強烈なインパクトで圧倒する、白井智之氏のおすすめ作品8選をご紹介させていただきます。
大学卒業後の2014年「人間の顔は食べづらい」という作品が、第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補に残り、この作品で作家デビューを果します。
続く作品「東京結合人間」でも第69回日本推理作家協会賞の候補に挙がり、鬼畜系特殊設定パズラーの称号を授けられます。
白井智之おすすめ作品8選をご紹介~仕掛けを最大限に生かす~
白井氏はもともとミステリーを読むことが好きで、大学在学中に、自分でも書くようになったとの事です。
高校時代には飴村行氏の粘膜シリーズにハマり、こんな愉快なものがあるのかと、衝撃を受けたようです。
作品の構成としては、ミステリーとしての仕掛けを最大限に生かす手法として、特殊設定を用いるという感覚で、描いているとのことです。
ミステリーを書き上げるのはとても大変だけど、とても楽しいからやっていけるのだそうです。
そんな白井智之氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、『人間の顔は食べづらい』
安全な食料の確保のために、作り出した人間のクローンを食べるようになった世界の話です。
あらゆる動物がウイルスに侵されて、人間も人口が激減し、そんな危機的状況で、人間にだけ有効なワクチンが開発されます。
そして動物を食べることができなくなった人間は、クローン人間を養殖して食べることになるのです。
ここがポイント
一つ謎が解けたかと思えば、次々に矛盾点が指摘され、これでもかという具合に推理合戦が繰り広げられ、二転三転する展開に翻弄さされ続けてしまいます。
怒涛の展開とインパクトに圧倒される作品です。
2、『東京結合人間』
男女が結合し、骨格は巨大になり、4つの目に4本の手足と二つの顔を持つ、一人の人間が誕生する世界の話です。
しかし稀に、オネストマンと呼ばれる少数派が生まれ、一切、嘘がつけない存在が出来上がってしまうのです。
少女売春組織を描いた前半と、絶海の孤島での連続殺人が起きる後半の、二部構成でストーリーは展開していきます。
結合人間やオネストマンという特異な設定が、真相究明の壁になり、逆に鍵にもなります。
ここがポイント
数々の伏線も張り巡らされていて、複雑にして緻密に描かれています。
特殊設定を存分に生かした、本格的な推理作品です。
3、『おやすみ人面瘡』
人の顔をした脳瘤という人面瘡が、身体のあちこちにできる病気が蔓延した世界の話です。
良性だと人面瘡をコントロールすることができるのですが、悪性だと脳が侵されてしまい、1~2歳程度の知能の人面瘡たちが身体を支配してしまうのです。
たとえ脳死状態になっても、人面瘡が生体能力だけを生かして、身体を動かしていくのです。
人瘤病で大きな痛手を受けた海晴市で起きた殺人事件、そして巨大化した人瘤病患者のパルコを巡る諍いを、人面瘡が推理していくという何とも奇妙な話です。
ここがポイント
構成の妙と、独特な世界観が味わえる作品です。
4、『少女を殺す100の方法』
14歳の少女が殺される話が、5話収録された短編集です。
殺され方もいろいろで、密室状態の教室で20人殺されるとか、巨大ミキサーでのすり潰しとか、墜落死とか、相変わらずのグロテスクな舞台設定です。
ここがポイント
しかし、きちんとミステリー要素を持っていて、伏線もきっちり張られていて、5W1H等も絡み合っているので楽しめます。
五つのパターンの謎解きを1冊で満喫できる、ちょっと得した気分になれる作品です。
5、『お前の彼女は二階で茹で死に』
特殊人間のミステリーを集めた、4編からなる連作短編集です。
壁に張り付くことができるミミズ人間や、脱皮するトカゲ人間が登場するなど、怪奇・グロテスク趣味は全開ですが、推理はあくまでも本格ミステリーなのです。
倫理の欠片もない最悪刑事が紡ぐ展開や、目を背けたくなるような、エログロな流れにもきちんと伏線が張られています。
ここがポイント
そして、余すところなく伏線を回収するガチガチの論理に、支えられた本格多重推理が伺えます。
タイトルだけでなく、読み手を翻弄させてしまう作品です。
6、『謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー』
館に魅せられた6人の作家たちが書き下ろす、色とりどりの未来を集めた6つの話です。
・「思い出の館のショウシツ」はやみね かおる・・・ライトな読み心地かと思いきや、ラストに仕掛けが・・・。
・「麦の海に浮か檻」恩田 陸・・・この美しくも狂った世界観は流石です。
・「QED~ortus~ ―鬼神の社―」高田 崇史・・・奉られる神々のことを改めて考えさせられます。
・「時の館のエトワール」綾崎 隼・・・SF的な謎の設定でたのしませてくれます。
・「首無館の殺人」白石 智之・・・相変わらずのグロと暴力がてんこ盛りです。
・「囚人館の惨劇」井上 真偽・・・ホラーとミステリーを融合させた圧巻の作品です。
ここがポイント
それぞれの作家の世界観が、少しだけ味わえる作品です。
7、『平成ストライク』
平成の時代に起こった様々な事件や事象を、9人の作家が、それぞれのテーマで書き下ろすトリビュート小説です。
ここがポイント
平成にデビューした作家9人が実際に起きた事件や、流行った物事をテーマにして独特の筆致で描いています。
実際に平成に起きた大事故や大事件、社会現象等が背景になっていて、重く切なくなるような作品が多いのも頷けます。
令和の今、平成を振り返る切り口になると思います。
短編でありながら、かなりパンチ力があり、読み応えがあって、満足度の高い作品です。
8、『そして誰も死ななかった』
絶海の孤島に招待された5人の作家が、次々に奇怪な死を遂げていく話です。
タイトルから想定される展開は、いい意味で裏切られて、先がなかなな読むことができません。
ここがポイント
異常な状況が異常なトリックを可能にして、殺された証明と殺していない証明を難解なものに置き換えています。
見事な伏線回収は勿論のこと、特異な設定がふんだんにトリックに盛り込まれたミステリー作品です。
まとめ
白井智之氏の作品のご紹介、はお楽しみいただけましたでしょうか。
心して、かからないとかなり衝撃的な内容が描かれていますので、初めての人は戸惑ってしまうかもしれません。
キチンとしたミステリー仕立てになっているので、ハマる人はとことんハマってしまうと思います。
少しグロテスクなミステリーの楽しさを満喫していただければ、幸いです。