不思議な世界観を持った、二宮敦人氏のおすすめの作品10選をご紹介させていただきます。
大学卒業後、モバイルコンテンツのプロデュース業に従事し、携帯小説サイトの「魔法の!ランド」「E★エブリスタ」で発表したホラー小説が話題となり、2009年に「!」(ビックリマーク)という作品で、作家デビューを果します。
ユニークな着眼と発想、そして周到な取材に支えられた、数々の小説を世に送り出して、人気を博しています。
二宮敦人おすすめ作品10選をご紹介~取材に基づく真相を描く~
ベストセラーとなったノンフィクション「最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常」という作品は、多くの藝大生に取材をして、書き上げたそうです。
作品を生み出す力の源は、死にたくないから、生きて行くために誰よりも努力して、良い作品を生み出し続けていかなくてはいけないという強い思いを常に持って、創作活動をしているようです。
そんな二宮敦人氏のおすすめの作品10選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、『!(ビックリマーク)』
ホラー感もある混乱させられる、3編からなる中編集であり、その三つの話とは。
① クラスメイト:拾った携帯に、クラスメイトの惨殺死体の画像が残されていた。
② 穴:偶然あけた穴の先は、殺人鬼が住む部屋だった。
③ 全裸部屋:なぜ自分が死ぬのか、理由が分からないまま、時間が過ぎる恐怖。
ここがポイント
現在の社会問題や人間の有様などを主人公を使って語らせたり、ページ内での文字の並べ方などの工夫が巧妙に描かれています。
どこか不思議で、その世界観に、引き込まれてしまう作品です。
2、『ドールハウスの人々』
天才的な球体関節人形作家のソウスケが、恋人のヒヨリを展示会に連れて行ったことから始まる、連続殺人事件の話です。
人と人形の境界線が狂い始めていき、もやもやとした狂気が描かれています。
人形は、作り手が魂を込めて作るものなので、命が宿ってもおかしくないほどの存在感があるものなのです。
ここがポイント
誰の心にも多かれ、少なかれの狂気が存在するけれど、それを行動に移すか移さないかが、犯罪者への分かれ道になるのです。
登場人物の狂気じみた怖さが、ストレートに伝わってくる作品です。
3、『18禁日記』
色々な人が、他人には言えない秘密を日記やブログを通して、語っていく話です。
いつか読み返す時の為に、最初は丁寧に、やがて雑に、そして惰性で書く人の本性が出た時に、自分の中の狂気に気付いてしまうのです。
年齢も性別も違う15人が、秘密を暴露した内容に、共感するのか、関係ないと思うかの感性が問われます。
ここがポイント
人間の内に秘めたる狂気が垣間見えるような作品です。
4、『郵便配達人 花木瞳子が盗み見る』
郵便配達人の瞳子が、小さな好奇心から、配達すべき封書の中身を見てしまうところから、はじまる話です。
何と自分宛てに何度も手紙を出し続ける人間に、興味を持ったばかりに、瞳子は恐怖に巻き込まれていくのです。
そして手紙に関連したいくつかの些細な謎が、猟奇的殺人へと繋がっていったのです。
表紙からは想像出来ない位のハードな内容であり、終盤には、ちょっとしたトリックも使われていて楽しめます。
ここがポイント
和やかな日常と、正体不明の狂気が共存する作品です。
5、『殺人鬼(サイコパス)狩り』
離島の刑務所から脱獄した5人のサイコパスに挑む、警察官3人と1人のサイコパス少女の話です。
人を殺すことに何のためらいもないサイコパス達の心の中は、本当にどうなっているのかと思ってしまいます。
常人には理解できない、精神構造で凄惨な殺害を楽しむ彼らサイコパスには、本能的な恐怖を抱がざるを得ません。
ここがポイント
毒を以って毒を制するように、サイコパスを捕まえるには、サイコパスで立ち向かうという斬新な設定しかあり得ないのです。
悍ましいサイコパスを描いた作品です。
6、『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』
東大の3倍の入試倍率を有する、東京藝大の全14学科を制覇した、非公式の報復絶倒の完全ガイドです。
普段知ることのできない藝大に通う天才たちのキャンパスライフを覗き見しつつ、その生き方にも触れることができます。
藝大生と一口に言っても、様々な人がいて、明確な目標に向かう人、好きなことを突き詰めていく人、周りからは理解できない行動を取る人など千差万別なのです。
ここがポイント
しかし、共通していることは、自分自身と正面からきちんと、向き合っているのです。
何と藝大生の多数が、卒業後行方不明になっているそうです。
この作品そのものも、一つの芸術作品のように思います。
7、『最後の医者は桜を見上げて君を想う』
最後の医者シリーズの第一弾であり、3人の医師が死に直面する患者に向き合う、3編からなる連作短編集です。
余命を知った時、患者の気持ちはどうなのか、周囲はどう接するのか、医療に携わる人間はどう対応するのかを描いています。
死を受け入れて、残された日々を大切に生きることを説く医師、桐子、奇跡を信じて最後まで生きることを諦めない医師、福原、そしてそんなふたりの間を、取り持とうとする医師、音山の3人の姿があります。
ここがポイント
生と死と医療について、安易な言葉では言い表せないほどの、考えさせられる作品です。
8、『文藝モンスター』
作家たちが集まった、岡山の旅館で行われた文学賞の打ち上げで、作家の卵が殺される話です。
地元で信仰を集める消し神様に、願いを祈った人気作家たちが、その通りに発生した殺人事件の真相に挑んでいきます。
居合わせた作家連中が、それぞれに自分の推理をひけらかしながら、展開していくのですが、登場する作家たちにもモデルがいそうな感じでかなり楽しめます。
ここがポイント
結末は全く読めませんが、まるでバカミスのような巧妙なトリックに完敗してしまう作品です。
9、『最後の医者は雨上がりの空に君を想う 上・下』
最後の医者シリーズの第二弾であり、二人の医師、福原の生い立ちと桐子の過去が明らかになる話です。
福原医師と桐子医師、患者の命に対する向き合い方が異なる二人の医師は、何故そのような考え方になったのかが明かされます。
桐子が病弱だった幼少期に病院で出会った末期がん患者の女性(福原の母親)との交流を通して、医師と患者、そして家族とのあり方を掘り下げていきます。
また最愛の母を貶めた父親への敵対心を糧に生きてきた福原にもたらされた意外な真実も明らかになっていきます。
ここがポイント
人間は生まれてから関わる人次第で、考え方、生き方も変わっていくことが分かる作品です。
10、『世にも美しき数学者たちの日常』
さまざまな数学者へのインタビューを通じて、「数学とは」という問いを考察する話です。
ここがポイント
現代数学に批判的な数学史家などのインタビューを通じて、数学の本質に見事に迫っています。
数人の数学者に数学の魅力とか、考え方、研究方法などをインタビューしていて、分かりにくそうな話も、筆者がうまく纏め上げてくれているので、読みやすくなっています。
数学について興味を深めるきっかけとなる作品であると思います。
まとめ
二宮敦人氏の作品のご紹介は、楽しんでいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
読書の楽しみが広がりますよ。