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吉村昭おすすめ作品10選をご紹介~記録文学に秀でた描写~

記録文学の新境地を拓いた、吉村昭氏のおすすめの作品10選をご紹介いたします。

大学中退後、繊維関係の団体事務局に勤めながら、丹羽文雄氏主宰の同人誌「文学者」や、小田仁二郎氏主宰の「Z」などに短編を発表しています。

1958年には週刊新潮に短編「密会」という作品を発表して、商業誌に作家デビューをしています。

1966年に「星への旅」という作品が、第2回太宰治賞を受賞し、同年、長編ドキュメントの「戦艦武蔵」が新潮に一挙掲載されます。

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吉村昭おすすめ作品10選をご紹介~記録文学に秀でた描写~

緻密な取材、深い探求心から生み出されたノンフィクション作品は、「記録小説」と呼ばれ、いわゆる歴史小説とは別格の敬意を集めました。

人間の内面を描いた純文学であり、災害の真実を伝える小説、幕末から明治の秘史・外交史に迫るもの、漂流民や逃亡者を描いたものなど、多くの作品が時の淘汰に耐え、読み継がれています。

奥さまは同じく作家で、芥川賞作家の津村節子氏です。

そんな吉村昭氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきますので、どうぞお楽しみください。

1、『戦艦武蔵』

日本帝国海軍の夢と野望を賭けた不沈の戦艦、「武蔵」の極秘の建造から壮絶な終焉までを克明に描いた話です。

吉村氏は軍隊を美化することはなく、同時に過度に批判することも避けていて、淡々と事実に寄り添って、途方もなく巨大な軍艦が完成して、海の中に消えるまでを描いているのです。

内容の半分以上は建造、進水に関わる苦悩であり、トラブルにたいする工夫に割かれていて、前例のない巨大戦艦の民間企業による建造が、空想的とも思われる作業だったのかを物語っています。

ここがポイント

不沈艦として、華々しく戦列に加わるも、実践の機会が殆んど与えられず、最終的にはその乗組員の殆んどが戦死したことは空しい限りです。

戦艦武蔵が最後の集中攻撃を受けるリアリティ感タップリの生々しさ、戦争の悲惨さと人間の愚かさが描かれていて、読み継がれていかなくてはいけない作品です。

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2、『高熱隧道』

1936年から4年かけて建設された黒部川第三発電所における、隧道(トンネル)工事現場が舞台の話です。

現在ではあり得ない環境下での掘削工事であり、160℃以上にもなる岩盤の中を半分手作業で掘り進める、無謀の極みそのものだったのです。

発破の為のダイナマイトが自然発火し、人夫が木端微塵に吹き飛ばされてしまうのです。

そんな過酷な作業の様子が、物凄い臨場感で迫ってきて、犠牲者は何と300人を超えていたのです。

ここがポイント

技術者と人夫の立場や思惑の違いにも触れながら、軍需産業振興目的の国策工事が、いかに多くの人命を奪った事実を克明に綴っている、まさに名作です。

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3、『三陸海岸大津波』

三陸海岸を襲った三つの大津波(明治29年、昭和8年、昭和35年)についての克明な記録を綴っています。

ここがポイント

まさにドキュメンタリータッチで描かれていて、地震の凄さ、自然の恐ろしさに映像で見た東日本大震災の悲惨な状況を思い出してしまいます。

今作品では先の被災の教訓を生かして、防潮堤などいろいろな対策が進み、津波が来ても死者はでないであろうと書かれていますが、なんと明治29年の死者行方不明26,360名を上回る27,836名が犠牲になっているのです。

それ程、東日本大震災の津波は想像以上で広範囲のものだったのです。

人知を超えた自然の脅威に、立ち向かう術の難しさを感じてしまう作品です。

4、『関東大震災』

20万人もの死者を出した関東大震災は、大正12年9月1日午前11時58分に発生しました。

震災の直接的被害に始まり、流言による朝鮮人虐殺、甘粕事件等、この震災によって起きた更なる被害についても知ることができます。

各避難所や死因毎の人数等、吉村氏の詳細なデータ収集力には恐れ入ってしまいます。

ここがポイント

地震そのものによる、家屋の倒壊や火災による被害は勿論恐ろしいのですが、一番怖いのは理性を失ったときの人の怖さなのではないでしょうか。

あちこちで流言が飛び交い、それが原因で多くの人が殺されたり、どさくさに紛れて死体の中から指輪や金歯を剥がし取ったりする行為は許せません。

人間の深層心理には、今も昔も変わらぬ危ういところがあり、本作から学ぶべきところはたくさんあると思います。

5、『漂流』

江戸時代、自らが乗っていた船が難破し、絶海の火山島、鳥島に漂着し、12年間生き抜いて生還した土佐の船乗り長平の話です。

真水を貯めるために池を作ったり、唯一の食糧のアホウドリが飛んでこない時期の為に干し肉を作ったり、健康の為、鳥ばかり食べずに適度に運動して、魚介類や海藻を交互に食べるなど、サバイバル術がとてもリアルに描かれています。

