警察小説の第一人者である、横山秀夫氏のおすすめ作品12選をご紹介させていただきます。
個人と社会のつながりを巧妙に描き、特に組織の中にいる個人に視点をあてていて、強大な組織に立ち向かう個人の勇猛果敢な姿が、読者を虜にしてしまうのです。
そうです信念を貫く人間の勇姿には、誰でも喝采を送ってしまうものなのです。
そんな横山氏の強い信念で執筆された作品をどうぞお楽しみください。
横山秀夫おすすめの作品12選をご紹介~無敵の眼差しを見極める眼力~
大学卒業後、新聞記者として12年間勤務したのち、1991年に投稿した作品「ルパンの消息」が、第9回サントリーミステリー大賞の佳作を受賞したことを契機に、新聞社を退社して、作家の道を志すこととなります。
以後、漫画の原作や児童書の執筆、アルバイトなどを経て、ついに1998年、「陰の季節」という作品で作家デビューを果たします。
横山氏は常に「何を考えて、何を書くかというところで、勝負をしていきたい」という、信念を持っで執筆しているのだそうです。
何事にも対しても決して屈しない信念を持っている、横山秀夫氏の厳選した短編集を含む、おすすめの12作品をご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。
1、『ルパンの消息』
15年前に自殺として処理された女性教師の墜落死は、実は殺人だったのでは、というところから物語は始まります。
ここがポイント
横山氏の作品の中でも特に、ミステリー色が強く、二転三転する展開は、その後の作品の伏線となっているように思われます。
タイムリミットが、いっそう緊張感をもたらしていて、さらに3億円事件までも絡んできてしまいます。
幻のデビュー作と言われている作品であり、その文章構成は卓越したものがあります。
2、『出口のない海』
元甲子園優勝投手が自らの意思で、人間魚雷「回天」に搭乗を決意する話です。
第二次世界大戦の末期を舞台とした、戦争の中で生きる人々の姿や、心境が丁寧に描かれています。
空の特攻よりも、さらに閉ざされた空間の中、片道切符で本当にお国のためなのかと、疑問に思えてしまいます。
ここがポイント
絶対権力の組織である軍部に立ち向かう、一人の勇猛果敢な青年の姿が、見事までに描かれています。
市川海老蔵氏主演で、映画化もされた心に響く作品です。
3、『陰の季節』
D県警シリーズ第1弾であり、4編からなる短編集になります。
ここがポイント
警察内部の人間の葛藤に視点をあてた、今までにはない斬新な切り口の警察小説です。
横山氏の短編は非常に密度が濃いので、長編にも劣らないような重量感を感じてしまいます。
小説家としてのデビュー作であり、警察内部の実態の解明に迫る作品です。
4、『動機』
D県警シリーズ第2弾であり、こちらも4編からなる短編集となります。
警察に絡む人間ドラマを横山氏独自の筆致で、冷徹に描いているのですが、ストーリーは濃密なのです。
どの短編も完成度が非常に高く、いつもながらに満足してしまいます。
ここがポイント
人間の感情の移り変わりが、克明に描かれている作品です。
5、『顔 FACE』
D県警シリーズ第3弾であり、似顔絵婦警を主人公とした、5編からなる連作短編集です。
横山氏にとっては、異例な感じの警察小説になります。
ここがポイント
女性警察官の視点で、葛藤と挫折がうまく描かれていて、成長していく姿を思わず応援したくなります。
頑張れと、手を差し伸べたくなる作品です。
6、『第三の時効』
F県警強行犯シリーズ第1弾であり、6編からなる連作短編集です。
短編らしく迅速で、キレのあるテンポでストーリーは展開していき、飽きることなく楽しむことができます。
個性的な各班長(刑事)の複雑な心理状況を精微に描いた筆致は、流石としか言いようがありません。
ここがポイント
ハードボイルドチックという呼び声も高く、各話の工夫された展開には驚きを隠せません。
警察小説の中の警察小説に、間違いない作品です。
7、『真相』
5編からなる短編集であり、身近にいそうな人間に、視点をあてている話が綴られています。
ここがポイント
それぞれの物語の登場人物が、組織や社会と戦い、人間関係に苦悩していく姿が、克明に描かれています。
横山氏お得意の警察物ではありませんが、重厚な人間ドラマを味わうことができます。
最後にイヤミスっぽい余韻が残る作品です。
8、『半落ち』
志木和正シリーズであり、妻を殺害した現職警察官が、自首するまでの謎の2日間に視点をあてた話です。
事件に関わる警察官、検事、裁判官、弁護士、刑務官、記者たちがそれぞれの立場で語る事情に、惹きつけられてしまいます。
ここがポイント
ひとつの事件が、利害関係者の視点で描かれていて、それぞれの内部事情も味わうことができます。
素直に、涙を誘ってしまう作品です。
9、『クライマーズ・ハイ』
1985年に発生した御巣鷹山日航機墜落事故を題材にしていて、その事故を追う新聞記者の話です。
地方新聞社が舞台になっていて、その全権デスクを任された40代男性の半生が、描かれています。
ここがポイント
組織のもめ事に立ち向かう、組織の一員としての苦悩は、臨場感をタップリと味わうことができ、読み応えがあります。
作品の随所に横山氏の息吹が感じられ、大変勇気がもらえる作品です。
10、『震度0』
1995年に発生した阪神淡路大震災の直後に、N県警の刑務課長が忽然と姿を消してしまう話です。
警察内部での野望と陰謀が渦巻いていく流れで、ストーリーは展開していきます。
ここがポイント
登場する警察官はすべて私利私欲にまみれているばかりでなく、その細君までもが怨念まみれという実態なのです。
人間は組織に所属すると、価値観までが変わってしまうことは、よくあることだと思います。
それにしても、何か空しさを感じでしまう作品です。
11、『臨場』
臨場シリーズであり、人呼んで「終身検視官」の活躍をストイックに描いた8編からなる短編集です。
警察ものではあまり取り上げられることのない、検視官を主人公に置いた作品であり、違った側面から警察の内面が見ることができます。
ここがポイント
人間臭さが堪らなく、真直ぐな生き方が気持ちよく描かれていて、清々しい気分にしてくれます。
殺伐とした事件風景の中にも、温もりが感じれる作品です。
12、『64(ロクヨン)』上・下
D県警シリーズ第4弾であり、警察組織内で二つの部署及び、地方と中央に板挟みになる主人公の話です。
ここがポイント
14年前の誘拐殺人事件と、家族の問題が絡み合っていく流れで、ストーリーは展開していきます。
警察内部の濃厚なドラマが描かれていて、これぞ本物の警察小説なんだと感じてしまいます。
佐藤浩市氏主演で映画化もされていて、とても人気のある作品です。
まとめ
横山秀夫氏の作品は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
警察内で一途を貫くという事は、相当強い覚悟がないとできないことなのです。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非ともこの機会に読んでみてください。
明日からのあなたの生き方が、変わるかもしれません。