ありきたりではない設定で物語を描く、城山真一氏のおすすめの作品7選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、2013年に「インター・プレイ」という作品で、第1回日本エンタメ小説大賞の最終選考に残るのですが、あえなく落選。
2014年にも「黒女神の条件」という作品で、第16回小学館文庫小説賞最終選考に残るも落選してしまいます。
しかし、あえて「インター・プレイ」を改訂した「国選ペテン師 千住庸介」で2015年に作家デビューを果します。
城山真一おすすめ作品7選をご紹介~人間ドラマを描写する~
そしてやっと、2015年に刊行した「ブラック・ヴィーナス投資の女神」(投稿時のタイトル:「ザ・ブラック・ヴィーナス」)という作品で、第14回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞します。
城山氏曰く、参考文献と取材で知り得たファクターを自分の中に注ぎ入れ、想像力で作品をどう構築していくのかという事が、小説家としての腕の見せ所だそうです。
そんなん城山真一氏のおすすめの作品7選をご紹介させていただきますので、お楽しみいただけたらと思います。
1、『国選ペテン師 千住庸介』
三章に分かれているペテン師の話であり、タイトルから想像してしまうのと違う出だしの一章から始まり、意外な登場人物の設定に興味を惹かれてしまいます。
二章以降にタイトルにもある、千住庸介の活躍する姿が、やっと登場してきます。
ここがポイント
鮮やかな手口、勝負の時のヒリヒリ感、驚きの展開と、面白さの源泉は十分に描かれています。
物語りの展開も早く、読み易い文章なので、なかなかのエンターテインメント作品です。
城山氏のデビュー作です。
2、『天才株トレーダー・二礼茜 ブラック・ヴィーナス』
天才トレーダーである仁礼茜と、彼女に依頼したある一件が縁で、彼女の助手となった百瀬良太による経済系のミステリです。
訳ありでお金に困っている人に対し、希望額まで投資でお金を増やしてくれるという黒女神の仁礼茜。
相手に求めるその報酬は、依頼者の覚悟を試すギリギリを要求するのです。
そんな彼女に振り回せされつつも、ドキドキしながら支えていく良太とのコンビバランスも絶妙に、描かれています。
しかしそんな常勝な彼女にも、低迷期のようなものもあり、人間的な魅力も感じてしまいます。
ここがポイント
株取引を焦点に当てた斬新なミステリーであり、登場人物のキャラもたっていて読み応えのある作品です。
3、『仕掛ける』
株取引の天才である仁礼茜と、その上司となった百瀬良太が経営危機に陥ったバイオベンチャー企業を救う為に奮闘する話です。
内閣金融局の秘密部門に所属する、天才トレーダーの仁礼茜とその上司、百瀬良太は支援会社から支援の打ち切り、銀行からも融資引き上げにあるバイオベンチャー企業に向かいます。
仁礼茜が自らを賭して、相場勝負するシーンは、リアルな描写で引き込まれてしまい、専門知識についても読者を置き去りにしない丁寧な説明がなされています。
ここがポイント
またダイナミックなストーリー展開にも大きなメリハリがあり、登場人物一人ひとりの心情がリアルに描かれていて、それぞれの持つ人間臭さと、読み終えた余韻がとても惹きたてられます。
株取引経験の有無にかかわらず、楽しめる作品です。
4、『看守の流儀』
石川県、加賀刑務所を舞台に、刑務官らが直面する問題発生から解決までを描いた5編からなる連作短編集です。
受刑者と刑務官たちの熱い想い、葛藤、矜持などが描かれていて、どの話もラストは救いがあり、後味が良くなっています。
全ての話に登場する、警備指導官、火石司は鋭い観察眼と明晰な頭脳を持っていて、彼の起こす行動は「火石マジック」と呼ばれているのです。
ここがポイント
予想していたような暗い内容ではなく、むしろ受刑者の更生と幸せを願ってひた向きに、取り組む悩み多き刑務官と、一人ひとりの受刑者とのふれあいを描いた、心温まる人間ドラマ作品です。
※警察小説の第一人者の横山秀夫氏も大絶賛作品です。
5、『相続レストラン』
訳ありで、元税理士のウェイターの冬木が、来店した客の相続の相談に乗る「グリル・ド・テリハ」というレストランの話です。
料理人は元司法書士、皿洗いは元刑事で、店を回しています。
この3人が美味しい料理を振舞いながら、持ち込まれる難題を冬木を中心に解決に導いていくのです。
オーナーの友人の相続問題を解決すべく知恵を絞る物語であり、ある種のお仕事小説です。
ここがポイント
相続というのは一つの正解がある訳ではなく、関係する人たちの利害関係や、思惑の上で、法律から外れない範囲で皆が納得する落としどころを探していくという行為だと気付かされてしまいます。
美味しい料理が、人の記憶や心を癒したり、感情をほぐしたりもして、トラブル解決の一助にもなっている作品です。
6、『ダブルバインド』
駐在署員が殺害された事件を発端に、詐欺事件、轢き逃げ事件、過去の少年犯罪が描くループは、やがて警察内部の隠蔽体質や比
留刑事課長自身の進退、家族の問題へも発展していく話です。
金沢東部署刑事課長の比留の妻が病で命を落とし、一人娘は不登校に陥った挙句、家を飛び出してしまいます。
さらに仕事でも強盗犯を取り逃がす失態を演じた比留は近々行われる人事で、左遷されることが決定的となったのです。
度重なる不運で失意の中にいる比留の耳に、管轄内の交番が襲撃され、交番駐在員が撲殺されたという一報が入ります。
比留は取り逃がした強盗犯による犯行だと、あたりをつけるのですが、、、、。
ここがポイント
真実より体面を優先する組織が、陥りがちな負のループと、娘の出生の秘密が、骨の髄まで、比瑠を追い詰めていくのです。
長いものに巻かれることを良しとしない結末に、地獄の先にある希望が見える作品です。
7、『看守の信念』
「看守の流儀」の続編であり、今作も5編からなる連作短編集になります。
今作は受刑者への対し方よりも、刑務官個人の性(さが)や自分自身への諭し方の部分が、印象強く描かれているようです。
勤務中も頭の中を占める私的な悩み、表面は平静を装っても、細かなところで粗が出てしまうのです。
社会的立場からなる上下関係、受刑者に見られるような弱さは、火石自身にもあるのです。
ここがポイント
公を務めながら、どこまで気張れるか、はたまた折れてしまうのか、人間らしさを伺える一面もあります。
こういうミステリーもあるのかと思ってしまう作品です。
まとめ
城山真一氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非、この機会に読んでみて下さい。