包み込まれるような温かさを感じる、友井羊氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
2011年に「僕はお父さんを訴えます」という作品で、第10回「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞を受賞して作家デビューを果します。
そして2014年には「ボランティアバスで行こう」という作品がSRの会が選ぶ2013年ベストミステリーの国内第1位に選ばれます。
友井羊おすすめ8選をご紹介~ほとばしる感情を大切に描写~
最近の作品である「スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫」では繊細な筆致とミステリーの融合で高い評価を受けて注目されています。
また、人気の「スープ屋しずく」シリーズは、一応ミステリーのジャンルになるので、なるべく食べ物とトリックはつなげるようにしていて、この食べ物があるから、ミステリーが成立するといったストーリーになるようにしているそうです。
そんな友井羊氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきますので、お楽しみください。
1、『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』
スープ屋しずくの謎解き朝ご飯シリーズの第一弾であり、美味しい朝ご飯を出す、「スープ屋しずく」が舞台の5編からなるコージーミステリーの連作短編集です。
オフィス街にひっそりとある、スープ屋しずく、それだけでもワクワクしてしまいますが、どれも身体に良さそうで美味しそうなのです。
ストーリーは短編ごとに主人公が直面する問題をお店のオーナーである麻野が解決していきます。
ここがポイント
日常の謎解きですが、心温まる穏やかな雰囲気で展開していき、各所に散りばめられた麻野の過去に関する謎も、最終章で明かされます。
サクッと読めるライトな語り口も消化に優しく、じんわりした後味が味わえる作品です。
2、『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 今日を迎えるためのポタージュ』
スープ屋しずくの謎解き朝ご飯シリーズの第二弾であり、今回は4編の短編が収録されていて、最初の2編は、いつもながらの日常ミステリーで和ませてくれるのですが、後の2編は狩猟ガールと犯罪がらみの展開になっています。
美味しそうなスープの描写に隠れてしまいそうになりますが、ちょっとした悪意が、人を追い詰めたり、悩ませたりしていることだってあるのです。
スープ屋しずくに集う人たちを癒すのは、料理やスタッフだけではなく、常連客がもたらす安心感の存在も大きいのかもしれません。
ここがポイント
かなり深刻な問題が隠れていたり、生々しい人間の感情が描かれていたりと、ただ単に優しいだけの物語ではありませんが、どの登場人物も誰かの為を思って行動しているので、救われます。
包み込まれるような温かさを感じる作品です。
3、『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 思いを伝えるシチュー』
スープ屋しずくの謎解き朝ご飯シリーズの第三弾であり、スープ屋しずくに集う人々の人間関係を修復する5編からなる連作短編集です。
栄養満点で美味しそうなスープと、オーナーの麻野が紐解く謎の鮮やかな結末には、いつも恐れ入ってしまいます。
提示される謎はどうも身勝手な動機によるものが多い印象がありますが、彼をそれを責めず、優しく包みこんでしまうのです。
ここがポイント
今作品も相変わらずの美味しそうな料理と麻野と理恵の距離が少し進展したような感じですが、やはり亡くなった奥さんの存在が大きく影響しているのです。
大切なことを再認識させてくれる作品です。
4、『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース』
スープ屋しずくの謎解き朝ご飯シリーズの第四弾であり、今回は割と重ためのテーマの5編からなる連作短編集です。
ここがポイント
小学校のイジメとか、児童虐待とかの深刻な問題を扱いながら、暗くなり過ぎず、重くなり過ぎずで、優しい結末にたどり着く加減が丁度よく描かれれいます。
今作品も本当にどれも美味しそうなスープの描写に思わず喉が鳴ってしまいます。
それほどミステリー部分の複雑さはないものの、サラッと読めて丁度良く、少しずつ進展する麻野と理恵の距離にほっこりさせられます。
温かくて元気が貰える作品です。
5、『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 子ども食堂と家族のおみそ汁』
スープ屋しずくの謎解き朝ご飯シリーズの第五弾であり、子ども食堂を通して様々な親子と関わることで、本来は大人の都合や問題なのに、子供にしわ寄せがいってしまっていることに、気付かされる4編からなる連作短編集です。
スープ屋しずくの麻野が、子ども食堂で出会った親子たちの謎を解き、その傷を癒していきます。
それぞれの親子が抱える問題が、実際に現在、世の中で問題にされているものばかりです。
ここがポイント
内容としては、辛くて苦しいものばかりなのですが、合間に出てくる、麻野のスープによって、心も身体も癒されます。
安定した面白さと心が温まるシリーズ作品です。
6、『僕はお父さんを訴えます』
信頼と尊敬を寄せる絶対的な存在である父親を、自分がかわいがっていた愛犬を殺した疑いで、裁判を起こして訴える中学生の話です。
母親を亡くし、父親と愛犬と暮らしていた向井光一は、心のよりどころであった愛犬リクが虐待され、撲殺されてしまうのです。
犯人捜しをすることになった光一は弁護士を目指す久保敦や同級生の原村沙紗など周囲の協力を得ながら、民事訴訟を実の父親に起こすのです。
そして思いもよらない方向に話は進んでいき、裁判シーンは臨場感と緊迫感に満ち溢れて、ただのミステリーとしてだけでなく、現代社会の歪を浮き彫りにしていったのです。
ここがポイント
予想をきれいに裏切ってくれる作品です。
7、『魔法使いの願いごと』
目の見えない美しい少女ヒカリが、別荘近くの森の中で、ヒトという名の魔法使いに出逢い、キレイなものだけが見える不思議な目を手に入れる話です。
優しい文体の温かい物語であり、童話のような印象を受けてしまいます。
表現がとてもきれいで、ヒカリの閉じた心を開き、外の世界を教えてくれるヒトの存在がとても優しく描かれています。
何をキレイと思うのかなんて、人それぞれでありますが、ヒカリの場合は母が美しいと語ったものが、キレイなものだったのです。
ここがポイント
子供にとっての親の存在というものは計り知れない位に大きなものなのです。
美しさとは何かを考えてしまう作品です。
8、『無実の君が裁かれる理由』
冤罪がテーマの4編からなる連作短編集です。
人の記憶や目撃証言は想像以上に曖昧なものであり、悪意がなくても冤罪事件は簡単に起きてしまうものなのです。
そして、どんな状況にあっても、もし罪を認めてしまえば、覆すことは非常に困難極まりなくなってしまうのです。
身に覚えのないストーカー扱いをされた大学生の牟田君が、探偵をしている先輩の力を借りて、冤罪を晴らすという導入部分から、学内での器物破壊、痴漢、そして殺人と話が展開していきます。
ここがポイント
噂は一人歩きをして、そしてそれが事実になってしまうのです。
起訴されれば十中八九、有罪であり、卑劣な犯罪は許すことはできませんが、自分や家族がある日突然、巻き込まれたらと思うととても尋常ではいられません。
冤罪の怖さが良く分かる作品です。
まとめ
友井羊氏の作品はお楽しみいただけましたでしょうか。
まだ、読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
読書の楽しみがひろがりますよ。