数あるの京極夏彦氏著作の中から、選りすぐったおすすめの作品15選をご紹介させていただきます。
京極氏の作品は怨霊や妖怪をテーマとしたものが多く、それらをストーリーにうまく織り込んでいるのが特徴です。
また、妖怪研究家としても知られていて、世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員も務めていることでも有名です。
京極夏彦おすすめ15選をご紹介~人間の心に潜む怪異を描く~
「姑獲鳥の夏」という超長編でデビューを果たすのですが、その経緯がまた面白いのです。
バブル崩壊後、経営していたデザイン会社も思わしくなく、ゴールデンウィークなのに出かける金もない。
せめて、紙代とインク代くらいになればいいと思い、1年余りで書き上げた「姑獲鳥の夏」を出版社に持ち込んだところ、すぐに書籍としての発売が決定したとのことです。
その後はあれよあれよという間に、各出版社からの執筆依頼が殺到したことはいうまでもありません。
そんなきっかけで、誕生した不世出の作家、京極夏彦氏おすすめの作品15選をご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。
1、『姑獲鳥の夏』
二十箇月身籠る妻と、密室から消えた夫の謎を解く京極堂(拝み屋の中禅寺秋彦が営む古本屋)の百鬼夜行シリーズ第一弾です。
自分たちの住んでいる世界の認識から始まり、妖怪や民俗学までを読みやすく解説しています。
ここがポイント
奇々怪々とした雰囲気や展開の中で、日常と非日常をうまく結合させたストーリー展開は秀逸です。
超長編ですが、読み応えのある達成感が味わえる作品となります。
2、『魍魎の匣』
百鬼夜行シリーズ第二弾となります。
「はこ」に憑りつかれた人々、そして空のはこを満たすために求めたものは、愛する娘であったり、永遠の命であったり、はたまた魍魎だったりと様々なのです。
ここがポイント
父と娘、夫婦、友達の関係がふとしたきっかけで、殺人を含んだ狂気に変貌していくのです。
妄執に囚われてしまった人間の非業を、克明に表現している作品です。
3、『狂骨の夢』
百鬼夜行シリーズ第三弾となります。
二人の女性が髑髏にかかわる人々に翻弄されて、悲劇的な人生を送るストーリーで物語は進んでいきます。
いつもながらの宗教とか脳科学、はてはフロイトやユングまで絡めた、重厚で奥深い話の連続となります。
ここがポイント
類似した複数の事件が同時進行で描かれていて、関係がないように見えているのですが、最後には一つに収束していくのです。
長編ですが、ページをめくる手が止められない作品です。
4、『鉄鼠の檻』
百鬼夜行シリーズ第四弾となります。
雪に閉ざされた禅寺で起きた僧侶の連続殺人に、京極堂が挑んでいきます。
禅宗の歴史や膨大な知識が盛り込まれていて、禅宗の中身がなんとなく理解できます。
ここがポイント
知識と魅力的な登場人物をうまく絡ませながら、ストーリーが展開しているので、飽きることなく読むことができます。
別世界にいるような感覚が、味わえる作品です。
5、『絡新婦の理』
百鬼夜行シリーズ第五弾となります。
家・伝統・男女の関わりといった要素を絡めて事件の中心にいる、蜘蛛に迫っていくのです。
複数の人物の思惑により発生した複数の事件が関連して、偶然が重なった結果、更なる悲劇が連鎖的に起きたように、見えかくれするのです。
ここがポイント
最初にエピローグが記されていることによって、新事実が発覚していき、そして再び最初に戻る構成になっているのです。
まさに絡新婦(じょろうぐも)の理にかなっている作品です。
6、『嗤う伊右衛門』
4世、鶴屋南北作の「東海道四谷怪談」の愛憎渦巻く話を見事に純愛物に仕立て変えた、気高く美しい京極版の四谷怪談となります。
岩と伊右衛門、お互いを思いやるが故に、すれ違いが生じ、闇にのまれていくのです。
ここがポイント
意思疎通の欠落による顛末となりますが、それ以上に生きざまの美しさに包まれてしまいます。
古典的怪談をこんな風に作り変えられる京極氏の技に、感心してしまいます。
7、『巷説百物語』
妖怪の仕掛けで悪を始末する輩を描いた、7編からなる連作短編集となります。
昔から語り継がれている怪談に模して話は進行していき、擬古文なのですが、大変分かりやすくテンポよく読むことができます。
