欲望のままに描く、岩井志麻子氏のおすすめの作品を12選ご紹介させていただきます。
1982年、高校在学中に第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選し、1986年に少女小説「夢見るうさぎとポリスボーイ」という作品で、作家デビューを果します。
1999年に「ぼっけえ、きょうてえ」という作品で第6回日本ホラー小説大賞を受賞し、翌2000年には同作品で第13回山本周五郎賞を受賞しています。
岩井志麻子おすすめ12選をご紹介~邪悪で正直な欲望を描く~
志麻子という名前の由来は、父親が岩下志麻のファンであったことからのようです。
当初は今でいうところのライトノベルを執筆していたようですが、全く売れなかったので、ホラー小説に転向したことで、人気がでたようです。
そんな岩井志麻子氏のおすすめの作品を12選ご紹介させていただきますので、お楽しみください。
『ぼっけえ、きょうてえ』
怖いだけでなく、気持ち悪さとグロさも兼ね備えた4編からなる短編集です。
岡山県の農村や漁村を舞台にしたホラーであり、やはり、遊郭の女郎の一人語りによる表題作「ぼっけえ、きょうてえ」が印象に残ります。
ここがポイント
全体的に泥臭く、鬱屈とした世界観であり、要所要所に得体のしれない存在が見え隠れしています。
文章全体から滲みでる、気持ち悪さが堪らない作品です。
『岡山女』
左目を失って得た、霊視能力を持つ女霊媒師のタミエの元に集まる、怪しい依頼客の話がつまった連作短編集です。
タミエの目をとおして見るこの世は、此岸と彼岸の境目が曖昧であり、日常のすぐ隣に彼岸が潜んでいて怖く感じてしまいます。
ホラーというよりも不気味さ漂う幻想作品になっていて、退廃的な描写に加え、郷土言葉が一層、不思議な世界を醸し出しています。
ここがポイント
じっとりとした、純和風の幻想ホラー作品です。
『夜啼きの森』
昭和13年に岡山の山村で起きた、津山三十人殺しをモチーフにした話です。
犯人視点ではなく、村人の視点で話が展開していき、村という閉鎖的な空間の中で少しずつ常軌を逸していく犯人が描かれています。
ここがポイント
時代背景と相まったダークすぎる因習絡みの人間模様に、とことん翻弄されてしまいます。
様々な人物視点からの描写が、犯人や村人たちの異常性に、より苦みや深みを与えてくれる作品です。
『魔羅節』
岡山を舞台にした、淫靡で挑発的なタイトルの8編からなる短編集です。
陰鬱で古来の日本を彷彿させる、淫靡で噎せ返るほどの空気感があります。
ここがポイント
貧しさから身に着けた人間の狡さというものは、生きるための知恵なのか、あちらの世界とこちらの世界を行き来するような、どちらが夢うつつか幻か分からなくなるような感覚になってしまいます。
志麻子ワールドが存分に堪能できる作品です。
『自由戀愛』
一人の男をめぐる対照的な性格の、元同級生の三角関係が描かれた話です。
自らの意志で手に入れたポジションも、ひょんなことから簡単に足元を掬われてしまうのです。
ここがポイント
女の嫉妬と復讐をこれでもかと言わんばかりに、見事に描いています。
湿った余韻を残す作品です。
『黒焦げ美人』
一家の生活を支える為に、妾を生業としていた姉が、全身を黒こげにされて、惨殺された事件の話です。
明治から大正への元号が移る時に、無残な死を遂げた姉のことが妹視点で語られていて、ただの愛憎劇とは一線を画したミステリアスな話として描かれています。
ここがポイント
その当時、実際に起きた事件をモチーフにしていて、岩井氏独自の世界観が味わえます。
読み手を虚実の世界に落ち入れらせてしまう作品です。
『チャイ・コイ』
ベトナムを旅する女性が、現地の青年に一目ぼれをして、旅先での性愛の日々を描いた話です。
ベトナムのレストランボーイとの関係が綴られていて、異国の地の情景や、熱気とあいまった濃密な空気を醸し出しています。
あまりにも官能的な表現が多く、かなりの衝撃を感じてしまいます。
ここがポイント
欲望に忠実な女性の姿がわかる作品です。
『恋愛詐欺師』
女性の嫌らしさがリアルに伝わってくる、11編からなる短編集です。
どの話も環境や自分自身に問題を抱えた女性が主人公であり、風俗経営者から不良少女、作家等様々な人たちのことが綴られています。
ここがポイント
夢と現実を行き来しているような、錯覚を起こさせるような混沌とした世界が描かれています。
人間の怖さが際立っている作品です。
『べっぴんぢごく』
岡山の寒村の呪われた家系を生きた、六代の女性たちの愛欲と怨念にまみれた話です。
美女と醜女が一代交替で生まれるのは、禁忌をおかした罪なのか、はたまた、土俗の死霊の祟りなのか。
ここがポイント
女の情念の凄まじさや、恐ろしくて妖しい雰囲気が、岡山弁とともに岩井氏独特の筆致で描かれています。
女性の底力に圧倒される作品です。
『死後結婚』
韓国の地方に残る、死者を弔うための古い風習「死後結婚」の話です。
ここがポイント
そしてその死後結婚を通じて、東京と韓国を舞台にした、男女の愛憎劇が描かれています。
時々艶めかしい性描写もありますが、あまり卑猥に感じなく、情景の一部として、感じてしまいます。
韓国の文化にも触れられる作品です。
『現代百物語 悪夢』
好評「現代百物語」シリーズの第四弾であり、夢よりもおぞましい、人間の闇が浮き彫りになる話です。
霊的な話も勿論、ありますが、どちらかと言えば、生きた人間の闇を感じさせる話が多く、自分で思っている常識は、他の人からすれば、非常識ではないかと思わせるところが怖く感じてしまいます。
ここがポイント
相変らずの安定の怖さが詰まった作品です。
『あの女』
岩井志麻子氏の実話系でお馴染みの「あの女」シリーズと書き下ろしが一冊にまとまった話です。
ここがポイント
奇行や虚言で人をドン引きさせてしまうような人間でありながら、その人間に何故か強く魅せられてしまう人達がいたのです。
本当にいたのです、こんな女がそばに、騙されそうもない人たちが、こういう女にコロリと騙されてしまうのは、どこかにある不安に付け込まれるからなんでしょうか。
憎しみと愛情、恐怖と笑いは紙一重ということが分かる作品です。
まとめ
岩井志麻子氏の作品はいかがでしたでしょうか。
楽しんだり、怖がったりして、いただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。