元弁護士の深木章子氏のおすすめ作品10選をご紹介させていただきます。
深木氏は東京弁護士会所属の弁護士でしたが、60歳で弁護士をリタイヤして執筆活動を開始します。
そして、2010年に「鬼畜の家」という作品で、第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し小説家デビューを果たします。
深木章子おすすめ作品10選をご紹介~絶妙な緊張感を描写する~
深木氏の作風としましては、執筆活動をする前に、弁護士をしていた経歴から、法律の専門的知識が謎解きに、絡んでくる作品が多く見受けられます。
しかし、最近の傾向としましては、本格ミステリーでありながらも少し傾向の違う作品を、年に1~2冊ペースで発表しています。
そんな深木章子氏のおすすめの作品を10選ご紹介させていただきますのでお楽しみください。
《鬼畜の家》
インタビュー形式で少しづつ、解き明かされていく家族の歪んだ姿の話です。
保険金支払いがきっかけで、元刑事の探偵が調査に乗り出していき、異様な家族の関係が浮き彫りになっていきます。
ここがポイント
そしてその家族に巣食っていた、真の鬼畜とは何だったのかが判明していきます。
後半の謎解きは予想もできなかった展開で、楽しませてくれます。
人間の醜い心理を描いている作品です。
《衣更月家の一族》
自分の夫が姉を殺したことを警察に通報するところから話は始まります。
単純な事件と思われたのですが、その裏に隠された、3つの殺人事件が、一つの過去に結びついていきます。
ここがポイント
なんの関係もなさそうな3つの殺人事件に、血筋が絡み、金銭までもが絡んで、人間の浅ましくて汚い姿が浮き彫りにされていきます。
タイトルの意味が最後に分かる作品です。
《螺旋の底》
半世紀前のフランスの片田舎のお屋敷が舞台で、秘密を持った夫婦のお互いの視点で交互に語られる話です。
住んでいるのは、復讐を目論む新妻と淫靡な享楽に耽る夫。
ここがポイント
夫婦それぞれの思惑という、見えないけれども、螺旋階段の底で重なった時、驚愕が溢れでます。
緻密に計算された作品です。
《殺意の構図 探偵の依頼人》
放火殺人の冤罪事件を皮切りに、関係者が次々に不審死を遂げていく話です。
誰が真実を知っているのか、誰が偽りの行動をとっているのかが分からない。
ストーリーも語り手が変わりながら、進んでいく形式なので、新たな疑惑が持ち上がってきて、展開から目が離せません。
ここがポイント
登場人物たちの殺意が複雑に絡み合った作品です。
《敗者の告白 弁護士睦木怜の事件簿》
春休みに別荘のベランダから妻と息子が連絡死した事件で、その夫が容疑者とされる事件の話です。
さらに1か月前にも、2歳の娘が風呂場で溺死するという、不幸があったばかりだったのです。
そしてさらに、亡くなる前に、妻と息子がメールという形で手記を残していたのです。
ここがポイント
登場人物に全てを語らせる手法が味わえる作品です。
《交換殺人はいかが?じいじと樹来(じゅらい)とミステリー》
トリックがギッシリ詰め込まれた、6編からなる珠玉の短編集です。
推理作家志望の小学生の孫が元刑事の祖父の話を聞く、安楽椅子探偵ものです。
密室、超自然現象、ダイイングメッセージ、交換殺人、双子、見立て殺人と殺人の方法がいっぱい詰まっています。
ここがポイント
あらゆるミステリーの要素が盛りだくさんの作品です。
《ミネルヴァの報復》
夫の浮気相手に対し、起こした損害賠償請求で、巨額の慰謝料を手にした妻が殺される話です。
そして、間もなく、その夫も殺されてしまう。
単独殺人ではなく、関係者が次々に殺されていき、謎はますます深まっていきます。
ここがポイント
主人公の弁護士は徐々に真相に迫っていくのですが、思いもよらぬ犯人に大きな決断を迫られることとなります。
弁護士業界のことが良くわかる作品です。
《猫には推理がよく似合う》
弁護士事務所に飼われている、しゃべれる猫が架空の殺人事件を創作する話です。
猫と事務員の作り上げるミステリーは、まさしくミステリー小説が誕生する過程のように見えてしまいます。
ここがポイント
前編部分と後編部分の内容の落差が凄まじく、ずっしりとした読み応えがあります。
少しほろ苦さが残る作品です。
《消人屋敷の殺人》
切り立った崖の上に建つ、覆面作家の館で次々に人が消える話です。
いわゆる「館」ものであり、嵐によって閉じ込められた、崖の上の館で起きる、不可解な出来事です。
ここがポイント
一見、クローズドサークルもののように、終盤で事件の真相が明らかになったと思いきや、さらにその後の展開が待ち受けているのです。
様々な意味で騙される作品です。
《消えた断章》
10年前に起きた、2つの奇妙な誘拐事件の被害者、断片的に記憶をなくした少女と白骨死体で見つかった少年の話です。
じいじと樹来とミステリーシリーズの第二弾であり、第一弾では小学生だった樹来が大学生になっています。
ケリがついたはずの事件の捜査に再び、警察が動き出し、もう一つの不思議な誘拐事件の真相に挑んでいきます。
ここがポイント
思いつかない結末の作品です。
まとめ
深木章子氏の作品はいかがでしたでしょうか。
晩年にて、文壇デビュー、しかしその筆力は素晴らしいものがあります。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。