成敗される悪人の悪辣ぶりがひどく、特に女や子供が犠牲になる話が多くて、辛く感じてしまいます。
ここがポイント
少し変わった表現で描かれる、勧善懲悪作品です。
8、『どすこい』
有名作家の有名作品を果敢にパロディ化している、相撲ギャグで構成された連作短編集です。
ここがポイント
京極氏には珍しく、かなり砕けた作品で、それぞれの話に別の京極氏が作者及び登場人物として、現れるのです。
くだらなさも、メタさ具合もここまでくると、天晴というほかはないです。
京極氏もニタニタしながら、この作品を執筆していたと思います。
9、『覘き小平次』
幽霊役者の小平次を中心に描いた、愛憎と狂気の群像劇となります。
子供の頃、遊んだように小平次は押し入れから、ただ外の世界を眺めているのです。
ここがポイント
全体的に暗く淡々とした雰囲気が漂い、小平次は押し入れの中で死んだように生き、ただ覗いているだけなのです。
見方により様々な解釈ができる、すこし奇妙ですが、完成度が高い傑作です。
10、『陰摩羅鬼の瑕』
嫁いだ花嫁の命を次々に奪っていく、白樺湖畔にそびえ建つ洋館「鳥の城」の話です。
犯行が可能なのは、その洋館に住む伯爵ただ一人なのですが、何故かその可能性がことごとく否定されてしまうのです。
だったら一体誰が、犯行に及んだというのでしょうか。
ここがポイント
時間や生死の問題等、様々な思惑が展開されていて、揺さぶられるような衝撃を受けてしまいます。
もの悲しさが突き刺さる、作品です。
11、『豆腐小僧双六道中ふりだし』
豆腐小僧という、愛らしくて天然ボケな妖怪の珍道中の話です。
豆腐小僧は豆腐をのせた盆を手に、自らの存在理由を求めて、旅をするのです。
妖怪は自らの意志では動かず、人の心に反応して現れるのです。
ここがポイント
人は訳の分からないことや、理不尽な出来事に対しても、進まなければ生きていけないのです。
近代化と共に、失われつつある日本人の心とは何かという深遠なテーマも、映しだされているように思います。
大変楽しくなって、豆腐小僧に愛着が湧いてしまう作品です。
12、『厭な小説』
厭な気持になってしまいそうな話が、7編が収録された短編集となります。
ここがポイント
コメディ要素が強くて、不快感もすごくありますが、京極氏の厭なものへの発想力が強すぎて、逆に笑いになってしまうのです。
よくもまあこんなに厭なことばかり書けたもんだなあと、つくづく思います。
読むのも嫌なのに、何故だか途中で止めることもできないのです。
京極氏の頭の中は、一体どうなっているのでしょうか。
13、『死ねばいいのに』
主人公のケンヤが、殺された女性のアサミについて、彼女の関係者に話を聞きに行くといった話になります。
ひとつの事件に焦点を置いて、複数の視点から見ることで、人間の多面性に目を向ける捉え方に魅力を感じてしまいます。
ここがポイント
人間は我が身可愛さのあまり、自分に満足しない生き物のように思えてしまうのです。
とても不思議な感覚に陥ってしまう作品です。
14、『虚言少年』
嘘吐きのケンゴ、素直なホマレ、詭弁の多いキョーノのおバカな小学生たちから見た、社会風刺のような話です。
3人の絶妙なメンバーにより繰り広げられる、くだらない会話や思惑が笑いを誘ってくれます。
ここがポイント
子供の頃、保身に走ったり、虚栄を張ったりとかの感覚が蘇るようなストーリーで、何かしらの懐かしさを覚えてしまいます。
小学生の頃に戻って、ケンゴ達と遊んでみたくなる作品です。
15、『ヒトごろし』上・下
幼い日に見たある光景が忘れらなくて、土方歳三は人斬りの道を歩んでいくのです。
そして新選組という組織を利用して、標的に狙いを定め、自分の欲望を満たしていったのです。
ここがポイント
新選組が敵よりも味方をより多く殺してきたことに着目して、土方を「人外」として描いているのです。
京極氏にしか書けない激動の明治維新が臨場感たっぷりに堪能でき、武士の存在と革命に対する冷めた解釈が、とても面白く描かれています。
甘く切ない思いが後を引く作品です。
まとめ
京極夏彦氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
何か違う世界に連れていかれるような、不思議で不気味な感覚になったと思います。
まだ読んでいない作品等ありましたら、是非この機会に読んでみてください。
現実とは違う世界が、存分に味わえると思います。