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澤田瞳子おすすめ作品8選をご紹介~歴史との距離感を縮める~

執筆に想像力を膨らませる、澤田瞳子氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。

大学院修了後、奈良仏教史を専門に研究し、時代小説のアンソロジー編纂などを行い、2010年に「孤鷹の天」という作品で小説家デビューを果し、2011年、同作で、第17回中山義秀文学賞を最年少受賞します。

2012年に「満つる月の如し 仏師・定朝」で、第2回本屋が選ぶ時代小説大賞、同作で2013年、第32回新田次郎文学賞を受賞します。

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澤田瞳子おすすめ作品8選をご紹介~歴史との距離感を縮める~

史実の人物を扱う時は、その人の歴史上の話や、資料は全部使うようにして、その上で何が載せられるか考え、ここのチェックポイントは必ず通過しないといけないという課題をクリアした上で、何が書けるかを考えるそうです。

2020年「駆け入りの寺」で、第14回船橋聖一文学賞を受賞し、そしてついに、2021年「星落ちて、なお」で、第165回直木賞を受賞します。

そんな澤田瞳子氏のおすすめの作品を8選ご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。

1、『孤鷹の天』

奈良時代(恵美押勝の乱の頃)、国の未来を担う為に、教育を行う公設校である大学寮で、切磋琢磨し合う学生たちの群像劇であり、儒教と仏教、天皇と上皇の政変に巻き込まれていく、大学寮の学生たちを追いながら、天平という時代を凄まじく壮大に描いた話です。

ここがポイント

志を貫こうとするがため、時代が大揺れする様は、これも歴史のひとこまを担っていることだと、ただただ重く受け止めてしまいます。

馴染みのない時代で、登場人物の名前も読みにくく、覚えられないながらも、人間の生き様に深く感動してしまいます。

国を良くしたいと願う、学生たちと、登場人物の熱い想いに感動する作品です。

※恵美押勝(藤原仲麻呂)乱:朝廷権力をめぐり、藤原仲麻呂と孝謙上皇が争った内乱。

2、『満つる月の如し 仏師・定朝』

藤原道長が権勢を振るう平安中期、若き天才仏師、定朝と、その才に魅せられた叡山の学僧、隆範の二人の成長物語です。

平安時代、貴族の煌びやかな生活の一方で、飢餓や疫病、貧困に喘ぐ庶民を前に、仏像を彫ることに疑問を抱く定朝が、行き着くのは、中務の顔に見た慈悲相を写した平等院鳳凰堂の阿弥陀如来坐像だったのです。

