ベストバランスな文体が特徴の、柚木麻子氏のおすすめ作品17選をご紹介させていただきます。
大学在学時より、脚本家を目指していて、ドラマのプロットライターを務めていました。
大学卒業後は製菓メーカーへ就職し、その後、塾講師や契約社員の傍ら、小説の賞へ応募を続け、2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」という作品で第88回オール讀物新人賞を受賞します。
柚木麻子おすすめ作品17選をご紹介~ベストバランスで描写する~
そして2010年に「フォーゲットミー、ノットブルー」を含む初の単行本「終点のあの子」で作家デビューを果たします。
その後も作品が各文学賞の候補に挙がったり、ドラマ化されたりと人気を博しています。
今後はエンタメっぽいものも書いていきたいそうで、自分に何が向いているのか、いろいろと書きながら考えていきたいそうです。
そんな柚木麻子氏のおすすめの作品17選をご紹介いたしますので、お楽しみください。
1、『終点のあの子』
女子学生の微妙な心理を描いている、4編からなる短編集です。
ここがポイント
女の子の揺れ動く心の内面を絶妙に描写していて、思春期の葛藤が良く分かります。
心身共に高校から大学へと、成長していくのですが、人間の奥底にある感情はなかなか変えることができないのです。
女性ならではの、暗くて、じめっとした心の動きを、独自の筆致で、さらりと読みやすく描いています。
多感な時期の少女の喜怒哀楽が、感じ取れる作品です。
2、『あまからカルテット』
女子高時代からの仲良し4人組が、アラサーを前にして、恋と仕事に迷いながらも友情を深めていく5編からなる連作短編集です。
ここがポイント
4人それぞれが、人生の甘い辛いを経験しながら生きていく中に、それぞれのターニングポイントとなる、料理が登場します。
女性の友情はほんの些細なことでも、壊れやすいように思いますが、この4人には微塵にも感じられませんでした。
読後には、とっても笑顔になれる作品です。
3、『嘆きの美女』
外見、性格共にブスな主人公の女性が、美人と同居して変貌していく話です。
美女は美女なりにも、それぞれ抱えている苦労があり、楽して生きている人間など一人もいないことを実感してしまいます。
女性の嫌な部分もしっかりと描かれているのですが、どのキャラにも何故か愛着が持ててしまいます。
ここがポイント
女同士の清々しい友情が分かる作品です。
4、『けむたい後輩』
様々な性格の3人の女子大生を描いた話です。
名門女子大を舞台に女たちの熱い戦いが繰り広げれられ、テンポのいい文章に引き込まれてしまいます。
ここがポイント
女同士の思いが複雑に交錯する感じで、それぞれの心中を描きながらも、独特の危うい感情がうまく表現されています。
プライドとか劣等感が、痛切に描いている作品です。
5、『私にふさわしいホテル』
ここがポイント
新人女性作家があふれんばかりの野心と、奇想天外なアイデアで自分の道を切り拓いていく話です。
チャンスを掴むためなら、どんなことでもやるという、その行動力に清々しいほどの野心が伺えます。
自分の夢を叶えるため、前に突き進む逞しさと、漲るパワーは天晴としか言いようがありません。
出版業界のカラクリも、よく分かる作品です。
6、『王妃の帰還』
ミッション系の女子中学を舞台にした、スクールカーストを取り上げた話です。
トップに君臨していた王妃が最下位に落ちてから、かかわる人や上下関係もどんどん変わっていく様が興味深く描かれています。
ここがポイント
女性特有の人に対する嫉妬心や妬み、憧れ、好奇心などが個性豊かに綴られています。
最後には泣きそうになるくらい、感情あふれる作品です。
7、『ランチのアッコちゃん』
明るく前向きになれるような話が4編綴られた、短編集です。
どの話も食べ物にまつわる内容ですが、特に表題作が大変人気があり、落ち込んでいる部下の為に、気をまわしてランチを交換する、上司のアッコちゃんの姿が逞しく描かれています。
ここがポイント
悩みや息苦しさを抱えた人間が、少しだけ日常と離れた経験をするだけで、前向きな気持ちになっていくことが分かります。
また、明日から頑張っていこうという力をくれる作品です。
8、『伊藤くんAtoE』
甘ったれのダメ男である、伊藤くんをめぐる、魅力的な5人の女性を綴った連作短編集です。
ルックスはいいけど、自意識過剰であり、無神経、その上、極度の保身体制の持ち主である伊藤くん。
女性からは好かれるのに、男友達はいなくて、人望もなく、傷つくことをおそれて、何も決めようとしない。
こんな男のどこがいいのか、もっと深いところに謎が隠れていたのです。
ここがポイント
男性には分からない、様々な女性心理を描いた作品です。
9、『その手をにぎりたい』
バブル時代に生きた、女性と寿司職人との恋の話です。
