ミステリーホラー界の新星が描く、澤村伊智氏の11作品をご紹介させていただきます。
幼少の頃より読書が大好きで、特に小学生なってからは、怪談やホラー作品に慣れ親しむようになったとのことです。
大学卒業後、出版社に入社するも2012年に退職して、フリーライターの道を歩むことになります。
澤村伊智おすすめの11作品~新たなホラーブームを巻き起こす旗手~
2015年に澤村電磁として応募した「ぼぎわん」という作品で、第22回日本ホラー小説大賞の大賞を受賞します。
同年、同作品を「ぼぎわんが、来る」と改題して、小説家デビューを果たします。
その後の発表作品も評判を呼んで、日本ホラー小説界の期待の新星としてかなり注目されています。
そんな澤村伊智氏のおすすめの11作品を、ご紹介させていただきますのでお楽しみください。
1、《ぼぎわんが、来る》
比嘉姉妹シリーズの第一弾であり、澤村氏のデビュー作品で、”ぼぎわん“という得体の知れない妖怪のようなものに付け狙われる一家の話です。
そしてその一家を救おうとする、霊能者姉妹の活躍が描かれています。
全3章の構成になっていて、それぞれ異なる登場人物の視点で怪異を語っていく展開になります。
ここがポイント
同じ状況の恐ろしさであるにも関わらず、視点が変わることで意識の比較ができて、違った見方の恐怖が味わえます。
怪談、都市伝説、民俗学等さまざまな要素を持っているホラー作品です。
2、《ずうのめ人形》
比嘉姉妹シリーズの第二弾であり、”ずうのめ人形“という都市伝説を聞いた人間は、人形に目玉を抉り出されて殺されるという話です。
まるでリングの貞子のように呪いが伝播していき、死人も出てしまうのです。
しかもその伝播の方法や、呪いの断ち切り方も不明のままなのです。
ここがポイント
伏線の回収がとても鮮やかであり、ホラーというよりもミステリー的な面白さも味わえます。
特に今回の作品は、真相を探る道程やミステリー部分の魅力が際立っているので、ミステリー好きな方にもかなりおすすめです。
3、《恐怖小説キリカ》
ある作家がホラー小説の新人賞を獲得して、順風満帆な日々が続くと思われた矢先、妻と共に嫌がらせにあってしまう話です。
ここがポイント
作家、澤村伊智が主役であり、フェイクドキュメンタリー風のような恐怖小説仕立てになっています。
どこまでが事実で、どこからが創作なのか、境界を見極めることも困難になってしまいます。
一体、澤村氏の頭の中はどうなっているのでしょうか。
今後の作品にも期待が膨らんでしまいます。
4、《ししりばの家》
比嘉姉妹シリーズの第三弾であり、夫の転勤先の東京で幼馴染に再会して、相手の家を訪問してみると、その家は不気味な砂が散る家であったのです。
ホラー的な表現よりも、喉が渇くような砂の表現が絶妙に描かれていて、読み障りの悪い文字選びが本当に秀逸であると感心してしまいます。
ここがポイント
文章の配列にもかなり凝っていて、面白い配列が施してあり、予期せぬことが起きるような感覚に陥ってしまいます。
明らかに異様な空間の自宅へと平然と客を迎え入れる、笑顔の方が恐ろしくなってしまう作品です。
5、《などらきの首》
ここがポイント
比嘉姉妹シリーズ初の短編集であり、6話構成になっていて、安定の面白さがそれぞれに味わえます。
澤村氏の”怪異"に対しての考え方や、表現のバリエーションの多さには驚いてしまいます。
最後の1行にゾクッとさせられる作品が多いですが、やはりタイトルの「などらきの首」が一番恐怖を感じてしまいます。
6、《ファミリーランド》
近未来の家族を描いた、6編からなるSF短編集です。
テクノロジーの力で変貌した家族の諸相をグロテスクで、やや誇張気味な設定で描かれていますが、どこか現在とも繋がっているようにも思えて、SFだからと笑い飛ばせない妙な迫力を感じてしまいます。
ここがポイント
技術が世の中を便利にしようとした結果、人との繋がりが希薄になったり、逆に強くなりすぎたりするのは、不思議に思ってしまいます。
