新進気鋭のミステリー作家、辻堂ゆめ氏のおすすめ8作品をご紹介させていただきます。
東京大学法学部に在学中に「夢のトビラは泉の中に」という作品で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞します。
のちに同作を「いなくなった私へ」と改題し、小説家へのデビューを果たします。
大学卒業後は作家と会社員という二足のわらじで、活動を続けていくのですが、結婚を機に作家に専念します。
辻堂ゆめのおすすめ8作品をご紹介~120%のパワーで執筆~
帰国子女作家であり、中学1年生から高校1年生までの4年間、父の転勤でアメリカに滞在していたのですが、インターネットで日本のドラマを観たり、日本の音楽を楽しんでいたようです。
幼いころから作家になりたいと思っていたようで、「読み終わた時に、心に温かいものが残るような作品を書いていきたい」いう信念をもとに執筆しているようです。
そんな信念を持って描いた、辻堂ゆめ氏のおすすめの作品をどうぞお楽しみ下さい。
1、『いなくなった私へ』
ある朝、ゴミ捨て場で目覚めた人気シンガーソングライターの上条梨乃。
ここがポイント
街頭ビジョンでは自分が自殺したニュースが流れていて、自分の周りの人は生きている梨乃に気づかないのです。
そんな時出会った大学生と、少年が唯一彼女を認識でき、3人でその現象の謎に迫っていきます。
現実離れしたストーリーですが、辻堂氏の筆力に引き込まれ、中弛みすることなく最後まで楽しめます。
読後感のスッキリする作品です。
2、『コーイチは高く飛んだ』
体操界で期待の星であるコーイチ、そのコーイチの妹が階段から転落し、植物人間状態になってしまうところから、コーイチの全ての歯車が狂いだしてしまうのです。
ここがポイント
それでも、コーイチは度重なる不幸に立ち向かい、事故の疑問を追求していくと、想像を超える展開が待ち受けていたのです。
体操シーンもすごく丁寧に描かれていて、スポーツ選手の心情も臨場感たっぷりに伝わってきます。
切ないけど、温かい気持ちになれる作品です。
3、『あなたのいない記憶』
大学で約10年ぶりに出合った2人が、子供時代の記憶が、全く違うことになっていることに気づいていく話です。
ここがポイント
虚偽記憶によって記憶が書き変わっていた二人、そうなんです人の記憶とは曖昧なものなのです。
終始緩やかであったストーリーが、終盤にかけて段々と加速していくあたりが、一番の読みどころになります。
あなたの中にも『虚偽記憶』が、眠っているかもしれませんね。
4、『悪女の品格』
小学校時代の同級生たちに、三股をかけて貢がせている女、めぐみの話です。
ここがポイント
小学校の頃、めぐみがある男子をターゲットとしていじめていたのですが、その手口と同じ内容の復讐を受けることになってしまうのです。
めぐみがいじめていた本当の理由が分かった時、なぜだか憎めない気持ちになってしまいます。
加害者と被害者について、いじめをあらためて考えさせられてしまう作品です。
5、『僕と彼女の左手』
僕と彼女の運命の出会い、そして12年後の再会の話です。
事故によってトラウマを抱えた医学生の僕と、右手が動かず、左手だけでピアノを弾く彼女。
ここがポイント
二人の出会いの真実が分かった時、感動の渦に巻き込まれてしまいます。
爽やかに吹く風のように、ストーリーは穏やかに展開していきます。
優しい気持ちにしてくれる作品です。
6、『片想い探偵 追掛日菜子』
女子高生探偵が活躍する、5編からなる連作短編集です。
ここがポイント
女子高生、日菜子は自分が推しと決めた相手は、とことん調査して追いかけるというストーキング体質だったのです。
しかしその相手は、ことごとくいつも事件に巻き込まれてしまい、それを日菜子が解決していくという流れになります。
事件自体も殺人や誘拐、はたまた爆破事件等バラエティーに富んでいるので、飽きることがありません。
笑える作品であり、辻堂氏の違った一面も味わえる作品です。
7、『あの日の交換日記』
教え子と交換日記をする小学校の先生、その交換日記を軸に、患者と見舞客、姉と妹等、7編からなる連作短編集です。
本人を目の前にして話すことには躊躇しても、文字として書けば抵抗はかなり薄れるものなのです。
交換日記にはそんな側面もあって、思いもかけない本音を聞くことができるかも知れないのです。
ここがポイント
各章ごとに読者をミスリードさせ、さらに最終であっと言わせる構成は、流石にお見事という他はありません。
思わぬところで縦や横につながりがあり、終盤で全てのピースが嵌る構成になっていて、ちょっぴりミステリしていて楽しめる作品です。
8、『答えは市役所3階に 2020心の相談室』
市役所に開設された「2020心の相談室」で、心理カウンセラーの晴川と正木がコロナ禍での悩みの相談に乗る5編からなる連作短編集です。
新型コロナで行動制限が一番厳しかった2020年は、常識が覆され、人生が狂ってしまった人も多かったのです。
そんなコロナに傷ついた人たちが吐露した不安や苛立ちを聞いた市役所の心理カウンセラーが、そこに含まれる矛盾や嘘を見抜く「心の推理」が視点となり展開していきます。
二人のカウンセリングを受けて、相談に来た人の殆んどは心癒されて、前向きな人生を歩み始めるのですが、、、、。
ここがポイント
しかしたとえカウンセリングだとしても、人は心の奥底までは、見通すことは出来ないのです。
それを晴川さんが名探偵の如く推理して、相談者の真実を導きだしていくのです。
コロナがこんなにも、人の人生を狂わせてしまったことをひしひしと感じてしまう作品です。
まとめ
辻堂ゆめ氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、この機会に是非読んでみて下さい。