背すじにゾクッとくるミステリーを描く、今邑彩氏の作品10選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、一時会社に勤めていたのですが、1989年に「卍の殺人」という作品で東京創元社の企画である〈鮎川哲也と十三の謎 十三番目の椅子〉後の鮎川哲也賞の最優秀作品に選ばれたのをきっかけに、作家デビューを果たします。
主にミステリーとホラーを両輪とした作品を発表していて、ミステリーでは国内の女性ミステリー作家の中でも、本格ミステリー度の高い作風で知られています。
今邑彩おすすめ作品10選をご紹介~ミステリーとホラーの融合~
ミステリーとホラーを融合させて、ホラー的な謎にミステリー的解決を与えるものや、逆にミステリー的解決の後に、ホラー的なオチをもつ作品も得意としていました。
さらなる活躍が期待されていた同氏ですが、2013年、3月に自宅で病気のために亡くなっているのが発見されます。
享年57歳、あまりにも若く寂しい孤独死でした。
そんな今邑彩氏が残した作品を刊行順に、10選ご紹介させていただきますのでお楽しみください。
1、『金雀枝荘の殺人』
6人が殺害された呪われた館「金雀枝荘」に、再び3人の生き残りの人間が訪れたところから恐怖が始まるのです。
真相を探るべく金雀枝荘に集まった生き残りたちに、再び忍び寄る戦慄の恐怖。
ここがポイント
後からヒタヒタと迫ってくるような恐怖感と、気味の悪さを感じてしまいます。
最後まで読んで最初に戻って読み直すと、ああそうかと納得して、さらにゾクッとしてしまいます。
2、『時鐘館の殺人』
皮肉で切ない悪意を感じさせる6編からなる短編集です。
ホラーにSF、本格物とバラエティーに富んでいて、適度にハラハラさせられたり、ユーモアもあり、ラストはいつものどんでん返し。
ここがポイント
人間のちょっとした心のスキマを巧みに利用したトリックが、駆使されていて、流石だなあと思ってしまいます。
素晴らしい構成に、納得してしまう作品です。
3、『悪魔がここにいる』
美しい薔薇園に包まれた邸に嫁いだ相沢花梨は、邸の主人の3番目の妻であった。
白薔薇のような純粋な最初の妻への思慕が、邸内に満ちる状況下で3番目の妻に向けられる何者かの憎悪は、一体何なのか。
ここがポイント
女性の執念というか怨念とは怪談とか怨霊とかと違った怖さがあり、最後の最後まで色々な女の狂気とか執念が、溢れ追いかけてきます。
残酷極まりないロマンチックミステリー作品です。
4、『盗まれて』
手紙や電話にまつわる、それぞれの恐ろしさを感じてしまう8編からなる短編集です。
ここがポイント
安定感のある面白さがいっぱい詰まっていて、二転三転するストーリー展開にハマってしまいます。
どの作品にも人間の嫌な部分が少なからず露呈されていて、捉えようによっては怖く感じてしまいます。
面白いですが、かなりゾクッときてしまう作品です。
5、『ルームメイト』
上京した女子大生が一緒に暮らし始めたルームメイトが失踪し、徐々に明らかになっていく彼女の秘密に驚いてしまいます。
多重人格者の前代未聞の特異な事件が描かれていて、怖さは半端ないのですが、読みやすいので、引き込まれてしまいます。
時代を感じさせる描写は多々ありますが、ミステリーとしては十分に読み応えがあり、カルタシスをじわじわと感じることができます。
ここがポイント
自分の知らない自分に、慄いてしまう作品です。
6、『大蛇伝説殺人事件』
島根県の松江で画壇の巨匠が失踪し、後にスサノオを祀る神社からバラバラ死体で発見される話です。
ここがポイント
探偵、大道寺綸子はその謎を追うべく奔走していき、冴えわたる推理で、事件の真相を掴んでいきます。
今邑氏の想像力が遺憾なく発揮されている作品です。
7、『よもつひらさか』
奇妙な味わいに満ちた、12編からなる戦慄のホラー短編集です。
ここがポイント
すれ違いだったり、思い込みだったり、嫉妬だったりと人の想いというものが怖いものを何故か引き寄せてしまうのです。
謎解きや意外性にハラハラするというよりも、文章の巧みな描写に強く引きつけられてしまいます。
日常に潜む恐怖が、これでもかと味わえる作品です。
8、『蛇神』
蛇神シリーズ第一弾であり、新橋の老舗蕎麦屋で若女将の倉橋日登美とその娘以外の家族が、住み込みの少年に惨殺されるところから始まる話です。
蛇神信仰が深く根付いた信州の村が舞台の発端であり、2人の女性に焦点をあてた2部構成で、外界と村の在り方が描かれています。
ここがポイント
閉鎖的な村に伝わる独特の信仰、習わしといった日本独特の風習が分かります。
読みだしたら止まらなくなる作品です。
9、『つきまとわれて』
9編からなるホラーテイスト・ミステリーの連作短編集です。
事件自体につながりはありませんが、登場人物たちが他の作品から繋がりのある関係になっています。
大掛かりなどんでん返しや突拍子のない展開はありませんが、登場人物たちの心情が大変身近に感じられる作品ばかりです。
ここがポイント
前の作品の人物が、次の作品に登場する異色の作品です。
10、『赤いべべ着せよ...』
鬼女伝説が伝わる町に娘と20年ぶりに帰郷すると、幼馴染の娘や幼児たちが次々に殺害されていく話です。
ここがポイント
ホラー的要素を醸し出しながら、悲しく生々しい殺人の連鎖が幕を開けるのです。
22年前に起きた事件が、再び動き出してしまったのでしょうか。
愛する子供の為であるなら、親は簡単に狂ってしまうものなのでしょうか。
最後のエピローグに、驚愕してしまう作品です。
まとめ
今邑彩氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
そして不思議な今邑氏の世界を堪能してください。
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