独特の雰囲気のある、井上夢人氏のおすすめ作品を10選ご紹介させていただきます。
大学へ進むも半年で中退し、プロダクションに入社し、脚本を書いたり、PR映画や記録映画の助監督として経験を積んだ後、仲間3人で映像制作会社を作りますが、1年足らずで倒産してしまいます。
そんな中、徳山諄一とコンビを組み、岡嶋二人のペンネームで1982年に「焦茶色のパステル」という作品で第28回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビューを果します。
井上夢人おすすめ作品10選をご紹介~心が震える描写で魅了する~
その後は二人で創作活動を続けていくのですが、1989年刊行の「クラインの壺」という作品を境にコンビは解消されて、井上は井上夢人というペンネームで創作活動を続けていくのです。
1992年に「ダレカガナカニイル」という作品で井上夢人という名で再デビューを果します。
岡嶋二人時代からの、軽快で上品な文体はそのまま引き継がれていて、内容的には本格物よりもホラーやSFへの傾斜が強くなってきています。
そんな井上夢人氏のおすすめの作品10選をご紹介いたしますので、楽しんでください。
《ダレカガナカニイル》
警備していた、新興宗教団体の施設の火災をきっかけに、主人公、西岡に誰かの声が聞こえはじめる話です。
火災で教祖が死を遂げて以来、西岡の頭の中で他人の声がし始め、ここはどこ?あなたは誰?と訴えてくる声の正体は果たして誰なのか。
ここがポイント
終盤に急展開して、声の正体が分かっていく段階で、謎が謎を呼びこみ、スリル満点になり、かなり楽しめます。
衝撃と切なさが残る作品です。
《あくむ》
悪夢のような話ばかりを詰め込んだ5編からなるホラー短編集です。
何が現実で何が夢なのか、様々な理由でその境界線があやふやになっていく、恐怖が描かれれいます。
サクッと読めて、ヒャッとした怖さを手軽に楽しむことができます。
ここがポイント
何気ない日常の一コマから、予想だにしない恐怖が展開する作品です。
《プラスティック》
フロッピーディスクに保存された、主婦、向井洵子の日記から始まる話です。
次から次へと違う人物の騙りとして、フロッピーディスクに残された54個もの文書ファイル。
他の誰かが、自分のふりをしている疑いを目にしての思い、何故自分を信じてくれないのか。
ここがポイント
徐々に平凡な日常が崩れている様が、不気味に描かれていて、ホラー的な演出も伺えます。
ラストの展開の斬新さに納得してしまう作品です。
《パワー・オフ》
人間が作ったコンピュータウイルスが人工生命(AL)の能力を得て、勝手に進化していく話です。
コンピュータウイルスと人工生命、その進化に翻弄される人間たちの姿が面白可笑しく描かれています。
インターネット全盛の今となってはパソコン通信が主な手段というのはピンときませんが、この時代に人工生命という切り口はとても斬新であり、楽しめます。
ここがポイント
ネット黎明期の事情が良く分かる作品です。
《もつれっぱなし》
スキマ時間の娯楽にはうってつけの6編からなる短編集です。
全ての話が2人の男女の会話のみで構成されていて、基本的な形は同じなのです。
男が納得せず、論理的な照明を求めるのに対して、女は不可解な言い分を押し付けるような場面が多いように思います。
ここがポイント
やり取りの軽妙さが楽しめる作品です。
《おかしな二人》
日本では珍しい、二人で合作する推理作家、「岡嶋二人」の誕生から解散までを綴ったエッセイです。
二人の出会いから、いろいろな作品が生み出された過程、執筆に至るまでが詳しく描かれています。
そして、どのように二人の間にズレが生じて、コンビ解消まで至ったのかがまるで小説のように綴られています。
ここがポイント
井上氏の絶妙な筆致によって、厭味なく、二人の間に起こった様々な葛藤の真実が味わえる作品です。
《メドゥサ、鏡をごらん》
作家である、藤井陽造が「メドゥサ」を見たというメモを残し、自身をセメントで固めて、怪死していた話です。
彼の死の真相と遺した小説の謎を探るために、その娘と婚約者が真相に挑んでいきます。
不条理な恐怖と違和感が常に付きまとい、思わず飲み込まれてしまいそうになります。
ここがポイント
想像力を掻き立てられて、様々な解釈ができることにより、筆者の用意した、仕掛けにハマってしまいそうになります。
世界観に引き込まれてしまいそうになる作品です。
《風が吹いたら桶屋がもうかる》
持ち込まれる数々の奇妙な事件を超能力と論理的な推理で解決していく、7編からなる連作短編集です。
役に立たない推理と、低能力の二人の活躍が、主人公の掛け合いによって、テンポよく進んでいきます。
結局、謎は依頼人自身が解決をしいくという、笑いを誘う展開になっていきます。
ここがポイント
テンポが良くて、気軽に読める作品です。
《オルファクトグラム 上・下》
姉の家で何者かに頭を殴られて、一月後、気が付いた時には、異常な嗅覚を手に入れてしまった青年の話です。
匂いを視覚として、見る特殊能力を駆使して、その時、姉を殺した犯人、失踪したバンドメンバー捜しに挑んでいきます。
ここがポイント
匂いが見えるという未知の世界、その描写の美しさに驚いてしまいます。
ミステリーというよりもファンタジー感覚で読める作品です。
《ラバーソウル》
醜い顔を持つ男、鈴木が、若いモデルの女性を好きになり、その女性をストーカーする話です。
鈴木がモデルにとって、害と判断した邪魔者を次々に殺していってしまいます。
果たしてモデルはスズキの魔の手から、逃げることはできるのだろうか、手に汗握る展開で物語は進んでいきます。
ここがポイント
ラスト数ページの怒涛の伏線回収はどんでん返し好きには堪らないと思います。
まとめ
井上夢人氏の作品はいかがでしたでしょうか。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非、この機会に読んでみてください。
きっと楽しめると思います。