そんな中でも、最後にはその不気味さを見事に反転させて、今ある大切なことをきれいに描いて、終焉に持って行くところに、澤村氏の筆力を感じてしまいます。
今までのホラーとは少し異なった物語ですが、技がひかる作品です。
7、《邪教の子》
とあるニュータウンに越してきた不思議な家族は、新興宗教の信者だったという話です。
その新興宗教の信者である母親に、虐待されている少女を助け出そうとする子どもたちが中心の前半と、その新興宗教の真相に迫ろうとするテレビ局員の男性を主人公とした、後半の2部構成になっています。
前半のあちこちで感じていた違和感が、後半部分で解かれていく展開は、スリリングで興奮してしまいます。
ここがポイント
細かな誤認トリックとか、気付かなかった部分もあり、さらに「邪教の子」とは誰を指すのかも、読むうちに変わっていく展開も面白く楽しめます。
いつものホラー要素はかなり薄いですが、カルトの不気味さやヤバさ、潜入もののハラハラ感が味わえる作品です。
8、《ひとんち》
不気味な雰囲気が堪能できる8編からなる短編集です。
どの話も現実ではあり得ないのですが、もしかして、もしかしたら、どこかで現実に起きた話かと感じてしまう位に、身近な話に思えてしまいます。
ここがポイント
思わずスルーしてしまうほどの日常のささやかな違和感は、だからこそ、知らず知らずのうちに忍び寄ってきて、気付くと得体のしれないものに、背後を取られてしまっているのです。
怪異を直接に見せないチラ見せで、怖い雰囲気を盛り上げてくれる作品です。
9、《ぜんしゅの跫》
比嘉姉妹シリーズの第五弾であり、良い話と怖い話がバランスよく収録されている5編からなる短編集です。
表題作以外は、シリーズの過去作に出てきた人々のスピンオフらしく、過去の人物名やエピソードが、ちらほら伺えます。
ここがポイント
じわじわと退路を絶たれ、怪異の手中に墜ちていく恐ろしさが、短編でありながらも、しっかりと盛り上がりがあり、楽しめます。
中でも表題作は、長編にしてもいけるであろう密度のネタを、スッキリとまとめ上げているところが素晴らしい。
10、《ばくうどの悪夢》
比嘉姉妹シリーズ、第六弾は長編であり、今回の敵は夢の怪異「ばくうど」です。
擬音が惨状を浮かび上がらる卑劣で悍ましすぎる序章であり、僕が転校してから見る悪夢が始まり、父親の友人の子供たちも同じ夢を見ていて、悪夢を見続けた子供たちは次々と死んでいくのです。
ここがポイント
唖然とするまさかの展開もあり、先が気になり、目を離すことができなくなってしまいます。
読む者を混乱させ、これでもかと恐怖に陥れる澤村氏の手腕には恐れ入ります。
怪異の恐ろしさと人の恐ろしさが、ドロドロと融合するノンストップホラーであり、満足の怖面白さが味わえる作品です。
11、《さえづちの眼》
比嘉姉妹シリーズ、第七弾であり、書き下ろし中編の「さえづちの眼」を含む三編が収録されています。
闇に浮かぶ赤い眼、青白い細い手足、明々と光る謎の物体など、得体の知れない何かに恐怖が止まらなくなってしまいます。
真琴の元に助けを求めにきた、少女たちが暮らすハウスで起きた何か「母と」、巳杵池の畔で少年たちが目撃したものは何だったのか?、「あの日の光は今も」双方とも文句なしの面白さですが、特に表題作「さえづちの眼」は、異次元の恐怖に引き込まれてしまいます。
ここがポイント
三編に共通するテーマは、「母と子」であり、比嘉姉妹の出番は少ないながらも、ホラーテイストの中に織り込まれたミステリーの面白さも味わえる作品です。
まとめ
新進気鋭のホラー作家、澤村伊智氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
斬新さを感じていただけたと思います。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。