読者を自らの世界に引きずり込んでしまう、望月諒子氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
愛媛県に生まれ、銀行勤務を経て、学習塾を経営しながら、2001年「神の手」(電子書籍作品)にて小説家デビューを果します。
2011年にはゴッホの「医師ガシェの肖像」を題材とした美術ミステリー作品である「大絵画展」で、日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞します。
望月諒子おすすめ作品8選をご紹介~イヤミスを突き抜ける描写~
他にも「腐葉土」、「田崎教授の死を巡る桜子准教授の考察」、「壺の町」など、読者を物語りの中へ引きづりこんでしまう作品を発表しています。
そんな望月諒子諒子氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、どうぞお楽しみ下さい。
1、『神の手』
木部美智子シリーズの第一弾であり、失踪した作家志望の女性の行方と、その彼女の作品の盗作疑惑を木部美智子が追う話です。
文芸誌の編集長の三村の元に、高岡真紀とう女性が投稿原稿を持って現れるのですが、その原稿は昔、別の女性が書いた作品と全く同じであったのです。
果たしてそれは盗作なのか、それを軸として殺人事件も絡んで、ストーリーは過去に遡っていくのです。
本来あり得ないことが、現に目の前で起きている不可解な怖さと、ミステリアスな事件に端を発する話の序盤から、謎の女性の姿が、徐々に浮かび上がってくる中盤にかけてのサスペンスフルな展開は手に汗握ってしまいます。
ここがポイント
終わらない悪夢のようなストーリーであり、読後感はあまりよくありませんが、物書きの情念、執念が圧倒的なパワーで迫ってくる作品です。
2、『殺人者』
木部美智子シリーズの第二弾であり、大阪のホテルで、連続して二人の男が猟奇的な方法で殺害される事件があり、それをフリージャーナリストの木部が追う話です。
取材を依頼された木部の前に、ある容疑者が浮かび上がるのですが、なんと木部の前で自殺を遂げてしまうのです。
犯人も動機も最初から分かっていながらも、木部が真相に近づいていく様子と、次第に明らかになっていく犯罪の手法にワクワクしっぱなしになります。
ここがポイント
木部は事件を追いながらも、女性としての性や置かれた立場、さらにはジェンダーフリーなど、自身の生き辛さを事件になぞらえて煩悶しているところが、更に物語に深みを与えているように思います、
競い合う知恵と、女同士の攻防戦に息を飲んでしまう作品です。
3、『呪い人形』
木部美智子シリーズの第三弾であり、法で裁けない悪人が次々に不審死を遂げ、彼等が入院していた病院の若き医師である工藤が、疑いをかけられる話です。
工藤医師の周りで次々に死んでいく悪人たちと、彼らを呪殺したという老婆も登場して、ストーリーは思わぬ方向へと展開していきます。
医療ミスなのか、意図した殺人なのか、それとも本当に呪いのせいなのか、二転三転する凄惨な事件を木部が冷静な判断のもと真相に迫っていきます。
ここがポイント
人間を理解しようとする物語でもあり、それが、ミステリーとしての謎解きに一体化した、あるのかもしれない、非現実的なようで、現実的な話の作品です。
4、『大絵画展』
バブル崩壊後、塩漬けになっていたゴッホの「医師ガジェの肖像」をめぐるコンゲームの話です。
ここがポイント
全ての始まりは、中年医師のちっぽけな肖像画なのですが、ただそれをゴッホが書いたというだけで、百数十億の値がついてしまうのです。
その絵をイギリスのオークションで日本人が競り落とし、日本に持ち帰り、行方不明になるのですが、銀行の債権として、倉庫に眠っていたのです。
詐欺に遭い、借金を背負わされ、絶体絶命のピンチに追い込まれた人間たちが、その絵を盗む大勝負に出るのです。
先の読めないコンゲームであり、果たしてその黒幕の正体は誰なのか。
二転三転する伏線の回収がとても見事であり、美術界の裏側についても少し知ることができる、大いに楽しめる作品です。
5、『壺の町』
神戸の高級住宅街で、引退した不動産屋の夫婦とその娘が、生きたまま焼き殺されるという猟奇的な殺人事件が発生する話です。
突然の出火、燃え残った現場からは、夫婦とその娘の惨殺死体が発見されるのです。
果たして犯人は誰なのか、そしてその動機は何処にあるのだろうか。
何処からか聞こえてくる「こいつらだけは絶対に許さない!」という声、長い年月をかけて遂げられる復習がそこにあったのです。
ここがポイント
阪神淡路大震災の影に隠れた、いくつもの事象を絡み合わせて描かれている本作は、真に心に訴えかけてくるようです。
残忍な殺人事件に隠された純愛と幸せな家族の裏の顔、そして嘆き、怒り、苦しみに生きる人々の絶望が感じられる作品です。
6、『腐葉土』
木部美智子シリーズの第四弾であり、高級老人ホームで殺害された資産家の老女の事件を、木部が取材を通して探っていく話です。
関東大震災と第二次大戦を経験し、戦後、なりふり構わず、他人を蹴落として生き抜き、莫大な富を築いた女性、笹本弥生が殺害され、唯一の相続人である孫が疑われるのです。
しかし、生き別れたもう一人の孫の存在や、別の事件とも複雑に絡まり、事件は混迷を深めていくのです。
まるでジグソーパズルのように複雑極まりない事件の真相に、木部が少しづつ近づいていきます。
ここがポイント
これは、戦後、懸命に生き抜いた弥生の人生の物語であり、圧倒的な熱を持ち、戦火の悲惨さ、人間の愚かさ、虚しさや無力さ、そして正義を突き付けてくるような作品です。
7、『田崎教授の死を巡る桜子准教授の考察』
男以外の全てを手に入れた超合理主義で、アラフォーの立志舘大学の准教授である桃沢桜子が、田崎教授の死と、大学にまつわる都市伝説の謎に迫る話です。
ある朝、同僚の田崎教授が大学の玄関ロビーで、死んでいたのです。
前日、田崎に自室に侵入されて言い争っていたことから、桜子は警察の事情聴取を受けるのです。
大学内に根強く残る幽霊伝説なども交えて、桃子は学生たちと犯人探しに奮闘していきます。
ここがポイント
本作品は、桃子と学生たちの推理と捜査が事件を解決するという、青春小説と推理小説のミックスであり、楽しめるライトノベル作品です。
8、『蟻の棲み家』
木部美智子シリーズの第五弾であり、二人の売春婦が射殺された事件と、弁当工場の悪質クレームをフリージャーナリストの木部が追っていく話です。
子どもは親を選べないというけれど、この作品に登場する子供たちの逃げ場のない毎日は、読んでいて鬱々と辛くなってしまいます。
そんな中で連続殺人と暴力が起こってしまうのですが、被害者は親から愛情を貰えないまま大きくなり、自分の身体を売って生活する女性たちだったのです。
ここがポイント
人は生まれ落ちた境遇によって人生を決定づけられてしまうのか、それは貧困と金がないだけではなかったのです。
人から対面して向き合われたこともなく、意志を尊重されることも全くなかったのです。
そんな育ち方をした人間は、想像力も持てず、人を信頼できず、自分自身を卑下してしまうのです。
そしてそれがまた幼児虐待、ネグレクトへの負の連鎖に繋がってしまうのです。
現代社会の病巣を垣間見ることができ、徐々に真相に迫る展開でミステリーの醍醐味がこれでもかと味わえる作品です。
まとめ
望月諒子氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
イヤミスを突き抜ける描写が、堪能いただけると思います。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
読書の楽しみが広がりますよ。