心身を癒してくれる、伊吹有喜氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、出版社に入社し、雑誌主催のイベント関連業務などを経て、フリーランスのライターになります。
2008年に永島順子名義で応募した「夏の終わりのトラヴィアータ」という作品で第3回ポプラ社小説大賞の特別賞を受賞し、翌2009年に同作品を「風待ちのひと」とタイトルを改め、伊吹有喜として作家デビューを果します。
その後も伊吹氏の作品は各文学賞の候補に挙がったりと、人気を博し続けています。
伊吹有喜おすすめ8選をご紹介~細やかな心理描写で魅了する~
小さい頃から、本に親しみ、本を愛した伊吹氏の想いがいっぱい詰まった作品は、とても細やかな描写で楽しむことができます。
また作家の仕事を続けるうえで、これだけは守っていきたい信条は、「常に続けていくことであり、どんなことでも真摯に続けていれば、その先に何か新しいことが、開けていく」気がするそうです。
2016年より三重県四日市市の観光大使を務めていて、趣味としては長唄、料理、旅行、散歩、舞台鑑賞、音楽鑑賞、楽器の練習と多岐に渡っています。
そんな伊吹有喜氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、『風待ちのひと』
心の風邪をひいてしまった哲司と、家族を亡くして傷ついている喜美子が、海辺の街で出会う話です。
当初、喜美子をめんどくさがっていた哲司、おせっかいを焼きたがる喜美子、そんな関係がいつの間にか、惹かれあっていく仲になるのです。
39歳の大人同士が、夏休みの子供のように過ごす、すこし恥ずかしいような一時が微笑ましく描かれています。
そしてそこに愛が芽生えてしまって、お互いを思いながらのそれぞれの心の葛藤に胸が締め付けられます。
ここがポイント
今より少し幸せになるために、踏み出す勇気を与えてくれるような作品です。
2、『四十九日のレシピ』
継母の乙美が残したレシピを元に、残された血のつながらない家族が再び、生きる力を取り戻していく話です。
突然亡くなった乙美が、夫の良平と義理の娘の百合子に宛てた四十九日のレシピにより、乱れていた二人がレシピのおかげで少しづつ変化を遂げていくのです。
自分が亡くなっても尚、家族のことを優しく見守っている乙美は、本当に素敵であたたかい女性だったのです。
ここがポイント
生きている今を、縁した人を大事にしていこうと思える作品です。
3、『なでしこ物語』
耀子と照子と立海、それぞれに孤独を抱えた3人が常夏荘で、孤独を癒し再生していく話です。
母に捨てられ祖父に引き取られたけれど、いじめに逢う耀子、夫に先立たれ、古い家で孤独を飼い慣らす照子、家の重圧に押しつぶされそうな立海。
常夏荘で過ごす時間が傷を癒し、それぞれの人生が少しづつ新しい方向に、動きだしていくのです。
ここがポイント
世間の荒波と真逆にある人としての温かさが、描かれている、こみ上げるような素敵な作品です。
4、『ミッドナイト・バス』
深夜バスの運転手の利一が、元妻と、一回りも違う恋人との間で心が揺れ動く話です。
東京から故郷の新潟に戻り、深夜バスの運転手を勤める利一、別れた妻、新しい恋人、大きくなり独立した二人の子どもたち、誰一人悪いということはないのに、ギクシャクしているのです。
ここがポイント
相手を思うがために、かえって人の心を傷つけてしまう、そんな不器用な人もいるのです。
不器用に、もがき苦しみながら、過去と未来の人生に向き合っていく夫婦、親子それぞれの想いが切なく愛おしく感じてしまいます。
一人一人の思いが心に突き刺さる作品です。
5、『BAR追分』
新宿の片隅にある「BAR追分」にやってくる、少々事情のある人の「分かれ道」に関わる5編からなる連作短編集です。
昼間は喫茶店のような「バール追分」で、夜は「バー追分」、人生に悩み、迷い不安な時にふと立ち寄り、美味しい食事とお酒で癒されて、新たな一歩を踏み出していくのです。
頼りなさそうで、うだつの上がらない青白い顔をした宇藤青年の語りで、話は進んでいきます。
ここがポイント
優しい人と美味しいものの繋がりは、心を温かくしてくれるのです。
疲れた時に、心身をいやしてくれるような作品です。
6、『今はちょっと、ついてないだけ』
過去に一世風靡した写真家を中心に、挫折を経験した人達がもう一度、人生の敗者復活戦に挑む話です。
もしかしたら、人生のどこかで道を間違えたかもしれない、一歩踏み間違えたせいで、敗者になってしまった気がする。
でもまだ、終わっていないし、生きている限り人間は明日を目指して、より良い未来に向けて進んでいかなくてはいけないのです。
ここがポイント
ほんの少しの考え方と行動を変えるだけで、道は開けるのです。
本当に今はちょっと、ついていないだけなのです。
7、『カンパニー』
企業合併に伴うリストラで、バレエ団「カンパニー」に出向して公演の成功を命じられる話です。
リストラ対象になったサラリーマンの青柳、妻子にも出ていかれた絶望の中、会社が支援するバレエ団への出向を命じられます。
そして同じく、リストラ対象となったトレーナーの由衣と共に、世界的なバレエダンサーの高野をサポートしながら、スポンサー公演である「白鳥の湖」の成功を目指して奮闘していくのです。
ここがポイント
好きなことを追求する姿勢や、いろんな困難がある中で、公演の成功に向けて取り組む様子は感動ものです。
爽快感が溢れ出てくる作品です。
8、『彼方の友へ』
戦前から戦中戦後にかけて、少女雑誌作りに情熱を注いだ人たちの話です。
少女たちの心の癒しとなっている雑誌である、「乙女の友」を手掛けるハツの人生の物語なのです。
厳しくなる時代背景に負けない人々の強さやユーモアや情熱が、世代を超えて勇気や希望を与えてくれるのです。
戦前にこのような少女向けの雑誌があって、そしてそれが読者を友として、最上のものをとの信念で作られていたことに感動を覚えてしまいます。
ここがポイント
世代を超えて託される人々の想いが、伝わる作品です。
まとめ
伊吹有喜氏の作品は楽しんでいただけましたでしょうか。
細やかな心理描写を感じていただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
きっと、あなたは感動の渦の中に、巻き込まれてしまうでしょう。
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