精微な心理描写が特徴の真保裕一氏おすすめ作品12選をご紹介させていただきます。
高校卒業後、アニメ制作を創作することに希望を見出し、苦難の末、アニメ制作会社であるシンエイ動画に入社します。
仕事をする傍ら、創作活動を続け、1991年に「連鎖」という作品で第37回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューを果します。
作家デビューを機にシンエイ動画を退社するのですが、その後も交流を続け、映画「ドラえもん」等の脚本を担当しています。
真保裕一おすすめ作品12選をご紹介~入念なプロット作りで描写~
真保氏の執筆に取り組む姿勢としては、自分が読んでみたいものを書いているそうで、小役人シリーズのような地味なもの(自分ではそう思っていないということです)もあれば、軽快でスピーディな展開のものもあるそうです。
本を読む幸せな時間を読者に与えられたら、こんな幸せなことはないそうです。
作風としましては、主に推理小説やサスペンス小説を手掛けていますが、最近は時代小説や経済小説といった新しいジャンルにも挑んでいるそうです。
そんな真保裕一氏のおすすめの作品12選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
《連鎖》
汚染食品の横流しの真相究明に乗り出す、元食品衛生監視員の話です。
元商品Gメンが追っていった先には、チェルノブイリ原発事故の放射能汚染食品の輸入問題が絡んでいたのです。
そして、それに関与した親友の自殺に疑惑を抱き、脅しや暴行を受けながらも、執念で真実を追っていく姿が描かれています。
ここがポイント
登場人物、それぞれの行動が幾重にも重なり、最悪の連鎖を招いてしまいます。
目まぐるしく変わる展開の結末は予想外であり、読み応えがある作品です。
《ホワイトアウト》
巨大ダムが武装グループによって占拠され、職員、地元の住民が人質に取られ、50億円が要求される話です。
警察は吹雪の為、ダムに近づくことはできなく、事件に巻き込まれた女性と仲間を救う為に、一人の男が立ち上がります。
ダムや雪山の様子がとても精微に描かれていて、アクションも迫力満点で、手に汗を握ってしまうほど緊張します。
また、犯人グループと主人公との疾走感あふれるスリリングな展開も圧巻です。
ここがポイント
まさにハリウッド映画をみているか如く、壮大なスケールに感動する作品です。
《奪取 上・下》
ヤクザから借りた友人の借金を返すために、主人公が偽札づくりを始める話です。
偽札づくりの過程が、実に専門的、且つリアルに描かれていて、作者が偽札づくりの経験者ではないかと疑ってしまうくらい、細かく描かれています。
復讐の為に犯罪を犯していますが、暗くなく、痛快であり、頭脳戦やアクションありの二転三転の展開が楽しめます。
ここがポイント
最後までスリリングに楽しめる作品です。
《奇跡の人》
交通事故に遭い、脳死判定された主人公が奇跡の復活を遂げ、記憶を取り戻すために、自分探しの旅に出る話です。
8年間の入院生活を経て、社会に復帰したものの、一切の記憶を失っていたのです。
ここがポイント
そして徐々に事故前の衝撃の記憶と対峙しいくのですが、記憶が戻りつつある本人にとっては悲しい過去を知ってしまうことになるのです。
救いの少ない話のように思いますが、全編を通じて、母の愛に満ちあふれた作品として受け取れます。
《ボーダーライン》
ロサンゼルスで探偵として働く二世のサム・永岡に日本人の人捜しの依頼が舞いこむ話です。
しかもその日本人は、なんと、天使のような笑顔で簡単に人を殺す殺人鬼だったのです。
幼いころから、笑顔で昆虫や妹に残虐な行為をしていたが、精神鑑定では異常は認められなかったのです。
ここがポイント
生まれながらの犯罪者ということがテーマとなっていて、重く考えさせられる作品です。
《朽ちた樹の枝の下で》
森林作業員の主人公が、森を彷徨っていた女性を救出する話です。
しかし、その女性は治療中の病院から突然、逃走してしまうのです。
何故、夜明け前の山の中に一人でいたのか、何者なのか、自殺でもするつもりだったのかと、女性への謎は深まるばかりです。
失踪して、逃げる女性を捜すうちに、そして過去の自分と向き合う中、様々な思惑と交錯する主人公の心情が切なく描かれています。
ここがポイント
人の心の事実を大切にする、人間愛の伺える作品です。
《繋がれた明日》
殺人を犯して、服役し、仮釈放となった若者を描いた話です。
喧嘩で相手を殺してしまった若者ですが、罪を償い、人情味あふれる保護司のおかげで、住居、仕事先を手に入れていきます。
しかし、世間や被害者家族の冷たい目にさらされて、挫折を味わい、それでも一生懸命に歩み続けていくのです。
人の命を奪ってしまったのですから、どんな事情があろうと、一生背負っていかなければならないのです。
ここがポイント
本当の贖罪は何だろうかと、考えてしまう作品です。
《真夜中の神話》
薬学研究者の女性がインドネシアに向かう途中に飛行機事故に遭い、一命をとりとめる話です。
奇跡的に助かった女性は、山奥の村で神秘的な歌声を持つ少女と出会い、その歌声で驚異的に怪我が回復していくのです。
一方、町では猟奇的な殺人事件が発生し、誰が味方なのか敵なのかが分からなくなってしまいます。
ここがポイント
本当に大切なもの、守るべきものは何なのかを示唆してくれている作品です。
《灰色の北壁》
山をテーマにした3編からなる中編集です。
舞台は山なのですが、それぞれの話に描かれているのは、人々のそれぞれの深い思いなのです。
雪山の厳しい環境に身を晒しながらも、心の中には弱さを抱えている、登場人物たちに共感していく中で、予期しない結果に辿りついてしまいます。
ここがポイント
過酷な自然や登場人物の心理描写が精緻に描かれている作品です。
《覇王の番人 上・下》
明智光秀を主人公にし、「本能寺の変」の黒幕は誰なのかとういう、歴史的認識を覆す話です。
今までの明智光秀の人物像は、ズルい優等生のような扱いで描かれたり、信長への媚びへつらう態度など様々でしたが、本書の明智光秀は等身大の人間として描かれています。
ここがポイント
信長に対する、「本能寺の変」までの揺れに揺れ動く心境が描かれていて、結論のシナリオは全て、あの黒幕だったのです。
歴史小説の面白さが十分に満喫できる作品です。
《デパートへ行こう》
明かりの消えた、真夜中のデパートで起きる、奇跡の一夜の話です。
老舗デパートで起きた、ある一晩のドタバタ劇を描いています。
とにかく、登場人物が多く、それぞれの人間がそれぞれの事情を抱えていて、しかもお互いに微妙に関係しているのです。
夜のデパートに集まった人たちのいろんな思いが最後に集約される展開は見事というほかはありません。
ここがポイント
ハッピーエンドで少しの感動もあって、映画化されると面白い作品だと思います。
《正義をふりかざす君へ》
別れた妻の依頼で、七年前に去った故郷へ舞い戻る、男の話です。
そして舞い戻った男に仕掛けられる数々の罠、過去の出来事や選挙などに巻き込まれ、展開が二転三転する中、本当の悪人は誰なのか、混乱の極みになります。
尊敬していた先輩を疑い、その悪意と罪を暴いていき、周囲を貶めていった者や、正義をふりかざすことが、いかに苦しいことなのかがうまく描かれています。
ここがポイント
本当の正義の意味を問い直す作品です。
まとめ
新保裕一氏の作品を楽しんでいただけましたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。
そしてもっと本を読む時間を楽しんでいただければと思います。