怖さを追求する、牧野修氏のおすすめの作品8選をご紹介させていただきます。
高校時代から、筒井康隆氏主宰の同人誌「ネオ・ヌル」の常連投稿者であり、1975年に「'74日本SFベスト集成」に「ミユキちゃん」が掲載されます。
1992年「王の眠る丘」という作品が第1回ハイ!ノヴェル大賞を受賞し、本人によるとこれが作家デビューという認識らしいです。
牧野修おすすめ作品8選をご紹介~自分の中の恐怖を引き出す~
初期のノベライズ中心の仕事から、1996年S‐Fマガジン掲載の連作「MOUSE」を刊行して、SF方面でも高い評価をうけます。
また、「屍の王」でホラー作家としても評価されて以後はSF・ホラー作家として活躍しています。
同じく作家の小林泰三、田中啓文、田生哲弥と合わせて「まんがカルテット」と呼ばれているそうです。
そんな牧野修氏のおすすめの作品8選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
『MOUSE』
通常の世界では生きられない、子供たちが集まるネバーランドの話です。
24時間昼夜を問わず、絶えずドラッグを大量に摂取し、夢と現の狭間に生きる少年少女の荒廃した楽園、それがネバーランドなのです。
ここがポイント
今見ている世界は大脳が作り出したものに過ぎず、真実と虚構の境目など無いに等しいのです。
ちっぽけながらも強かに生きて行く姿に感動を覚える作品です。
『だからドロシー帰っておいで』
平凡な主婦の響子が、異形の生物が闊歩する世界に紛れ込んでしまう話です。
「オズの魔法使い」をベースとした物語であり、ジャンルについても冒険ファンタジーやサイコホラー的な要素があります。
現実と精神世界を行き来し、精神世界ではいろんな冒険をしているのに、精神の抜けた肉体は現実世界で、精神世界とシンクロした冒険をするのです。
ここがポイント
それぞれの世界で冒険が楽しめる作品です。
『屍の王』
娘を犯罪被害で亡くしたエッセイストが、再起をかけた書きだした小説「屍の王」が、ある人物の過去を巡る自伝的な小説と同じタイトルだった話です。
そして自分が書き始めた作品に呑み込まれていく様子が、何とも恐ろしく描写されているのです。
ここがポイント
グロテスクであり、虚実が混じる設定なので、不可解な不条理シーンが多く、ストーリーの方向性が分からなくなりますが、却って今後の展開が楽しみになります。
ヒタヒタ、じりじりと迫ってくる狂気と恐怖の作品です。
『水銀奇譚』
シンクロに打ち込む、どこか冷めた少女の香織が主人公であり、彼女の小学校時代のオカルトクラブに関わった人たちが次々に溺死体で発見される話です。
現実にはいそうもない小学生、大学図書館並みの小学校の図書館など、リアル性とは程遠く思いましたが、後半にかけてのストーリーは展開は楽しませてくれます。
特に少年が自分の感情にとらわれて、怪物化する場面などはグロテスクで醜いですが、ピュアに感じてしまいます。
ここがポイント
期待と謎を残した終わり方に納得できる作品です。
『そこに顔が』
邪悪な顔の妄想にとらわれた人が次々に自殺していく話です。
何故、人は幽霊のことを怖いと思うのか、ということを前提に書かれた作品なのだそうです。
作品の中に出てくる、死に近づくための実験や顔の描写は、とても恐怖を感じてしまいます。
ここがポイント
ぼんやりとしていて、それでいて、不吉な幻想に包まれていくような厭さがあるのです。
あなたの後ろにも、ほら、そこに顔が・・・。
生理的な方面からの恐怖を煽る作品です。
『破滅の箱』
町を悪意に満ちた犯罪地域に変える、壮大な実験に巻き込まれた、生活保安課防犯係特殊相談対策室のメンバー達の話です。
組織のはみ出し警察官を集めて、面倒な通報などに対応させるために作られた相談対策室なのです。
そしてそこには非現実的で変な相談ばかりがきたり、町には異常に犯罪が多いのです。
殉職者、リタイア者が出てしまい、その理由は話が進むにつれて徐々に判明してくるのです。
ここがポイント
雰囲気はホラーであり、設定はSFで、展開はミステリーな作品です。
『再生の箱』
破滅の箱に続く完結編であり、町は治安を取り戻して、犯罪者やホームレスを排除する街へと変貌したのです。
しかし、再び町を覆う不穏な空気が発生してしまうのです。
誰が黒幕で動機は何なのか、全体的な流れは前作同様に重く、最後は見事にやられた感が残ります。
ここがポイント
中盤以降の畳みかける展開は、息つく暇もない怒涛の面白さがあります。
『月世界小説』
日本語を奪い取ろうと企む組織と、物語を語り、言葉の機関銃で戦う主人公たちの話です。
ゲイパレードに友人と参加した主人公が、突然現れた天使に襲撃されてパラレルワールドに飛ばされます。
そして破壊と殺戮の限りを尽くす天使に対して、妄想世界に避難した主人公は仮想言語でバトルを始めるのです。
ここがポイント
言語の力が恐ろしほどに鮮やかに描かれていて、SFを盛り上げる超大作です。
まとめ
牧野修氏の作品はいかがでしたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
楽しさが広がりますよ。