強烈な描写の花村萬月氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきます。
東京生まれで、小さい頃から問題行動の多い子供であったため、小学校6年生の時に児童相談所にに送られます。
その後、高校へ進みますが、喧嘩が原因で3日目に退学を余儀なくされ、その後京都に移り、ヒモ生活や肉体労働などで食いつないでいきます。
花村萬月おすすめ作品8選をご紹介~貫くようなその鮮烈な才能~
薬物中毒からアルコール中毒になったりと、波乱万丈な経験をして過ごしていたようです。
1989年に「ゴッド・ブレイス物語」という作品で第二回小説すばる新人賞を受賞して、作家デビューを果します。
その後も1998年に「皆月」で第19回吉川英治文学新人賞、「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川賞を受賞します。
自分が今あるのは、母親がどんな状況でも非常に明るい人で、その性格を引き継いでいるように、自分も肯定的で楽天的なんだからだそうです。
そんな花村萬月氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、どうぞ楽しんでください。
《ゴッド・ブレイス物語》
19歳のロックシンガーの朝子が遭遇する若々しい愛と冒険の日々を描いた感動の話です。
ボーカルの朝子はライブバンド、ゴッド・ブレイスを率いて超高級クラブからの依頼で、京都に向かうのですが、結果騙されてしまうことになります。
そしてトラブル続きで、メンバーにも軋轢が生まれるのですが、問題を乗り越えて成長していくのです。
花村氏のトレードマークというべき、性と暴力はデビュー作にして満開であり、人間ドラマも如何なく描かれています。
ここがポイント
もどかしい位の愛が漂っていて、個性豊かな男女の恋愛がストーリーを盛り上げてくれています。
音楽好きには堪らなく味のある作品です。
《なで肩の狐》
元ヤクザで現在は飲み屋のオヤジである木常(キツネ)が、現役のヤクザの徳光から2億円の入ったアタッシュケースを預かる話です。
それはとんでもないお金であったのだ、一週間後、さっそく凶刃に襲われ、木常は幼馴染の女とその娘、舎弟の元力士を引き連れて、徳光の願いを叶えるために、北辺の地を目指します。
暴力の描写はリアリティがあり、生々しくて、壮絶きわまりないです。
舎弟の元力士との掛け合いも面白く、物語としても良くまとまっていて、楽しませてくれます。
ここがポイント
エンターテインメントとしては最高に面白い作品です。
《ブルース》
日雇い労働者の村上、裏社会を仕切るゲイの徳山、そして村上に惚れるブルースシンガーの綾の三人が織りなす性と暴力と愛に溢れた話です。
ここがポイント
凄まじい三角関係を軸に展開していき、過激な暴力描写や過剰な性描写、過酷な労働、壮絶な生き様が描かれています。
暴力や貧困の匂いが噎せ返るほどの生々しさがあるのですが、プロットとしてはシンプルで、スムーズに展開していきます。
シンプルなのにワイルドさが溢れていて、哀愁が漂う作品です。
《笑う山崎》
徹底的な残酷さ故に、誰もから恐れられている極道の山崎を描いた連作短編集です。
これ以上ないような卑劣な暴力と、情けないほどの純粋な愛情が描かれています。
敵対する組織や人間に対しては、これでもかと言うくらいの加虐を与えますが、自分の身内の者や家族に対しては溢れんばかりの愛情を注ぐのです。
ここがポイント
任侠道の世界に引き込まれそうになる作品です。
《皆月》
妻にコツコツと貯めた1千万円を持って逃げられた、コンピュータオタクの主人公、諏訪徳雄の話です。
人に依存ばかりしていた男が、誇りを取り戻すために、逃げた妻を探しに行くことを決意します。
何と道連れは、ヤクザ者の義弟とソープ嬢という無茶苦茶な連中ですが、いつの間にか心が解されていきます。
ここがポイント
今までとは全く違った環境に身を置くことにより、自分の中の何かが変わっていくという感覚が芽生え、勇気を与えてくれる作品です。
《ゲルマニウムの夜》
殺人を犯し、中学まで自分が育った修道院に逃げ戻った22歳の朧の視点で、描かれた性と暴力と宗教の話です。
ここがポイント
偽善をモチーフとしながらも、性と暴力と宗教を露悪的に描くことで、主題を際立たせようとしています。
舞台は現代ですが、中世ヨーロッパのような雰囲気を醸し出していて、時代感が限定できない不思議な話のように感じてしまいます。
修道院を舞台に神を冒涜するような行為が重ねられていきますが、それは宗教の欺瞞を露わにしながらも、同時に本質を探ることなのです。
強烈に心に残る作品に間違いありません。
《ぢん・ぢん・ぢん 上・下》
ここがポイント
舞台は新宿、歌舞伎町、ヒモ修行を始めた青年イクオの姿を描きながら、既成のモラルに挑んでいく話です。
新宿でヒモ修行を始めたイクオが、様々な男や女に出会い、思考を巡らせ、いろいろな体験をして成長していきます。
登場人物が皆、闇を抱えていて、誰にも救いの手は差し出されなくて、カッコ良くもなく、ただもがき苦しむ姿を見て、イクオは変化していくのです。
性描写が多く、大変熱量の高い作品です。
《二進法の犬》
京大卒の鷲津がヤクザの親分の高校生の娘、乾倫子の家庭教師を引き受けることになった話です。
ここがポイント
白か黒か、0か1かという、甘えと曖昧さを決して許さない、極道たちの生き様が描かれています。
誰よりも自分の狡さや弱さを認識していた鷲津が、自分の認識から逃げなかったからこそ、彼らに受け入れられたのです。
長さが全く気にならない傑作であり、読みどころが満載であり、心理描写が凄い作品です。
まとめ
波乱万丈な人生を送ってきた、花村萬月氏の作品はいかがでしたでしょうか。
かなり楽しめたのではないでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。