初めて食べた高級寿司で人生が変わっていき、その寿司を食べるがために、仕事に恋に突き進む女性と、寿司職人の人生が少しづつ交差していきます。
ここがポイント
ひたすらに美味しそうなお寿司の描写と、バブル期の東京が臨場感タップリに描かれていて、懐かしくなってしまいます。
良質な物語が、味わえる作品です。
10、『本屋さんのダイアナ』
シングルマザーの家庭で育った大穴(ダイアナ)と、裕福な家庭で育った彩子の全く正反対の2人の女性の人生を綴った話です。
親友になった2人だったのですが、ふとした誤解から音信不通になってしまうのです。
思春期に感じた不安や怒り、他人への羨望など、言葉にできなかった感情が、上手く綴られていて、別々の環境で成長していく二人の様子が、巧妙にに描かれています。
ここがポイント
ワクワクして、勇気が貰える作品です。
11、『ねじまき片思い』
ここがポイント
片思いの男性を助けるために、おもちゃプランナーの女性が奮闘する話です。
仕事は優秀なのに、片思いの男性に5年も面と向かって告白できず、彼の起こしたトラブルを陰ながらに解決していくのです。
夢のある、おもちゃの世界も素敵に描かれていて、すこしワクワクしてしまいます。
読み終えると、なにか元気が貰えた気分になってしまう作品です。
12、『ナイルパーチの女子会』
ブログをきっかけに出合った、キャリアウーマンの女性と、専業主婦の女性との友情の話です。
女性の歪んだ部分が、これでもかと言うほどに描かれていて、狂っているのですが、何故か理解できてしまうのです。
ここがポイント
生き残るために、周りを傷つけて自分も傷つけてしまう、2人共追い詰められ、壊れていく様子がとてもリアルに描かれていて、恐怖さえ覚えてしまいます。
やはり人間は身の丈に応じた生き方が、一番だと感じさせてくれる作品です。
13、『BUTTER』
ここがポイント
「首都圏連続不審死事件」(木嶋佳苗事件)をモチーフにした話です。
殺人犯とされる人物に次第に翻弄されて、操られていく女性記者と、その友人の姿が如実に描かれています。
また、すべての人間関係の間に料理が深く関わっていて、様々な現実の世界や回想シーンで料理が登場します。
読むほどに引き込まれてしまう作品です。
14、『奥様はクレイジーフルーツ』
女性の目線から描かれている、様々なセックスレス夫婦の話が詰まった12編の連作短編集です。
夫からやんわりと拒否され続け、抑えきれない性欲は外に向いてしまうのですが、妻は今の生活を捨てることができなくて、浮気もできない有様なのです。
夫婦が仲良く暮らしていくことの中にどれくらい、性的な要素が必要なのか考えてしまいます。
ここがポイント
心と身体のバランスの難しさがわかる作品です。
15、『デートクレンジング』
二人の女性の友情と、それを取り巻く人たちの話です。
結婚、妊娠、出産などのことがあると、女性にとっては、友達と今までのような関係が疎遠になる時期がやってくることがあります。
しかし、状況が変わっても、友達でいられる人は友達としての関係が続いていくし、それまでの人はそれまでだということが分かります。
ここがポイント
周りに振り回されずに、自分らしく生きることの大切さを教えてくれる作品です。
16、『らんたん』
明治~昭和の時代に女子教育へと力を注いだ、恵泉女学園の創立者である河合道という実在の女性の生き様を描いた話です。
女子教育がまだ日本に殆んどなかった時代から、自らの学園を創設し、大戦中も、それを守り続けたのです。
灯をシェアするという信念に基づき、「難しいことは分らないけれど、楽しい方がイイでしょう」という河合氏の考え方に多くの賛同者がいたことも納得できます。
ここがポイント
女子教育の黎明期がどのように立ち上がったのか、が個性的な登場人物たちによってドラマチックに明かされていきます。
心地良い読後感が得られる感動作品です。
17、『オール・ノット』
苦学生の真央が、かって栄華を誇った山戸家の謎多き女性の四葉との出会いから、山戸家を取り巻く心温まる女性たちと絆を作りつつ、強く生き抜いていく話です。
人生には失敗がつきものであり、上手くいくことばかりではありません。
たった一度の失敗で、人生が変わってしまうことがあるのに、それでも人は生きなければならないのです。
ここがポイント
裕福な暮らしが一瞬のうちに消え去り、財産も何もかも失ってしまい、せっかく仲良くなった友でさえ、少しのことですれ違い、疎遠になってしまうことがあるのです。
しかし、全てを投げ出さなければ、復活のヒントはきっと見つかると教えてくれる作品です。
まとめ
柚木麻子氏の作品のご紹介は、お楽しみ頂けましたでしょうか。
様々な女性の心の奥底が少し覗くことが、できるかも知れません。
まだ読んでいない作品がありましたら、是非この機会に読んでみてください。