは「依存」であり、「支配」なのです。
その女性たちは独自の世界の中を生き、他社との交わりを踏まえて、より自分の世界を強めていっているのです。
そして、主人公の女性たちに恐怖を覚えるものの、不思議と彼女たちの行動から目が離せなくなってしまっているのです。
急激な世界に飲み込まれそうになってしまう作品です。
2、《マウス》
小学校を舞台にした、女の子のグループが作り上げるスクールカーストの話です。
ここがポイント
スクールカーストの下の層に属する律と、最下層に属する瀬里奈の友情の話が描かれています。
周りの顔色を窺ってばかりいた律が、瀬里奈の自由さに反発しながらも、自分らしさに惹かれていく姿に共感してしまいます。
表面には現れない、二人の友情にほっこりさを感じる作品です。
3、《ハコブネ》
自らの性と生き方を模索していく、三人の女性の話です。
愛する人とのセックスに苦痛を感じる里帆、肉体感覚が分からない知佳子、そして女であることに固執しているような椿。
ここがポイント
三人とも現実的にいろいろ生き方を模索しているけれど、その方向が定まらず、葛藤しながら生きているのです。
不思議な感覚に陥ってしまいそうな作品です。
4、《しろいろの街の、その骨の体温の》
思春期の女性の心理や感性が、うまく描かれている話です。
小中学生の思春期の発達段階にある恋と息が、詰まったような学校生活をリアルに描いています。
ここがポイント
自分のことが好きになれなくて、人のことばかり気にしている主人公の女性の気持ちが伝わってきます。
少女から女性にステップアップする時の変化や、言葉だけではいい表すことができない感情。
思春期文学作品です。
5、《きれいなシワの作り方~淑女の思春期病》
じっくりと共感できて、少し切なくなりながらも、楽しめるエッセイ集です。
強烈な印象を残す、小説作品とは異なり、サービス精神タップリに本音を吐き出してくれる話です。
ここがポイント
アラサーの女性の悩みが良く分かり、基本的には笑いを誘うような描写にも楽しくなってしまいます。
自意識にまみれて、苦しくなった時に、薬のように効いてくる作品です。
6、《消滅世界》
人工授精で子供を作ることが定着し、夫婦間での性行為はタブーとされる世界になってしまう話です。
男性も妊娠可能となり、家族や恋愛の必要性がなくなってしまう世界が描かれています。
もしもこんな世界が普通にやってきたら、と想像するだけで、怖さが背中を這い上がってくる感じに襲われます。
ここがポイント
全くありえなくはない、世界のように思える作品です。
7、《コンビニ人間》
大学卒業後も就職しないで、ずっとコンビニでバイトを続けている36歳未婚女性の話です。
コンビニ店員という、マニュアル通りに仕事をすることにのみ、生きがいを感じる主人公の内面を描いています。
社会的に言われている「普通」が、主人公の女性にとっては、どうでもいいことで、その生きっぷりが爽快で面白く楽しめます。
ここがポイント
現代の社会には、いろいろな感覚の人がいると思える作品です。
8、《殺人出産》
普通の価値観では考えられない、心を揺さぶる4編を収録した短編集です。
10人産めば1人殺せる「殺人出産」、交際する単位が3人である「トリプル」、夫婦から性を排除した「清楚な結婚」、人生を閉ざす時期を個人で選択できる「余命」の4編になります。
ここがポイント
倫理観とか常識などが、根底からひっくり返ってしまうような話の連続です。
現代の常識を真っ向から否定しているような作品です。
9.《地球星人》
自分を宇宙人と思い込み、この地球で生き延びようとする少女の話です。
奇矯な家族から心身を守るため、自分のことを魔法少女だと思って生き延びようとし、妄想世界の星に憧れつつも、長じて地球という工場の部品になれるように、洗脳されることを望んでいきます。
地球星人として、既成概念を全て拒絶した先に待っていた「楽園」とは。
ここがポイント
主人公の置かれた環境の過酷さを浮き彫りにしている作品です。
9、《私が食べた本》
村田氏が今までに書いてきた、書評や文庫の解説、幼いころ好きだった本や、小説を書くきっかけになった本など、エッセイを収録した作品です。
村田氏は幼いころから空想癖があり、自意識に苦しめられていた彼女にとって、ものを書くことが自分を解き放つ手段だったようです。
ここがポイント
柔らかい言葉で表現されていますが、読書が本当に好きだということが鋭く伝わってきます。
一読に値する作品です。
まとめ
村田紗耶香氏の作品のご紹介はお楽しみいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
きっと、その世界にハマってしまうと思います。