流れ着いた仲間は次々に死んでいき、1年半をたった一人で生き抜き、その後は新たな漂流者たちと、島に流れ着く流木で船を作り、脱出するのです。

ここがポイント

周りを励まし、生きていく術を確立し、更に脱出の際には自分たちと同じように、流されてしまった者のことも考えて、道具を残していく人柄や洞察力があったからこそ、長平は生き延びることができたのだろうと思います。

生命力の根源に触れたかのような、人間の力強さを感じる作品です。

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6、『羆嵐』

大正時代、北海道で羆(ひぐま)が人間を次々に襲った悲劇(三毛別羆事件)を題材にした物語です。

羆に襲われた北海道の開拓村での実話をもとにしたドキュメンタリーであり、その凄まじさが描かれています。

人間の骨をバキバキと噛み砕きながら貪り、更には人肉の味をしめて何度も村を襲う描写は恐怖でしかありません。

怖れながらも羆に立ち向かう人々と、老猟師の銀四郎の描き方が人間の強さと弱さの両方が重なって見え隠れします。

ここがポイント

圧倒的な臨場感と緊張感が味わえる見事な作品です。

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7、『赤い人』

明治時代の石狩川上流にある樺戸集治監を舞台に、そこに送られた囚人たちと看守たちの記録です。

国策により囚人たちは原野を開拓し、道路を作るなどして、極寒の地で鎖につながれての重労働を強いられていたのです。

そして、当然のように脱獄がおこり、それを執拗に追いかけ惨殺し、監獄へ残っている者たちへの見せしめとしていたのです。

仮に病気、怪我などしても放っておかれて、食事も睡眠もろくに与えられず、死んだらまた連れてくればいいと、まるで使い捨ての玩具のように扱われていたのです。

ここがポイント

人権も何もあったもんじゃない日本政府の狂っていた時代が、浮き彫りにされている作品です。

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8、『ポーツマスの旗』

ポーツマス講和条約におけるロシアとの交渉の際での、小村寿太郎外相や全権委任団の仕事ぶりや活躍を描いた話です。

日本とロシア、お互いの国事情を鑑みながら妥協点を探っていき、ようやく条約を結ぶことにこぎつけるのですが、その内容は戦勝金も得られず、樺太も放棄するなど、日本国民が納得するものではなかったのです。

これにより日本国内で勃発した暴動が、広範囲で展開されて、戒厳令まで発令されるに至ってしまうのです。

日本の真の国情を知らない民衆に小村の功績は正当に評価されず、屈辱外交と非難され、報われないままに燃え尽きたように死んでいってしまうのです。

ここがポイント

国賊扱いをされた小村であったのですが、今日では、歴代もっとも評価の高い外務大臣なのです。

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9、『破船』

難破船をおびき寄せては、追い剥ぎのようなことをしていた村人たちが、奪った衣服が原因で病へと倒れていく話です。

貧しい漁村で、毎日食べるという事だけで必死な生活を送っている者たちにとっては、米を何百俵も積んでいる商人の船が座礁すれば、それはまるで豊作に巡り合ったかのように喜び、略奪してしまうのです。

他力本願的な生活をせずにいられない悲しさと、富のバランスの悪さに切なくなってしまいます。

だから富を運んでくれる通称「お船様」を村の者は皆、待ち望んでいるのです。

ここがポイント

人間の尊厳について考えさせられる重厚な作品です。

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10、『破獄』

青森、秋田、網走、札幌の難攻不落の刑務所から4度の脱獄を繰り返した、伝説の脱獄犯、佐久間清太郎の話です。

「昭和の脱獄王」の異名を持つ人物がモデルとされていて、佐久間は手錠、足錠、独居房そして屈強な看守たちによる絶え間ない監視の網を通り抜けて脱獄してしまうのです。

考えられる対策は、佐久間の明晰な頭脳と超人的な身体能力によって、打ち破られてしまうのです。

ここがポイント

佐久間を脱獄させまいとする看守と、破獄を意気込む佐久間の自らの矜持をかけた息詰まる攻防に圧倒されてしまいます。

最後の府中刑務所では、穏やかに暮らす佐久間が印象的であり、愛情や信頼関係が佐久間を変貌させたことが伺えます。

大変な力作であることに間違いありません。

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まとめ

吉村昭氏の作品はお楽しみいただけましたでしょうか。

緻密な取材から作り出される、記録小説の醍醐味は感じていただけましたでしょうか。

まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。

きっと吉村ワールドにハマってしまうと思います。

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