貴族の政争、中務、小式部の彰子付の女房の生き方などが描かれていて、まるで絵巻物を見るような思いがしてしまいます。

ここがポイント

平安時代の貴族社会の光と、庶民貧民たちの影、政争に勝った者たちの栄華と敗れた者たちの悲哀、そこから生じる苦しみに心を砕く者たちの想いが感じ取れる作品です。

3、『日輪の賦』

壬申の乱を経て、大宝律令を発布するまでの持統天皇(讃良大王)を主人公にした話です。

7世紀の終わり古よりの蔑称「倭」の名に甘んじる小国は、唐と新羅の脅威にさらされていたのです。

改革を急ぐ女王、持統天皇によって、国の仕組みを根本から変える律令の編纂が命じられる裏で、反対勢力が謀略を張り巡らしていたのです。

ここがポイント

既得権や身内の栄達に拘る豪族と、国としてどう生き残るか、そのためにあるべき姿を考え、その実現に向けて闘う人々がいたのです。

歴史小説としても、読み応え十分であり、現代に照らし合わせてみても、学ぶことは多いと思われます。

人としての在り方と国の在り方、律令は誰の何のためのものなのか、ということを考えさせてくれる作品です。

4、『与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記』

東大寺毘盧舎那仏鋳造の労役の為、平城京に招集された近江国の二十一歳の真楯の視線で、造仏所の労働とその人間模様が、細かに描かれた話です。

中心人物は炊屋で働く炊男の宮麻呂で、数ある炊屋の中でも、とび抜けて美味しい飯をつくるのです。

ここがポイント

厳しい労働での毎日の楽しみは、何といっても美味しいご飯であり、奴婢たちにも分け隔てなく思い遣りを示す宮麻呂の出自を真楯は不思議に思っていました。

いずれにしても、故郷を遠く離れて一緒に働く仲間たちが、お互いを尊重し合い、問題を解決していく様が、当時の生活や風習を交えて、丁寧に描かれている作品です。

5、『火定』

奈良時代が舞台となっていて、天然痘の大流行への対処を余儀なくされる、施薬院の人々の苦悩を描いた話です。

原因も治療法も効く薬も分からず、対処療法に頼るしかない当時、人々の不安に付け込んで、高額なお札を売りつけて、金もうけに走る者、恐怖から暴徒化する者も現れたのです。

群集心理はコロナ禍の現在と何ら変わりはなく、不安な日々だけが悪夢のように、迫ってきていたのです。

ここがポイント

それでも、今も昔も寸化を惜しんで、病に向き合う医師たちがいて、その想いが数々の災禍を乗り越え、今の繁栄を築いているのです。

真に恐ろしいのは、感染症そのもの以上に、それを受け入れられない人間とその愚かさなのです。

6、『駆け入りの寺』

皇女を住持とする比丘尼御所を舞台にした7編からなる連作短編集です。

尼と寺侍の暮らしぶり、お寺同士の関係や、何かから逃げてお寺に来た人々の物語に載せて、先代住持の普明院に育てられた静馬の成長も描かれています。

聞きなれない御所言葉に少し戸惑いますが、事件や揉め事が起きても、誰も断罪されない優しい話が綴られています。

生きていくのは、時にはしんどく、辛くもあるのですが、逃げるのはちっとも卑怯ではないのです。

ここがポイント

逃げる場所があり、受け止めてくれる人がいるだけで、明日また生きられるのです。

時に温かく、時に厳しい普明院が、歩んできた人生が、ほろ苦く心に残る作品です。

7、『星落ちて、なお』

画鬼と呼ばれた、河鍋暁斎を父に持ち、父の影に翻弄され、激動の時代を生き抜いた女絵師、河鍋暁翠の一代記です。

天才絵師を父に持つ生涯にわたる葛藤、父だけでなく、父に似た兄の関係性に加え、江戸の名残が残る時代から、近代色強まる時代の社会の変遷、美術界の変化も描かれていて、楽しめます。

そして時代は明治・大正と移り、世の風潮は西洋画に傾き、旧弊とみなされても、とよ(暁翠)は、これまでの画風を守ろうとしたのです。

ここがポイント

暁翠にとって、その家に生まれてきたという、運命こそが、苦悩を募らせたのではないでしょうか。

ふと振り返り己の人生を見つめ、最後に画鬼の娘としてのつとめを見出した、とよに、初めて一筋の光が見えたのだと思います。

8、『恋ふらむ鳥は』

万葉の宮廷歌人として、激動の時代を生き抜いた、額田王の視線で描いた話です。

彼女は色弱という障害を周囲に秘めて、政争渦巻く宮城で孤独に耐え、己の信じる道を進む意志のある宮人となったのです。

壬申の乱の終焉を見届けた額田王に去来する感慨は、一入だったと思います。

国が滅び、政は人々の心から忘れ去られても、歌は世に残り、後世まで伝わっていくのです。

ここがポイント

儚い世を生きる身として、彼女が学び取ったのは、歌い継がれ朽ちることのない歌詠みとしての孤高の生き方だったのです。

彼女の懸命な生き様に、圧倒されてしまう作品です。

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まとめ

澤田瞳子氏の作品のご紹介は、お楽しみいただけましたでしょうか。

澤田氏の捉えた、歴史の妙味は感じ取っていただけた思います。

まだ読んでいない作品がありましたら、この機会に是非、読んでみて下さい。

新しい歴史の扉を開けて下さい。

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