欲望のままに描く、小川洋子氏のおすすめの作品12選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、就職、そして2年後に結婚をし、そのころから小説の執筆に取り組んでいきます。
1988年、大学の卒業論文として提出した「情けない週末」を書き直し、「揚羽蝶が壊れるとき」という作品を再度投稿し、海燕新人文学賞を受賞します。
小川洋子おすすめ作品12選をご紹介~書きたい欲望に素直に従う~
それからも精力的に創作活動を行い、1991年に「妊娠カレンダー」という作品で第104回芥川賞を受賞します。
その後の小川氏の活躍は目覚ましく、各文学賞を軒並み受賞し、2007年7月からは芥川賞の選考委員も務めています。
また、プロ野球、阪神タイガースのファンとしても有名で、甲子園球場までよく試合を見に行くそうです。
そんな小川洋子氏のおすすめの作品12選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、『完璧な病室』
小川氏のデビュー作を含む、冷たくて、綺麗で、静かな4編からなる短編集です。
どの作品も静かな文体で描かれていますが、ドロドロとした不気味さやグロテスクなものが溢れ出てくる感覚に陥ってしまいます。
ここがオススメ
優しさと残酷さを兼ね備え、そのまま受け入れることで、自分の内なる世界が広がるように感じてしまいます。
静謐さと透明感のある作品です。
2、『冷めない紅茶』
透明感のある、文体で描かれた、静謐な2編からなる中編集です。
二作とも、自分の日常が分からないまま、過ごす姿が描かれていて、時がその場で凍りついてしまったかのような閉塞感があります。
どちらの作品の主人公も自分では、どうしようもできない現状にもがいている姿が、痛々しく綴られています。
ここがオススメ
切ない男女の空気を感じてしまう作品です。
3、『妊娠カレンダー』
静かな恐ろしさを綴った3編からなる短編集です。
それぞれ、怖いと思うような強烈さはありませんが、読んでいると、心がざわざわしてしまいます。
どの話も一人称で語られていて、どこか違う場所で起こっているかのような、現実味のなさがあります。
ここがオススメ
一見穏やかで何気ない文章のはずなのに、どこかに暗さや、寂しさ、そして不気味さが隠れているのです。
リアリティに溢れた身震いするような作品です。
4、『薬指の標本』
淫靡で危うい世界観が漂う2編からなる話です。
話は2つとも現実にはあり得ない設定ですが、いつの間にか夢と現実の境界から曖昧な世界へと引き込まれてしまいます。
ここがオススメ
切なさと静けさと痛みの入り混じった描写が素晴らしく、静謐を堪える絵画のような美しさを感じてしまいます。
不思議な世界観が感じられる作品です。
5、『ホテル・アイリス』
ある一人の少女の目に映らないほどの、些細な夢や失望が克明に描かれている話です。
ここがオススメ
端正で静かな文章から、繰り出されるフェティシズムに圧倒されてしまいます。
母親の拘束から密かに逃れ、密会という罪を犯す少女と、暗い過去を背負い、優しさと激しさの二つの側面を持つ老人翻訳家の表には出せない、ふれあいが描かれています。
妄想が膨らみ、不思議な世界へ連れていかれるような作品です。
6、『寡黙な死骸みだらな弔い』
全ての作品がリンクしている、死と弔いに纏わる11編からなる連作短編集です。
どの作品も死とつながり、グロテスクな表現もありますが、不思議と血生臭さは感じません。
現実にありそうであり、もし現実にあったら、あまりにも恐ろしくて、逃げようと、もがいてしまうのではないかと思います。
ここがオススメ
見えない何かに言い寄られて、もう少しで逃げ切れると思ったら、捕まってしまうそんな作品です。
7、『偶然の祝福』
リアルで切なく、そして味わいのある、7編からなる連作短編集です。
作家の主人公が、かっての友達や、伯母や、若くして亡くなった弟等、自分の周りの人を語っています。
ここがオススメ
冷静な面持ちで、懸命に生きる人の強さや、優しさ、悲しさを感じてしまいます。
普通の日常とは思えない、不思議な仄暗い雰囲気の作品です。
8、『博士の愛した数式』
ここがオススメ
老数学者と母子が数学を通して慈愛を深めていく話です。
事故に遭い、80分しか記憶が持たない博士と呼ばれる老数学者は、多くのことを数学に例えていきます。
博士にとっては大きなハンデがあるにもかかわらず、日々の生活の中で相手を思いやることで、充実感や幸福感が得られることを教えてくれます。
非常に美しく、優しい印象を受ける作品です。
9、『海』
静謐で妖しく、少し奇妙な話を綴った7編からなる短編集です。
架空でありそうでない職業や、紹介される楽器がどんなものかと、想像が膨らんでしまいます。
ここがオススメ
静かで不思議な世界なのですが、現実の世界と何か繋がりがあるようにも、感じてしまいます。
包み込まれるような愛情に満ちた作品です。
10、『物語の役割』
小川氏自らが、小説を書く過程を綴った話です。
物語を作り出すのに具体的に自身の作品を例に挙げて、どのように想像を広げていったのかが描かれていて、分かりやすく解説されています。
実際に語りかけるような口調なので、読みやすく、共感しながら読み進めていけます。
ここがオススメ
小説が生まれる現場を垣間見た気分になれる作品です。
11、『猫を抱いて象と泳ぐ』
リトル・アリョーヒンと呼ばれた、天才チェスプレイヤーの数奇な人生を綴った話です。
ここがオススメ
詩的センスを駆使して描かれる、盤上の戦いは、静かで美しくもあり、感動モノです。
少し不思議で残酷な設定もありますが、決して不快な気持ちにはなりません。
心が洗われる清々しい作品です。
12、『口笛の上手な白雪姫』
小川氏独特の切り口で、いろいろな味わいが楽しめる、8編からなる短編集です。
名前のない登場人物たちが織りなす、少し不思議な世界観が味わえます。
ここがオススメ
そして、可憐さと残酷さを落ち合わせた静謐な物語が堪能できます。
何か心の中にすーっと沁み込んでいくような作品です。
まとめ
小川洋子氏の作品はいかがでしたでしょうか。
その独特の表現に浸っていただけると思います。
まだ読んでいない作品があれば、是非この機会に読んでみてください。
病みつきになってしまうかもしれません。