そこに物語が見えるから書くという、深緑野分氏のおすすめの作品7選をご紹介させていただきます。
高校卒業後、パート書店員をしていたのですが、専業作家に転向し、2010年に「オーブランの少女」という作品が、第7回ミステリーズ!新人賞の佳作に入選し、作家デビューを果します。
2015年に刊行した「戦場のコックたち」という長編小説で、直木賞の候補に挙がります。
深緑野分おすすめ作品7選をご紹介~自分が読みたいものを突き詰める~
その後も数々の文学賞を受賞したり、候補に挙がったりと目覚ましい活躍をみせています。
深緑氏の執筆に懸ける思いは「読む前と読んだ後で、世界が変わって見えるような本を書きたい」という事を以前から思っていたそうです。
また、本というものにハマったきっかけは、小学校1年生の時に母親が買ってきてくれた、ロアルド・ダールの「ぼくのつくった魔法のくすり」という児童書だったそうです。
そんな深緑野分氏のおすすめの作品7選をご紹介させていただきますので、お楽しみ下さい。
1、『オーブランの少女』
ファンタジーのようでミステリーのような、美しくて妖しい世界観が漂う5編からなる短編集です。
どの話も少女がテーマになっていて、独特な世界観があり、ミステリー要素とホラー要素が絡んでいて、外国が舞台のものはまるで、翻訳物のような言い回しを効果的に使い、雰囲気が巧みに高められています。
ここがポイント
短編とはいえ、内容が濃くて一つひとつの物語の厚みも物凄く、様々な書籍から影響をうけていることも伺えます。
また、舞台設定と情景描写が緻密で、ある時は昭和初期の女学校に、ある時は雪に閉ざされた北国に、溶け込むように自然と世界に入ることができるのです。
そして全編に登場する、まだ大人になりきれていない少女たちは、無垢で無邪気で可憐で残酷なのです。
これがデビュー作とは全く、恐れ入ります。
2、『戦場のコックたち』
第二次世界大戦のノルマンディー上陸後からの、アメリカ兵の壮絶な戦線と日常を描いた話です。
戦争という悲惨な非日常の中でも、人は食し、友情を育んで、喜怒哀楽の日々を刻んでいくのです。
ここがポイント
戦場のコックが、その時々おこる事件を謎解く形で進められていくのですが、戦争の悲惨さや人間の醜さ、弱さ或いは温かさを浮き彫りにしています。
戦争の悲惨さは目を覆うばかりですが、同時代の日本軍の兵站とは、天と地ほどの差があることを痛感してしまう作品です。
※兵站(へいたん):戦闘部隊の後方にある、軍の諸活動、機関、諸施設の総称であり、人員、兵器、食糧などの補給にあたる活動機能の事。
3、『分かれ道ノストラダムス』
幼なじみの死のことをきっかけに、新興宗教絡みの事件に巻き込まれることとなった高校生の話です。
主人公は高校1年の少女、日高あさぎで、中学時代に初恋の相手であった基の3回忌(病死)で、彼の祖母から渡されたノートを受け取ったことで、不穏でサスペンスフルな展開になってしまうのです。
折りしも世の中はノストラダムスの大予言が取りざたされる99年の夏であり、初恋相手の基が死なずに済んだ可能性について、同級生の八女君の協力の元、探りはじめていくのです。
ここがポイント
終末の預言が指示したとされる月のある街を舞台に、高校生のあさぎとその友人たちが、過去への後悔や身近な人の死や、差し迫る終末への恐怖、将来への不安などを乗り越えながら、カルト集団を裏で操る人間の悪意に立ち向かうのです。
懐かしくて新しい、青春冒険サスペンス作品です。
4、『ベルリンは晴れているか』
世界大戦後のベルリンが舞台で、度重なる動乱や変革の中、主人公である17歳の少女アウグステは、恩人の訃報を彼の甥に伝えるべく、旅立つ話です。
少女の目を通して見える世界は残酷で、少女が恐怖の中で極限状態だったことが伝わってきます。
アーリア人、ユダヤ人、障害のある人など、同じ人間なのに差別され、お互いに密告し合って疑心暗鬼になることも恐ろしく感じてしまいます。
ここがポイント
ナチス・ドイツに傾倒し迫害する弱さも、そして暴力に恐怖する弱さも、巨大な暴力を受け止めなければならなかった、当時の人々の苦痛の深さが手に取るように分かります。
敬虔な心持にしてくれる作品です。
5、『この本を盗むものは』
書籍蒐集家を曽祖父に持つ女子高生の深冬が、呪いをかけられた本の物語に、飲み込まれてしまう街を救う為に戦う話です。
街が本の世界と化し、泥棒を見つけなければ、街が物語の世界に変えられてしまうという呪いと深冬は対峙していきます。
ここがポイント
物語の中で誰が本を盗んだ犯人なのか、呪いをかけた経緯は何なのかなど、たくさんの謎が散りばめられていて、ミステリーとして十分に楽しめます。
また、飲み込まれる世界が様々で面白く、少しずつ謎が明らかになっていく過程に、目が離せなくなってしまいます。
存分に想像力を働かせて楽しめる作品です。
6、『注文の多い料理小説集』
「料理」をテーマに、7人の小説の名手が、奏でるとびっきり美味しいアンソロジーです。
料理は作ったり食べたり、人の生活で不可欠な要素だからこそ、そこから話が広がっていくのは、自然なのです。
ここがポイント
嬉しい時も、哀しい時も、感動する時も、絶望する時も、そこに料理があり、人生を彩ってくれるのです。
やっぱり、食べ物の話は平和であり、短編集は新たな出会いがあります。
7、『短編宇宙』
「宇宙」がテーマの無限の想像力が煌めく、7つのアンソロジーです。
心温まる家族の物語や、前代未聞のSF作品等、なかかなバラエティーに富んだ作品揃いで楽しめます。
コロナ禍のことも題材にしている作品もあって、何とか収まらないものかと思ってしまいます。
ここがポイント
それぞれの”らしさ″が盛り込まれた、宇宙という概念が描かれている作品です。
まとめ
深緑野分氏の作品のご紹介はお楽しみ頂けましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみて下さい。
新しい発見があるかもしれません。